犯人?
来ていただいてありがとうございます!
「お、終わった……」
ステラ学園の定期試験は無事終了。結果はあまり聞かれたくないかも。まあ半分以上は取れた、と思う。うう、次はもうちょっと頑張ろう……。
最後の試験科目が終わってホッとしていたら、何故か同じクラスの生徒が私とセシルの所に集まって来た。
「白雪の聖女リサ様!」
「魔物討伐の後、天が祝福するように雪が舞い降りて虹までかかったとか!」
「素晴らしいですね!」
「クロックフォード様も聖女様をお守りする騎士のようだったとお伺いしております!」
「秘められた魔力で戦われたのでしょう?素敵ですわ!」
「お二人はお似合いのご婚約者様ですわね!」
「モカ様とリサ様、お二人がいてくださるからこのコスモス王国は安泰です!」
「あはは、ありがとうございます……?」
あの妙なふたつ名が広まってる……?雪ならこの王都でもわんさか降ってるのに、たまたま魔物を倒した後に雪が降ったからってそんな大袈裟な名前で呼ばれるようになるとは……。
「すまないが、これから城へ向かわなければならないんだ。悪いがこれで失礼する。さあ、リサ行こう」
セシルが立ち上がり私の手を引いた。あれ?そんな話聞いてないけどな?不思議に思いつつ私はみんなに挨拶して教室を後にした。
「すみません。ごきげんよう」
人垣の間、教室の隅の方に目が行った時、ジェシー・ファーロウ伯爵令嬢の顔が見えた。みんなの輪に入るでもなく、友達とおしゃべりするでもなくぼんやりと窓辺に佇んでる。こちらを見てはいないその顔には殆ど表情が無く、幽霊みたいに見えたのが気になった。私と同じでテストあんまり出来なかったのかな?もしそうなら今度お茶に誘って一緒に残念会したいなぁ。
「お披露目ですか?」
「そうそう!モカ様とリサ嬢のお披露目!」
お城で待っていたのはハーヴェイ王子だった。今日はみんな定期試験だったんだから学園で話せばいいのにね。ハーヴェイ王子のお話はひっきりなしのお茶会の招待に引き続き、またうんざりさせられるものだった。なんと年越しの舞踏会の日の午後に聖女のお披露目の為の式典をするとのことだった。つまりはほぼ一日中気を抜くことができない時間が続くってことかぁ……。
「式典のドレスなんかはこちらで準備するし、神殿で任命式の後に国民達に顔見せするだけだからそんなに固く考えないでいいよ」
ハーヴェイ王子の言葉にもっと不安になってくる。顔見せなんてしたくないよ。
「式典にも僕が付き添うから大丈夫だよ、リサ」
「え?そうなんですか?セシル様。良かった」
少しだけホッとして少し頬が緩んだ。
「そうだ、リサ嬢。陽光の魔女殿がお茶でもどうかって言ってたよ」
「え?」
「僕はまだ殿下と話し合いがあるから、先に行っててくれ。後から行くよ」
「はい。わかりました」
陽光の魔女さん?確かフィロメーラさんだったよね?私に何か用かな?ていうか体よく追い出されたような気がする……。メイドさんに先導されてめちゃくちゃ高い位置にある天井の絵を見上げながら、ツヤツヤに磨き上げられた広い廊下を歩いた。この廊下だけでも元の世界の私の家(アパートの部屋)より広そう……。やがて通された部屋の中からは賑やかな声が聞こえてきた。
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「それで、殿下。調査の結果はどうだったのですか?」
「ああ、かなり難航したけれど犯人らしき人物の見当はついたよ。といっても目撃者や完全な証拠などはないけれど」
「誰なんです?リサを危険な目に合わせていたのは」
「だから直接の目撃者はいないんだ。どれも事故だと言えば通せるものだから。ただ、現場に共通して存在した人物が一人だけいる」
「誰なんです?」
「最初に水が降って来た教室にいたのは、君達のクラスメイト達だった」
「ああ、リサがそんなことを言っていましたね」
「その中の一人ジェシー・ファーロウ伯爵令嬢だけだった。図書館やあのエントランスに続く階段に最後にいたのは」
「…………」
「あんなことがなければ、彼女は君の婚約者候補だった令嬢だったよね」
「ええ、断っても随分としつこくて、そのくせ呪いを受けた後は光の速さで婚約の打診を取り下げてきましたね。……なるほど」
「でも、本当に証拠がない。だから……」
「ええ、それはわかっています。彼女を追及はできません。が、警戒することはできます」
セシルは厳しい表情で両手を固く握りしめた。
「……リサを傷つける者は誰であっても容赦しません」
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「あんたもなかなかやるじゃない。今回は助かったわ!でも、あまり出しゃばらないでよね!」
「あらあらモカ様ったら、お言葉が少し乱暴ですわよ?」
「ルークがいないからいいの」
「困りましたわね。式典や舞踏会ではくれぐれもお気をつけくださいませね」
陽光の魔女、フィロメーラさんに呼ばれた部屋には桃佳がいた。二人は仲が良いみたいだからこれはまあ想定内だった。
「あら!白雪の聖女様、クロックフォード様はご一緒ではないのですか?」
でもなんで緑の魔女、グロリアさんまでここにいるの?
「今日は試験の日ですから、わたくしはお休みなんですのよ?」
「なに?その白雪の聖女って」
桃佳が方眉を上げて聞きとがめた。
「リサ様は今世間で白雪の聖女様と呼ばれてるのですって!素敵なお名前ですわね」
フィロメーラさんが無邪気に微笑みながら、ぽんと手を打った。美人なのに仕草も可愛いってどういうことなの?ずるくない?
「はあ?リサが『白雪』?似合わなくない?」
桃佳が不満そうに腕を組んだ。
「余計なお世話!私が言い始めた訳じゃないわ!」
似合わないのは私が一番良くわかってるもの。
「わたくしはリサ様の魔力に相応しい呼称かと存じますわ」
フィロメーラさんはうっとりと微笑んでる。
「そ、そうでしょうか?」
「ええ!リサ様の魔力は白い光に金銀の花吹雪が舞い散るようでとても美しいですわ」
そうなんだ。自分では気が付かなかったけどそう見えてるんだ。
「もちろん、モカ様のお力も眩い金色でとても美しいですわ!」
「当然よ!私は『金彩の聖女』なんですからね!」
「へえ、桃佳ってそう呼ばれてるんだ。かっこいいね」
「まあね」
一通り私が倒した魔物の事を説明すると、フィロメーラさんは満足してくれた。私からも直接当時の状況を聞きたかったみたい。それから私は出されたお茶(今日はアップルティーだった)を飲みながら、桃佳とフィロメーラさんの会話を聞いていた。昨夜は試験勉強であんまり寝れてなくて、今頃少し眠気がきてしまってた。
「それにしても最近は魔物の出現が多すぎない?」
「そうですわね。しかもいきなり数が増えたりして、困りますわね」
ああ、桃佳達の方もそうだったんだ。これって小説のストーリーには関係無いのかな?
「隣国の差し金なのでは?」
グロリアさんが口を挟んだけど、魔物の出現を人間がコントロールなんてできないそうだ。元の世界ではそういう小説もあった気がするけど、この世界ではまだそういう技術は無いんだね。そんな話をしているとセシルがハーヴェイ王子との話を終えて迎えに来てくれた。
グロリアさんがお茶に誘ったけど、セシルは相変わらずの無視、無表情で通して部屋に入ることもなく一緒にお城を後にした。
ここまでお読みただいてありがとうございます!




