お城で事情聴取
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居心地が悪い。
私の両側にセシルとハーヴェイ王子が座ってる。セシルはいいんだ。だって婚約者だから。でもどうしてこんなにハーヴェイ王子が距離を詰めてくるの?それに正面に座った桃佳が睨んできてるし。
あの後お城へ移動したセシルと私は大きな応接室に通された。お茶とお菓子を用意してメイドさん達は部屋を出て行ってしまった。お菓子もお茶も美味しそうだけど、とても食べられそうな雰囲気じゃない。それはそうだよね。だって魔女の襲撃があったばかりだし、空気がピリピリしてる。でもまるで私達まで魔女の仲間みたいに思われてるみたいに感じて、それも居心地が悪い原因の一つかもしれない。今この応接室にはオーガスト王太子、ハーヴェイ王子、ルーク王子、桃佳とフィロメーラさん、そしてセシルと私。ノワール先生はまだ後処理があるからってステラ学園に残った。
「で?どういう状況だったの?」
桃佳はセシルと私を交互に睨みつけた。ちょっと!私はともかくセシルにその態度ってどうなの?セシルはクロックフォード侯爵家の令息なのに。私がそんな風に思って桃佳に抗議しようとしたらルーク王子にたしなめられてた。
「モカ、そんな話し方をしたらよくないよ」
「あ、ごめんなさい。魔女の襲撃のせいで気が立ってしまってて」
桃佳はほんとにルーク王子が好きなんだなぁ。ほっぺを赤くしてルーク王子を見つめてる。
セシルは一度小さくため息をついた後、あの渡り廊下で起こったことを全部説明してくれた。
「氷の魔女だけでなく、時の魔女まで……」
オーガスト王太子が苦い顔をした。学園の防御が機能しなかったからショックなのかもしれない。あれ?でもお城の宝物庫は度々魔女の襲撃を受けてるんだよね?お城の防御はどうなってるんだろう?
「しかも王国の秘宝ではなくセシルの元に現れるなんて。何故でしょうか」
ハーヴェイ王子の疑問はもっともだと思う。でも、ということは桃佳は私達の世界の小説のことを誰にも話してないのかな?私は桃佳の顔をじっと見たけど桃佳は睨みつけた後プイッと顔を背けてしまった。「余計なことを言うな」ってこと?
「リサ様、よろしければその魔法石を変化させた状態をもう一度見せていただけますか?」
それまで無言だったフィロメーラさんが穏やかに微笑んだ。
「え、はい」
「それはっ」
セシルが止めようとしたけど、王太子のオーガスト様が
「私も是非見せて欲しいな」
って何故か私を冷たい目で睨んできたからちょっと怖かった。渡り人って歓迎されてるって聞いたけど、どうも私は良く思われてないみたい。
「で、では……」
私は一度セシルの方を見た。セシルは厳しい顔をしながらも仕方ないというように頷いた。バットでいいのかな?一瞬悩んだけど、一度上手くいったから他の物じゃない方がいいかなって思って、手の上の白い魔法石を変化させた。広い部屋の中に白い光が満ちて収束、私の手の上で魔法石は変形した。
「こんな感じなんですけれど……」
あれ?みんな無言?やっぱり形?バットの形がダメだった?桃佳も顔が引きつってる。バットだから引いちゃった?ああ、やっぱりかっこよく剣の形とかにしておけばよかった。次は頑張ろう。
「瞳の色か……!」
ん?オーガスト王太子が驚いたように私を見てる。どうやらみんなバットじゃなくて私を見てたみたい。
「聖なる力を宿した渡り人様をもう一人この王国にお迎えできるなんて!」
フィロメーラさんが両手を合わせて喜んでる。
「ええ、喜ばしいことですね。君も君の友人も素晴らしいね」
ルーク王子は桃佳ににっこりと笑いかけた。桃佳も笑い返したけどその笑顔はちょっと引きつってた。
「瞳の色?」
「気づいてなかったの?魔力を使う時、リサ嬢の瞳は金色と銀色に輝いているんだよ。やはり渡り人様は皆特別な力を宿しているんだね」
ハーヴェイ王子が私の呟きに答えてくれた。それはありがたいんだけどあまり身を乗り出さないで欲しい。瞳の色と言われて思い当たることがあった。
「……あ」
そういえば前にセシルにそんなことを言われたような気がする。セシルの方を見ると何だか苦し気な表情を浮かべてる。どうしたんだろう。
「リサ様も是非王宮へいらしてください」
オーガスト王太子がさっきとは打って変わってフレンドリーな笑顔を浮かべてる。
「え?」
「モカ様と同じ聖女としてお迎えいたします。もしよろしければ我ら王族の者と婚約を結びなおしていただいて……」
「なっ!」
「っ!」
桃佳とセシルが同時に立ち上がりかけた。
「ありがとうございます。でもお断りします」
私は考えるまでもなく即答しちゃった。
「え?!」
「ど、どうして!」
今度はオーガスト王太子とハーヴェイ王子が腰を浮かせる番だった。
どうしてって……。やだもん。メンドクサイ。私はチェンバーズさんとの特訓を思い出していた。貴族令嬢であれだもん。王宮へなんて行ったら最後もっともっと大変なのは目に見えてる。桃佳はよく王宮になんていられるよね。ああそっか。桃佳はルーク王子推しだから頑張れるんだね。
「私はセシル様をお守りするとお約束していますので、王宮へは行けません」
そう。これが一番の理由。この世界がまたセシルを狙ってこないとも限らないし、目を離す訳にはいかないよね。とりあえず何とか桃佳と二人だけで話さないと。桃佳にも何か考えがあるみたいだし、それを聞いた後でセシルにも説明してあげたい。セシルは完全に被害者だから。詳しい話を聞けば何か対策が打てるかもしれない。
「リサ……」
考え込んでいると手に温かさが触れた。見ると私の手の上にセシルの手が重ねられてた。セシルが少し頬を赤らめて感激したように私を見ていた。大丈夫。私はセシルを見捨てないからね。目で答えて頷いてみせた。
「…………わかった。それが渡り人様の意思なら尊重しよう」
オーガスト王太子が重々しく頷いて、セシルと私はようやく解放されてお屋敷へ帰れることになった。
いい加減くたびれてたし、おなかも空いてたし、目の前の美味しそうなお菓子は食べられないしでストレスマックスだったから助かったよ。
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