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聖イリヤ未来総合学院物語  作者: 雪だるま


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4

西暦2302年。


ベラルーシ企業連合中央居住区。


旧国家時代の宮殿を何棟も接続・増築して魔改造した結果、もはや「屋敷」というより小型都市になっているレイ邸では、今日も平和に狂っていた。


巨大ホール。


天井高二十メートル。


超高級シャンデリア。


純金装飾。


床は磨き上げられた黒曜石。


その中央で。


宇宙経済圏でも有数の超巨大企業総帥レイは。


積み木をしていた。


「のだぁっ♡」


真顔である。


しかも異様に集中している。


使用人たちは完全に慣れた顔だった。


誰も驚かない。


「社長、本日は十三時から資源企業との会議が」


「静かなのだぁ!!」


レイは叫んだ。


「今、大事な建築中なのだぁ!!」


床には大量の高級積み木が並んでいた。


普通の積み木ではない。


職人製。


一個数万クレジット。


しかも木星産高級木材。


意味不明である。


レイは真剣だった。


「ここが宇宙船寮なのだぁ……」


愛人たちは周囲でゴロゴロしていた。


「社長ぉ♡」


「また学園ごっこですかぁ♡」


「うむっ♡」


レイは積み木を積み上げながら鼻を鳴らした。


「ここが男子寮なのだぁ♡」


「大きいですわねぇ♡」


「当然なのだぁ♡」


レイはドヤ顔した。


付け髭は今日も立派だった。


今日は“教育界の大物風”らしい。


ただし積み木遊びしながらである。


威厳が死んでいた。


「ここに秘密通路を作るのだぁ♡」


「またですの?」


「男児は秘密通路が好きなのだぁ!!」


「社長も好きですわよねぇ♡」


「大好きなのだぁ♡」


即答だった。


レイは積み木を積みながら興奮し始めた。


「そして地下には巨大ゲームホール!」


「うむうむ♡」


「さらにその下に温泉!」


「最高ですぅ♡」


「さらに隠し焼肉部屋!」


「何で隠すんですの♡」


「秘密基地だからなのだぁ!!」


使用人たちは静かに紅茶を配っていた。


慣れている。


この男。


本当にこういう遊びを何時間もやる。


しかも。


重要なのは。


積み木遊びと並行して、異常な規模の投資案件が進行していることだった。


秘書が静かに報告する。


「社長、ロシア学園周辺の第七区画ですが、地主側が価格吊り上げを始めています」


「買うのだぁ♡」


「既に相場の十二倍です」


「安いのだぁ♡」


「……」


「全部買うのだぁ♡」


秘書は無表情で入力した。


周囲の土地。


森。


農地。


旧工場跡。


湖。


廃駅。


全部。


レイ・グループが買い漁っていた。


しかも露骨に。


最初、現地住民は意味が分からなかった。


「あの変な成金が学校に投資してるらしい」


程度だった。


だが。


半年後。


皆、気付き始める。


・超高級寄宿学校建設

・富豪層の移住

・関連企業誘致

・高級住宅地化

・宇宙港接続計画

・観光特区化


つまり。


レイは。


学園そのものではなく。


“学園都市”を作ろうとしていたのである。


しかも。


子供向けテーマパークみたいな街を。


「のだぁっ♡」


レイは積み木を積みながらニヤニヤしていた。


「ここに高級お菓子街を作るのだぁ♡」


「社長、投資計画書では“教育文化商業複合特区”となっています」


「同じなのだぁ♡」


全然違う。


だが。


実際。


市場は熱狂していた。


『超富豪専用学園都市』


『次世代教育都市』


『未来型寄宿エンターテインメント特区』


メディアは好き勝手に持ち上げた。


投資家も群がった。


土地価格は爆上がり。


最初に安値で買い占めていたレイ・グループは笑いが止まらない。


つまり。


この男。


積み木遊びしながら、普通に超巨大都市開発を成功させつつあった。


しかも本人は。


「のだぁ♡ここに恐竜広場作るのだぁ♡」


とか言っている。


恐ろしい。


愛人の一人が笑った。


「社長ってぇ」


「のだぁ?」


「本当に子供みたいですわねぇ♡」


レイはふんすと鼻を鳴らした。


「当然なのだぁ♡」


「褒めてませんわ♡」


「むっ!?」


レイはショックを受けた。


「うぇえええん!!」


「でもそういうところ好きですぅ♡」


「のだっ♡」


即復活した。


単純である。


一方その頃。


ロシア側では。


地方行政が軽く混乱していた。


「……何だこれは」


「土地価格が十七倍です」


「学校一つで?」


「いや、周辺全部買われています」


「何を作る気なんだ」


「計画書によると……」


担当官は震える声で読んだ。


「“子供が人生で一番楽しかったと叫ぶ街”だそうです」


沈黙。


「……意味が分からん」


「しかも利益予測が異常に高いです」


なぜなら。


富豪は。


“子供のため”には金を惜しまない。


しかも。


レイの学園は既に世界中で話題だった。


宇宙船寮。


騎馬弓術。


秘密通路。


プリンセス棟。


超豪華設備。


意味不明なほど楽しそうなのである。


当然。


富裕層の問い合わせは殺到した。


レイはその報告を聞きながら積み木を積んでいた。


「のだぁ♡」


「社長」


「なんなのだぁ?」


「投資回収予測ですが、当初の三倍速度で利益化しそうです」


レイは積み木を置いた。


そして。


ドヤ顔した。


「当然なのだぁ♡」


「理解してやってました?」


「うむっ♡」


「本当ですか?」


「……」


「社長?」


「……秘密基地は儲かると思ったのだぁ♡」


「だと思いました」


使用人たちは静かに紅茶を飲んだ。


今日もレイ邸は平和だった。


世界経済を動かす超巨大企業総帥は。


巨大屋敷の床で。


愛人たちに囲まれながら。


積み木で秘密基地を作っていた。


そしてその横で。


数兆クレジット規模の土地買収が淡々と進んでいた。

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