白雪の聖女
来ていただいてありがとうございます!
「リサ……!」
「リサ様!」
セシルとチェンバーズさんが駆け寄ってきた。良かった。無事みたい。ちょっとだけ視界が霞んでる……。急に大きな力を使ったからかな?
うおおおおおおおおおおおっ!!
突然私達の後ろでおたけび?みたいな野太い叫び声が起こった。
「何?何?」
まさか、また魔物が現れたの?振り向くと兵士さん達が目をキラキラさせてこちらを見てた。
「た、助かった……」
「す、凄い……!」
「もう一人の聖女様だ!」
「聖女リサ様!!」
はい?この人達何を言ってるの?さっきまでの冷たい視線はどこ?手のひら返し早くない?
「リサ、大丈夫か?」
「リサ様、凄かったですねぇ」
セシルとチェンバーズさんの顔を見たら急に足から力が抜けて意識が遠のいていった。目が閉じる前に雪が舞い落ちてくるのにが少し晴れて虹がかかってる不思議な空が見えた。
「やあ!凄かったね!ご苦労様」
「お静かに、殿下。まだリサは眠っているんですから」
「ずっとつきっきりなんだね。僕は報告があるから一足先に王都へ戻るよ。また城で会おう」
「はい。お気をつけて」
「やれやれ……」
「坊ちゃんも少しお休みになられては?」
「いや、大丈夫だ」
「……そうですか」
夢うつつにそんな会話が聞こえてきてたけど、ふかふかお布団の感触が気持ちよくてまだ目を開ける気持ちになれない……。体から大きな何かの塊が抜けてしまったみたいで力が入らない。あともう少し……。
結局私が目を覚ましたのはあれから三日後だった。
なんだか手があったかい。誰かが手を握ってる?
「…………セシル?」
「っリサ?!目が覚めたのか!良かった」
木目の天井を背景に心配そうな顔が覗き込んでる。ああ、綺麗な水色と紫色の瞳。
「私……?」
「力の使い過ぎで倒れたんだ」
わあ、ベタな展開……。
「魔物……倒せたよね?」
夢じゃなかったか心配で確認しちゃった。
「ああ、とても凄かったよ、リサ。かっこよかった」
「かっこいい?」
「うん」
「無我夢中だった。セシルが死んじゃうかもしれないって思ったら……怖くて……」
「リサ……」
体に温かい重みがかかった。布団の上から抱きしめられて頬がすり寄せられた。だんだん頭が働いてきて、状況が理解できると途端に恥ずかしくなってくる。
「帰ろう。王都へ」
うっとりと至近距離で見つめられて困ってしまうけど、セシルが乗っかってるから動こうにも動けない。
私は捨て身の攻撃を繰り出すことにした。
「うん。セシル……でもその前に」
「ん?」
「お腹空いちゃった……」
タイミングよくお腹までなっちゃって、更に恥ずかしいことに!だって本当にお腹が空いてたから。
「…………ぷっ」
あ、やっぱり笑われた。その後しばらくの間セシルは私の上で珍しく涙が出るほど笑ってた。ちょっと重いよ、セシル。
王都に戻った時には一面の雪景色になっていた。気が付けば冬の休みの前の定期試験が迫ってきていて、私はかなり焦っていた。いくら試験は受けるだけでいいって言われていても、おかしな点数を取る訳にはいかないよね。恥ずかしいもん。私はクロックフォードのお屋敷の自室で必死に勉強していた。それなのに。
「え?また?」
「ああ。今度は王女殿下からだ」
コスモス王国の王家には三人の王子様と二人の王女様がいる。二人の王女様は王妃様のお子様で、まだ十歳と五歳。お茶会なんて開ける年じゃないのに何故か招待状が届いてしまった。
あの魔物討伐からもうひと月ほどが過ぎた。私は目が覚めるとすぐにセシルやチェンバーズさんと一緒に王都に帰り、すぐにお城へ報告へ行った。それで終わりだと思ってたら、それからも何故か頻繁にお城に呼び出されることになってしまった。王妃様や王太子様、王太子妃様、ハーヴェイ王子、王弟妃様、それに桃佳や陽光の魔女からの招待なんていうのもあった。
陽光の魔女さんはわからないけど、桃佳は絶対に私のことを呼びたいと思ってないと思う。
「リサの力を目の当たりにして、王族との繋がりを持たせておきたいんだよ」
セシルは深ーくため息をついた。
「別にコスモス王国の外に出ようなんて思ってないのに……」
それにまた魔物が出たら討伐に協力するつもりもあるって何度も説明してるんだけどなぁ。とにかく今は勉強に集中させて欲しい(切実)!
「では今回も体調不良ということで?」
「ああ。そうだな。王女殿下には申し訳ないけれど、そのようにお返事を差し上げてくれ」
本当なら王族の招待なんて断っちゃいけないんだろうけど、この前王妃様に呼ばれたのは三日前。その時に王女様方にも少しだけお会いしてる。それで許してもらいたい。実際にお城へ行って王族の方々とお会いするのはものすごく体力と気力を消耗するから、体が辛いのは本当なんだよね。
「リサ様は人気者ですからねぇ」
チェンバーズさんが午後のお茶を用意しながら楽しそうに笑ってる。今日のおやつはチョコレートのタルト。ベリーのジャムが添えてあってとても美味しそう。
「人気者って?」
「『白雪の聖女様』」
「?」
「?」
チェンバーズさんの言葉にセシルと私は顔を見合わせた。何のこと?
「リサ様は今、皆様に『白雪の聖女様』と呼ばれているらしいですよ」
「ええ?!」
「ああ、なるほど」
「なんで納得してるの?セシル!」
「なんとなくわかる、かな」
セシルは一人でうんうんと考え込んでる。私には全然わからないんですけど?
ここまでお読みいただいてありがとうございます!




