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聖イリヤ未来総合学院物語  作者: 雪だるま


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11

西暦2312年。


春。


旧ロシア北西教育特区――聖イリヤ未来総合学院。


十年前。


ここは、ただの地方私立校だった。


少し敷地が広く。


少し歴史があり。


少し古い。


それだけの学校。


だが今。


空から見ると、もはや完全に別世界だった。


巨大宇宙船型男子寮。


雪原にそびえるピラミッド寮。


お菓子の城女子寮。


人工湖。


騎馬場。


秘密基地地下網。


巨大スキー要塞。


ガラス温室。


空中回廊。


そして。


学園内列車。


本当に必要だから存在していた。


広すぎるのである。


本当に。


歩くと普通に疲れる。


だから列車が必要だった。


朝。


学園専用小型列車が雪解けの森をゆっくり走っていた。


車体には、


『聖イリヤ学園特急』


と書かれている。


しかも無駄に高級。


座席ふかふか。


窓大きい。


お菓子食べ放題。


完全に富豪仕様。


車内。


成金の子供たちが大騒ぎしていた。


「今日は秘密基地戦争だぞ!」


「違う!先にポニー牧場!」


「騎馬弓術もある!」


「お菓子寮行きたい!」


「昨日ピラミッド地下で迷った!」


「俺まだ宇宙船寮の隠し部屋全部見つけてない!」


うるさい。


非常にうるさい。


だが。


皆、楽しそうだった。


窓の外。


広大なポニー牧場。


小さな子供たちが笑いながら走っている。


昔。


この辺りは放棄寸前の土地だった。


今では。


超高級教育都市の中心である。


駅に到着。


ホームには各国の子供たち。


中東王族。


新興財閥。


宇宙企業創業家。


アジア系富豪。


旧ロシア資源層。


混ざっている。


皆、制服を着ている。


だが。


その制服姿で。


「秘密通路から行こうぜ!」


とか叫んでいる。


世界最高額級の学費を払ってる子供たちとは思えない。


しかし。


保護者たちは満足していた。


なぜなら。


子供たちが本当に楽しそうだからである。


それが全てだった。


校庭。


いや。


“校庭”というには広すぎる。


ほぼ公園。


そこでは。


レイの子供たちも遊んでいた。


髪色や顔立ちは違う。


母親も違う。


だが。


妙に全員レイっぽい。


変なテンション。


変な笑い方。


無駄に行動力がある。


そして。


妙に遊びに全力。


「のだぁあああ!!」


小さい男児が叫んでいた。


教師が頭を抱える。


「あっ……完全に社長の遺伝……」


子供たちは秘密基地エリアへ走っていく。


別の子供たちはポニー牧場。


また別の子供たちは巨大滑り台。


一部は騎馬弓術。


女子寮側では。


お菓子の城ラウンジでティーパーティ。


そこへ。


バレエ棟から音楽が流れる。


オペラ訓練ホール。


芸術棟。


文化施設。


全部揃っていた。


しかも。


教育レベルも高い。


昔、西欧名門校たちが恐れていたこと。


それが現実になっていた。


聖イリヤ未来総合学院は。


“楽しいだけの成金学校”では終わらなかった。


世界最高峰の富豪教育都市へ進化してしまったのである。


もちろん。


西欧名門校も残っている。


ブランドもある。


伝統もある。


だが。


聖イリヤは別方向で勝った。


“子供時代そのもの”。


それを巨大産業化した。


昼。


列車が再び走る。


子供たちが窓から手を振る。


遠くには巨大マンモス像。


その向こうにスキー要塞。


さらに遠くには宇宙船寮。


全部本当に存在している。


もはや夢のテーマパークである。


そして。


中央広場。


そこには。


巨大な銅像が立っていた。


付け髭姿の男。


片手を上げ。


妙に偉そう。


台座にはこう書かれている。


『レイ・アルカージエヴィチ

 悪戯っ子宇宙チャンピオン

 子供はいっぱい遊ぶべきなのだぁ♡』


教師たちは未だに若干納得していない。


だが。


放課後。


夕焼け。


子供たちが笑いながら走っていく。


秘密基地。


ポニー牧場。


お菓子寮。


列車。


宇宙船。


全部を行き来しながら。


その景色を見て。


古参教師がボソッと呟いた。


「……まあ」


静かな春風。


遠くで列車の汽笛。


子供たちの笑い声。


「悪くない学校になったな」


かつて。


地方の普通の私立校だった場所は。


いつの間にか。


世界で一番、“子供が学校へ行きたがる場所”になっていた。

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