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婚活パーティーに魔女が現れ、参加者の男女を豚顔にしてしまう。一般人には敬遠される顔になってしまったので、いかにこの場で相手を見つけるかの駆け引きを。そして子どもが産まれてくるストーリーを。

【豚面の夜会 ― 永久に戻らぬ顔の中で ―】


 魔女が現れたのは、婚活パーティーが始まって十五分ほど経った頃だった。

 黒いローブをまとい、杖を軽く振る。その瞬間、会場にいた男女四十人の顔が、みるみるうちに変形していった。


 頬が丸く膨らみ、鼻が前へ突き出し、口元は分厚く変わる。

 ただし耳だけは人間のまま。

 だが、互いの顔を見れば、自分の姿も理解できた。


 豚の顔だ。


 魔女は淡々と言った。


「その顔は二度と戻らないよ。

 ただし、マスクをつければ日常生活は送れる程度にはしておいた。

 でもね、素顔を見せられる相手は、ここで見つけるしかないだろう?」


 そう言い残し、煙のように消えた。


 残されたのは、豚の顔をした男女二十人ずつ。

 誰もが呆然とし、そして気づく。


 この顔では、外の世界で恋愛どころか、素顔を見せることすら難しい。

 ならば、ここで相手を見つけるしかない。


 会場の空気は、恐怖と焦燥と、そして奇妙な連帯感で満ちていた。


 ---


 ■1 豚面の自己紹介


 司会者も豚の顔になっていたが、職務意識だけは健在だった。


「え、えー……皆さま、落ち着いてください。

 と、とりあえず自己紹介タイムを続けましょう」


 最初に立ったのは、元営業マンの佐伯。

 豚の顔でもスーツ姿はきちんとしている。


「さ、佐伯です。趣味はランニングで……」


 声は変わらない。

 だが、突き出た鼻のせいで語尾が少し震える。


 次に立ったのは、保育士の美咲。

 豚の顔でも、姿勢の良さと柔らかい雰囲気は変わらない。


「み、美咲です。子どもが好きで……」


 自己紹介が進むにつれ、参加者たちは気づき始める。


 顔が全員同じなので、声や仕草、話し方が強烈に際立つ。


 普段なら外見に埋もれる個性が、むき出しになる。


 ---


 ■2 豚面の駆け引き


 フリータイムが始まると、最初は誰も動けなかった。

 しかし、やがて一人、また一人と歩き出す。


 佐伯は美咲のもとへ向かった。


「さっきの自己紹介、すごく前向きで……よかったです」


「ありがとう……あなたも、落ち着いて話していて素敵でした」


 豚の顔同士が向かい合う。

 だが、目だけは人間のままなので、そこに確かな感情が宿る。


 別のテーブルでは、元研究職の男性と読書好きの女性が静かに話していた。


「顔が変わっても、声は変わらないんですね」


「ええ。むしろ、声がこんなに大事だなんて思いませんでした」


 一方、積極的なタイプの男女は、この状況を逆手に取っていた。


「顔で判断されないって、ある意味フェアじゃない?」


「普段なら絶対に話さないタイプの人とも話せるし」


 豚の顔で笑い合う姿は滑稽だが、どこか温かい。


 ---


 ■3 “素顔を見せる覚悟”という駆け引き


 パーティーが進むにつれ、参加者たちは気づき始めた。


 この場で選ぶ相手は、今後一生“素顔を見せられる相手”になる。


 マスクをつければ日常生活は送れる。

 だが、家では?

 恋人の前では?

 結婚したら?


