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電車を降りたらそこは異世界でした 悪役令息と七人の魔女  作者: ゆきあさ


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セシルvs.時の魔女

来ていただいてありがとうございます!

※セシル視点と王室側の話です。






霧の森で迷った僕の前に現れたのは悪い魔女だった。

「あらなんてうつくしいこ……。オッドアイなんてめずらしいわ。わたしのものになりなさいな」

黒い影を纏ったその存在はおそらく妖艶に微笑みながら僕にそう言った。

「断る」

即答した。魔女は微笑みながらも怒り狂っているようだった。少なくとも僕にはそう思えた。以来魔女は執拗に僕や僕の周りの人間を狙い続けた。僕の心を折り、服従させるために。



「時の魔女アビー……」

「時の魔女!!こいつがっ!」

僕は右手に剣を出現させ、時の魔女に切りかかった。僕は教師達やチェンバーズとは違う。リサの言葉を疑うことは無い。リサが僕に嘘をつく理由が無いからだ。それにたった今もう一つこの魔女を許せない理由ができた。

「セシルその剣って……」

「チェンバーズに借りたっ!」

禍々しい白い髪と赤い瞳。僕を呪い苦しめてきた、幼い顔をした魔女。

「あら、おっかないわね。でも怖くは無いわね」

魔女は僕の剣をひらひらと踊るように交わし続ける。

「くっ!」

ずっとずっと剣の稽古はしてきた。だけど魔法で強化しているのか、さほど動きの速くない魔女の体を捕らえることができない。


『坊ちゃん、集中してください。冷静に剣にも魔力を巡らせるのです』

チェンバーズの言葉が頭に浮かぶ。

『そうすればその剣が力を貸してくれますよ』

魔力を剣と体に満たし一体化させる。

「腕の延長のように……」

その瞬間、魔女の身につけている制服の裾がわずかに裂けた。


「へえ、結構やるじゃない。お坊ちゃん」

魔女が手を一振りすると破れた裾が元に戻った。ダメージなど無いとでもいうように。

「でもねぇ。周りが見えてる?今そんな場合じゃないみたいよ?」

魔女がくすくす笑う。余裕の笑みに腹が立ち、再び踏み出そうとしたその時。

「セシル!待って!アビーからは悪意を感じないの!!それと、何だかおかしいよ!」

切羽詰まったようなリサの声にようやく周囲の異常に気が付いた。

「なんだ、これは……」

「さっき風が吹いたでしょ?あれから、急に雪が降りだしてあっというまに吹雪いてきちゃったの!この辺りって豪雪地帯なの?」

「いや、真冬でもここまでの吹雪には滅多にならない……」

ましてや今はまだ深まったとはいえ秋。冬にすらなっていないのに窓ガラスには雪が吹き付けており、園庭には雪が積もり始めている。


「だから言ったでしょ?そんな場合じゃないって。ほら来たわ。氷の魔女よ」

時の魔女アビーは窓の外、正門の方を見つめた。









コスモス王国王宮


「学園に魔女が現れたんですか?」


柔らかなクリーム色のシフォンドレスを身に付けた聖女モカは、細密な刺繍の施された長椅子ゆったりと腰かけていた。しかし届いた報告に思わず身を少し起こし、持っていたロッドを握りしめた。聖女モカの持っているロッドは大きな薔薇色の魔法石の周囲に雫型の薄紅色の魔法石がいくつもスイングするようについた美しいものだった。


ダンスでもできそうなほど広く、豪華な調度品が配置された王宮の応接室には今、五人の男女がいた。

「そんなことがあるかな?学園には魔女が狙うような物なんて無いんだけどな」

おっとりとした第三王子のルーク。

「そうよねルーク様。学園に魔女が出る理由なんてもう無いし」

かなり大きな変更があって、物語の舞台は王城へ移った。本来ならステラ学園の魔法使い達が守ってるはずの王国の秘宝が何故か王宮の宝物庫に存在してる。これは膨大な力を宿す魔法石で、世界の在り方を変えられるくらいの力を持っている。


(この魔法石を()、狙ってるのは氷の魔女。この魔女は世界を自分の愛する氷の世界に造り替えようとしてる。これも物語の設定とは違ってる。本当ならセシル=ヴァン・クロックフォードを手先にして時の魔女がこの魔法石を狙って、いくつかの事件を起こしていくはずだったのに。里紗のせいでストーリーが台無しよ!)

モカはイライラと手入れさせた爪を弾いた。


「もう?」

モカの正面に座るルークが不思議そうに尋ねた。

「いえ、なんでもないですわ」

「もう一人の渡り人、リサだったか。彼女から教師達に報告があったそうだ」

侍従から報告を受けた第一王子であり王太子でもあるオーガストは不審げな表情をしている。


「おかしいですわね。ステラ学園は王城の敷地ともどもわたくしと聖女モカ様が結界を張っておりますのに」

モカの隣に腰かけたプラチナブロントの長い髪の妙齢の女性が頬に手を当て不思議そうにしている。この女性は陽光の魔女と呼ばれる力の強い魔女だった。彼女と『緑の魔女』と呼ばれる植物、主に薬草の研究を専門とする魔女は『善性の魔女』と呼ばれ、人々から崇敬の念を向けられていた。



「聞けばクロフォード侯爵令息を救うために魔女を殴りつけたとか。モカ様とは違って随分と野蛮な能力持ちのようだな」

オーガストはやや呆れたように肘をついた。

「…………」

モカは無言のまま、今度はロッドについた魔法石を爪で弾いた。

「いや!まだリサ嬢の能力は未知数で、学園の教師も鑑定ができていないのですよ、兄上」

第二王子ハーヴェイがルークの隣でリサを庇った。

「そうですね。リサ嬢はモカの友人ですし、何か素晴らしいお力を持っていらっしゃるかもしれませんよ」

ルークは無邪気に微笑んだ。


「そうかもしれませんわね。でもリサにどんな力があったとしても関係ありません。悪い魔女の企みは私が防いでみせますわ!」

「おお!頼もしいな、我らが聖女モカ様は」

「本当に。わたくしも微力ながらモカ様のお力になれるよう頑張りますわね」

オーガストと陽光の魔女の称賛を込めた眼差しに気を良くしたモカはルークと見つめ合い頷き合った。



その時だった。忙しないノックの音が響いた。

「何事だ!騒がしい!」

オーガストはイライラしながら駆け込んできた侍従に尋ねた。

「魔女が現れました!」

「またか……!」

オーガストはため息をつき、モカと陽光の魔女は腰を浮かせた。ハーヴェイも顔をしかめて立ち上がりかける。唯一ルークだけはのんびりとお茶を飲んでいた。

「王城ではありません!ステラ学園です」

「え?」

「何?!」

「学園が、学園が凍りついています!」

「何だと?!」

皆一斉に立ち上がり、さすがのルークもお茶のカップをテーブルに置いた。










ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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