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電車を降りたらそこは異世界でした 悪役令息と七人の魔女  作者: ゆきあさ


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夢の牢獄

来ていただいてありがとうございます!






「リサ?眠ったの?」

心配そうな声が聞こえる。

「リサ?リサ?大丈夫?」

目を開けて大丈夫だよって笑いたいのに重たい瞼を開けられない。何かに絡めとられたみたいに体も頭も動かない。消えていく。泡みたいに。何か大切なものが。





夕暮れ時、電車の中は明るいオレンジ色に染まってた。

「あれ?私……?何で?セシルとお城の舞踏会にいたはずなのに……」

慌てて服を見る。いつもの高校の制服だ。ドレスはどこ?

「ちょっと!うるさいわよ、水樹里沙!セシルとか舞踏会とか小説の読みすぎ!」

スマホを見ながら隣に座ってる桃佳(もか)がチラッと私を見てきた。

「へ?桃佳(もか)?」

「なによ、私が薦めた小説、夢に見るほど気に入ったの?」

意地悪そうに笑う桃佳(もか)が嬉しそうに見えたのは気のせい?オレンジ色の光の中桃佳(もか)の顔が何だか違う人みたいに見える。

「……小説」

「そっかぁ、あんたは悪役令息(セシル)推しなのね。絶対ルークの方がいいのに!」

「そう……だっけ?」

そう?そうですわよ。そうだ。そうだった。あれは小説で私は夢を見てたんだ。電車の揺れって気持ち良くて眠くなるもんね。

「ちょっと!これからバイトなんだからしっかりしてよね」

これから桃佳(もか)と一緒に仕事(バイト)しなくちゃいけないんだった。大切な仕事。眠いなんて言ってられない。頑張るぞー!


そう、これが私の日常。


学校終わってバイトに行って家に帰って夕飯作って課題をやって寝てまた学校に行く。そんな当たり前の日々。そのはずなのに……。何かが違う、そんな気がして仕方が無い。この違和感は何?








今日も一人で学校帰りの電車の中。もう何度繰り返したかわからない日々。いつもと変わらない穏やかな日常のはずなのに、何かが足りない気がする。でもそれが何かわからない。なんだろう、なんだろう、何が違うの?私は電車に揺られながら考える。

「お姉ちゃん。そのポッケに入ってるのは何?」

「え?」

いきなり声をかけられた。誰?この子達。私の目の前にいきなり立っていた男の子と女の子。幼稚園くらいの年齢の双子みたいだけど随分寒そうな服装。女の子は淡い緑色の髪、白いノースリーブのワンピース、男の子は金色の髪、白いシャツと黒いズボン。なんだか二人とも見覚えがある気がする……?そんなはずは無いと思うんだけどな。だってこの子達どう見ても日本人じゃないもの。

「ポケットに入っているのは何ですか?」

「ポケット……」

私はスカートのポケットの中を探った。

「え?石?ペンダント……?しかも二つも??」

一つは白い魔法石。私の魔法の媒体だ。アビーに貰ったやつ。もう一つは……そう!セシルが持ってたもの。魔法を跳ね返してくれる守護の魔法石。頭の中に情報がすらすらと流れてくる。


「え?どうしてこれを私が?そうだ、あの時セシルが私のドレスの腰辺りに手を……もしかしてあの時に?」

「おやおやいけませんね、坊ちゃん」

「本当ね。いやらしい男は嫌われるわよ」

いきなり目の前の子ども達が大人の口調になった。

「あなた達は誰?」

「今、それは重要なことではないわ」

「貴女様にとって大切な事は?大切な人はどなたですか?」

女の子と男の子が交互に話しかけてくる。

「思い出して」

「答えていただけますか?」

「大切な人……」

私はペンダントと守護の魔法石を両手で握り締めた。

「セシル!」

手の中で光を放つ魔法石。そうだ。思い出した!私は……。




オレンジ色の電車の中にどこかからか声が響いた。

「あら嫌だ。最初に出てくるのが男の名前だなんて、とんだ聖女サマですわね」

他に乗客のいない電車の中、影のように現れたその人は最初桃佳(もか)の姿に見えた。だけど……。

「緑の魔女、グロリア……!」

「わたくしを呼び捨て?随分と失礼な小娘ね」

目の前にいるのは確かにグロリアなんだけど、姿が歪んで見える。

「私のセシルの周りをウロチョロして、本当に目障り。本当に邪魔……」

グロリアは今までに見たことのない歪んだ顔で私を睨みつけた。


『そう、邪魔なの。貴女はこの物語(世界)には要らないの。どうしてここに来ちゃったのかしら。でもまあいいわ。どうせ貴女はこの夢の牢獄からは出られない。自分から入ってきたそこの二人もね』


頭の中に響く声。電車の中に響く声。この世界の中に響く声。

「なにこれ?」

私は耳を押さえた。こだまする声が消えると同時に目の前から勝ち誇った笑顔のグロリアが消えた。


「恐らくあれが夢見の魔女ですね」

「え?緑の魔女じゃないの?」

「外側はそうね。でも中に入られてるわ」

「それって憑りつかれてるの?」

「そのような感じだと思われます」

「…………」

「リサ様?」

「あなたチェンバーズさん、だよね?」

私は男の子の方に尋ねた。子どもの姿だけど、たぶん間違いないと思う。

「はい。私は森の魔女の使い魔でございます」

そう言ってチェンバーズさんは隣の女の子を手で示した。

「ええ。私がお兄様の妹のチェルシーよ。『森の魔女』と呼ばれる事もあるわ」


「つ、使い魔と魔女?!妹が魔女でお兄ちゃんが使い魔なの?!っていうか人間が使い魔になれるの?!どうして魔女の使い魔がセシルの所にいるの?!まさか、あなたもセシルを狙ってるの?!」

思い出すと同時に次から次へと疑問が湧いてくる。

「それに、最初に電車の中で会ったのってあなた達だよね?もしかしてグロリアっていうか夢見の魔女の仲間なの?!」

ああっ!人間関係がややこしいっ!!


「ちょっと落ち着きなさい、リサ。一応私達は味方よ。安心して」

()()なの?!

「ちなみにリサ様をこちらの世界へお呼びしたのは我が主でございます」

「ええ?!じゃあ、やっぱりあなたは敵なんじゃ……」

「ちょっとお兄様!説明の仕方が悪いわ!今から説明するからよく聞いてね」

森の魔女チェルシーは真剣な顔をした。

「私達は貴女に協力してもらいたいの」





ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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