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奉光  作者: 鯣 肴


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03.愛おしき君

 ずっと眺めていた。ずっと。

遠く幼い頃からずっと。ただ眺めていた。

今となっては色褪せた君。

あのときと変わらずに君はそこにいる。





 男の独白。


「私は君の虜だ。」

「物心ついた時からずっと。それは今まで一度も途切れていない。」

「この気持ちは本物だ。私の甘い恋人よ、私の声に応えておくれ。」

「私に両の手で君を……」


それは、限りなく遠い夢。





「私は努力した。」

「挫折に挫折を重ね、それでも続けてきた。」


男は、狂おしいほどの努力を重ねる。

心を抉る痛みを取り除くために。


「そんな悲しい目で私を見ないでおくれ。」





「私は望む。」

「触れたい。君に触れたい。」

「甘い笑顔に(とろ)けて、溶けたい。」





突然男の目が(かす)む。

運命に(つか)まれた、捕まった。


聞こえる、何か懐かしい。

彼女だ。

手招きしている。

あの日の風を纏い、私へ手を伸ばす。


私は掴んだ。限りなく遠い夢を。

両手に掴んで。


どこまでも飛んでゆける。

かつて天へと手を伸ばしたアポロンの様に。

しかし、私は届いた。

届いた。

と……





 劣化が激しい。

表面に(ひび)割れが入っている。

青い草原、白い大きなつばを持つ帽子にワンピース。

若い女性。

丘の上からこちらを見下ろし、微笑んでいる。


HONEY(ハニー)

金色の板に、そう彫られている。


白い壁に飾ってある、微笑む女性の描かれた絵。

その世界は(ひび)割れていた。

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