 豚の顔を見せることは、心を見せることと同義だった。


 ある女性は言った。


「私は……素顔を見せるのが怖いです。

 でも、誰か一人には見せたい。

 その相手を、今日見つけたい」


 その言葉に、多くの人が頷いた。


 ---


 ■4 豚面の告白と、初めてのキス


 パーティーの終盤、佐伯は美咲を会場の隅へ誘った。


「美咲さん……僕は、あなたともっと話したい。

 この顔になって、正直怖かった。

 でも……あなたと話していると、落ち着くんです」


 美咲は豚の鼻を震わせながら、ゆっくり頷いた。


「私も……佐伯さんといると安心します。

 顔がどうであれ、あなたの声や言葉が好きです。

 ……もしよかったら、私の素顔を、これからも見てくれますか?」


 佐伯は迷わず答えた。


「もちろんです。

 あなたの素顔を、僕だけが知っていたい」


 二人はそっと手を握った。


 そして、美咲が小さく言った。


「……キス、してもいいですか?」


 豚の顔同士がゆっくり近づく。

 鼻が触れ合い、柔らかい口元が重なる。

 人間のキスとは違う形だが、

 そこには確かな温度と、震えるほどの優しさがあった。


 美咲は目を閉じ、佐伯の手をぎゅっと握った。

 佐伯もまた、彼女の背にそっと手を添えた。


 その瞬間、二人は確信した。


 この顔でも、愛し合える。


 ---


 ■5 魔女の真意


 パーティーが終わる頃、再び魔女が現れた。


「ふむ、思ったより早かったね。

 顔が同じになれば、外見で判断しなくなる。

 本当に大事なのは、声、言葉、仕草、心。

 それを思い出してほしかっただけさ」


 魔女は笑った。


「顔は戻らないよ。

 でも、今日ここで選んだ相手は、

 “素顔を見せられる唯一の相手”になるだろうね」


 そう言い残し、魔女は消えた。


 ---


 ■6 成婚率100%の理由


 その後、参加者四十人は全員がカップルとなった。

 誰一人として孤独に帰る者はいなかった。


 なぜなら、

 豚の顔で向き合った時間は、外見を超えた深い信頼を生んだからだ。


 ・声

 ・仕草

 ・言葉

 ・不安を打ち明ける勇気

 ・相手を思いやる心


 それらが、外見よりも強い絆を作った。


 佐伯と美咲は、帰り際にもう一度キスをした。

 豚の鼻が触れ合い、柔らかい音が小さく響く。


「これからも、ずっと一緒にいようね」


「うん。あなたの素顔が、私は好きだから」


 その言葉は、どんな魔法よりも強い力を持っていた。



【豚面の夫婦 ― 新しい家族のかたち ―】


 佐伯と美咲が結婚したのは、魔女の事件から一年後の春だった。

 二人とも豚の顔のまま。

 だが、マスクをつければ外では普通に暮らせるし、 家では互いの素顔を見せ合うことが、むしろ深い安心を与えていた。


 結婚式は、あの“豚顔パーティー”で出会った仲間たちが全員集まった。

 四十人全員が結婚したため、式はまるで同窓会のようだった。


「みんな、幸せそうだね」


「うん。あの魔女、案外いいことしてくれたのかも」


 美咲が笑うと、佐伯も鼻をふごっと鳴らして笑った。


 ---


 ■1 豚顔夫婦の暮らし


 新居は小さなマンションの一室。

 玄関を閉めると、二人はマスクを外し、豚の顔で向き合う。


「ただいま、美咲」


「おかえり、佐伯さん」


 豚の鼻が触れ合うように軽くキスをする。

 柔らかい音が小さく響き、二人は自然と笑顔になった。


 外ではマスクをしているため、

 “素顔でキスできる相手がいる”というだけで、胸が温かくなる。


 夕食を作る美咲の横で、佐伯はエプロン姿の彼女を見つめる。


「美咲、今日もかわいいよ」


「豚顔なのに?」


「豚顔だから、かわいいんだよ。俺だけが見られる顔なんだから」


 美咲は照れながら、佐伯の頬にそっと手を添えた。


 ---


 ■2 妊娠と不安


 結婚して二年目、美咲は妊娠した。


「赤ちゃん……どんな顔で生まれてくるんだろうね」


「きっと、俺たちに似た顔だよ」


「豚顔……だよね」


 美咲は少しだけ不安そうに笑った。


 外ではマスクをつければ普通に暮らせる。

 だが、子どもはどうだろう。

 学校で、友達はできるだろうか。

 素顔を見せられる相手は、将来できるのだろうか。


 佐伯は美咲の手を握った。


「大丈夫。俺たちが守るよ。

 それに……豚顔でも、俺たちは幸せになれた。

 あの子もきっと大丈夫だよ」


 美咲は涙を浮かべながら頷いた。


 ---


 ■3 新しい命の誕生


 出産の日。

 生まれてきた赤ちゃんは、やはり豚の顔をしていた。

 丸い頬、突き出た鼻、柔らかい口元。

 だが、耳は人間のまま。


 美咲は赤ちゃんを抱きしめ、涙をこぼした。


「かわいい……すごく、かわいい……」


 佐伯も赤ちゃんの頬にそっと触れた。


「俺たちの子だ。世界で一番かわいいよ」


 赤ちゃんはふごっと小さく鳴き、

 二人は思わず笑った。


 ---


 ■4 家族のキス


 家に帰ると、三人は自然と寄り添った。


 佐伯は美咲の額にキスをし、

 美咲は赤ちゃんの鼻にそっとキスをした。


「この子にも、素顔を見せられる相手ができるといいね」


「きっとできるよ。

 だって、俺たちがそうだったんだから」


 三人の豚の顔が寄り添い、

 小さな家は温かい空気で満たされた。


 ---


 ■5 仲間たちの家族


 “豚顔パーティー”で出会った仲間たちも、次々と子どもを授かった。

 どの子も豚の顔で生まれたが、

 親たちは皆、誇らしげに子どもを抱きしめた。


「うちの子、鼻が私にそっくりでさ」


「うちは夫に似てるの。かわいくて仕方ないよ」


 豚顔の子どもたちが集まると、

 ふごふごと楽しそうな声が響き、

 親たちは笑い合った。


 ---


 ■6 エピローグ ― 豚顔の未来


 佐伯と美咲の子どもは、やがて幼稚園に通い始めた。

 マスクをつければ普通の子どもと変わらない。

 友達もできた。


 家に帰ると、マスクを外して素顔を見せる。


「ただいまー!」


「おかえり。今日もがんばったね」


 美咲は子どもの豚の鼻にキスをし、

 佐伯は二人を抱きしめた。


 豚の顔でも、

 いや、豚の顔だからこそ、

 家族の絆は強く、温かかった。


 そして佐伯は思う。


 魔女の魔法は呪いではなく、

 “外見ではなく心を見る世界”を与えてくれたのだと。



【豚化萌えの、あとがき】

↓ここの描写、完璧で理想です。


>外ではマスクをしているため、

“素顔でキスできる相手がいる”というだけで、胸が温かくなる。


 夕食を作る美咲の横で、佐伯はエプロン姿の彼女を見つめる。


「美咲、今日もかわいいよ」


「豚顔なのに?」


「豚顔だから、かわいいんだよ。俺だけが見られる顔なんだから」


 美咲は照れながら、佐伯の頬にそっと手を添えた。



ここのシーン、本当に萌え萌えキュンキュンなポイントですわ。

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