夢と眠りと
来ていただいてありがとうございます!
「リサ、怪我はない?危険なことをさせてごめん」
「平気だよ」
セシルやハーヴェイ王子や兵士さん達が潜んでいるのも計画の内で知ってたし、何かされる心配はしてなかった。ただ、本当にジェシーさんが現れるとは思わなかった。というか信じたくなかった。時々仲良くおしゃべりをしてくれるようになってたのに、ずっと良く思われてなかったんだ。セシルのことが好きだったならそれも仕方ないのかもしれない。友達になれるかもってちょっと期待しちゃってたから、かなりショックだった。しかも命まで狙われるなんて……。
「リサ……」
セシルが私の肩を抱く腕に力を込めた。ふいに頭があったかくなる。
「?」
「よしよし」
「アビー???」
アビーが頭を撫でてくれてる。もしかして慰めてくれてる?
「それにしても、ジェシー・ファーロウ伯爵令嬢以外の者達がこの場に現れるとは思わなかったな」
ハーヴェイ王子が首を捻ってる。
そうだよね。ジェシーさんは同じクラスで私の動向も知ってるけど、他の人達は学年も違うのに。私ってあんなに嫌われてたんだ。落ち込むなぁ……。
「リサが気にする必要はない。あいつらのは完全に逆恨みだから!」
「その通りよ!それにやっかみに勘違い!人間って愚かよね!」
「うん。ありがとう、セシル、アビー」
慰めてくれるのは嬉しいけど、頭ぐりぐりするから髪の毛がぐちゃぐちゃになっちゃってるよ……。
「それにしてもアビーはどうしてここにいるの?」
「言ったでしょ?あんたのことは良く見てるって。『白雪の聖女』サマ」
「見てるって、一体どこから見てるのよ?魔法で?魔法でなの?そういうのって犯罪よ?」
「あら、やっと元気が出てきたじゃない」
「誤魔化すな!その点に関しては僕も黙ってないぞ!」
「っ!」
何だろう?一瞬ピリっとした。
「誰っ?!」
アビーと一緒に振り返る。
「まあまあ!大捕り物ですわね!」
教室の入り口には緑の魔女グロリアさんが立っていた。
「兵士の皆さんがこんなに!どなたかお怪我をなさっていませんか?わたくしが治療してさしあげましてよ?」
「こいつが緑の魔女……」
アビーが珍しく厳しい顔で呟いた。
「アビー、知らないの?」
「新参者だし。魔女同士交流がある訳じゃないしね」
「そうなんだ」
そういうものなんだ。てっきり魔女って魔女同士のネットワークとかあるのかなって思ってた。
「クロックフォード様もいらしたのですね!お怪我はありませんか?」
グロリアさんが嬉しそうに近づいて来た。おーい、私もいるのに全然目に入ってないみたいですねー。セシルも相変わらずグロリアさんには一言も答えない上に全く目に入れようともしない。っていうかセシルって本当にモテるんだね……。なんだかムカついてきちゃった。みんなセシルの気持ち、無視しすぎじゃない?
あれ?この香り……アップルティーだ!グロリアさんからほのかに香るのはリンゴの香り。前にお城でごちそうになったお茶と同じ香り。そうだ!この香りだ。ジェシーさんから同じ香りがしてた。今、王都でアップルティーが流行ってるのかな?
「緑の魔女には気を付けなさい。なんだか変だわ」
アビーは私の耳元でささやくと、前と同じように姿を消してしまった。
「あ、ちょっと!アビー!!」
「逃げられたか。次に会ったら締め上げてやる」
ちょっとセシルが怖い……。でも覗かれてるのは私も嫌だから、やめさせるのは賛成だ。あと、グロリアさんに気を付けるのも賛成。私もグロリアさんはなんだか変な感じがするんだよね。
この頃から私はよく元の世界の夢を見るようになった。
狭いアパートの狭い台所。夕焼け色に染まった窓。
「姉ちゃん、今日も母さん遅いの?」
「うん。そうだって。今日はカレー作ったから」
「カレーかぁ!なら大丈夫だな」
「ちょっと、それどういう意味よ!」
「ウソウソジョーダン!腹減ったから、早く食べたい!」
「わたしもっ!」
「うん、もう少しでご飯炊けるから、先にお風呂に入っちゃおう」
「俺、いちばーん!」
「ああ、おにいちゃん、ずるい!」
「里香は後で私と一緒に入ろうね」
「うん」
「……サ、……リサ……、リサッ!?」
「うん、一緒にお風呂に入ろう?」
「…………っ!!」
「これはまた大胆でございますね、リサ様。おや、坊ちゃんが失神寸前でございますね」
目覚めた私はクロックフォードのお屋敷の自分の部屋にいた。そっか、夢見てたんだ。なつかしい夢……。って言ってもこっちに来てからはまだ数か月しか経ってないんだけどなぁ。
「あれ?セシル?そんなところに座り込んでどうしたの?床、冷たいから風邪ひいちゃうよ?」
「…………」
「顔、赤いね?もしかして熱があったりして?」
手のひらじゃわからなかったから、おでこをくっつけて熱をはかってみた。
「うーん?熱は無いみたいね。良かった」
「……くない」
「ん?」
「良くない。体調が悪いのはリサじゃないのか?アンとダイアナが起こしても起きないって心配してたから、様子を見に来たんだ」
セシルがふてくされたように上目遣いでみつめてくる。はっ!顔が近いっ!!!慌てて離れて更に気が付く。私寝間着じゃないっっ!!こっちの世界の寝間着っていわゆるネグリジェでちょっと生地が薄いんだよー!
「ごめんね。ちょっと夢を見てたみたい。あと、遅くまで本を読んでたから起きられなかったのかも」
「本当に体調は大丈夫?」
セシルは私にショールを着せかけてくれた。
「うん。心配かけてごめんね」
「なら、いいけど」
本当に珍しいな。私ってずっと寝つきも寝覚めも良くて、こっちに来てからもそれは変わらなかったのに。ちょっと試験結果が悪すぎて勉強しすぎてたかもしれない。これからはもう少し早く寝よう。そうしよう。
ちゃんと夜更かしは止めたのに、私はそれからも段々と起こされずに目覚めることができなくなっていった。
ここまでお読みいただいてありがとうございます!




