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「リリー、今日はなにして遊ぶ?」
おしゃまなシャノン様は、今日も翡翠色の瞳を輝かせております。まさに美の骨頂ですわっ。
シャノン様の質問に答えることなく、シャノン様を腕にきゅっと抱きしめておりますと、シャノン様がくるしいようと訴えてこられました。
「リリー、くるしいよぅ。ヘンタイだよぉ」
へ、ヘンタイ?
その単語を聞くなり、わたくしはさっと手を緩めました。
わたくしの胸の中にいらしたシャノン様が、するっと絨毯の上に着地しました。
「あ〜くるしかった」
「シャノン様? わたくしはヘンタイではありませんわよ?」
「ん〜? ヘンタイってなに?」
そう来ましたか。聞きかじったお言葉なのですわねっ。
「嫌なことをされたら、ヘンタイと叫んでよいのですよ」
適当なことを言ってしまいました。
案の定――。
「じゃあ、リリーはヘンタイだね。あんなにきつく抱きしめるんだから」
「……もうしないので、ヘンタイ呼ばわりはしないでください」
身から出た錆です。仕方ありません。
「うん、わかった。それで、今日はなにをして遊ぶの?」
言うが早いか、シャノン様は魔法でシャボン玉を取り寄せて吹いております。
綺麗ですが、ここは部屋の中ですので、いけませんよ、と注意することにしました。
「シャノン様、魔法はおもちゃではありませんのよ? そう簡単にポンポン使われては、わたくしでも追いつけませんわ。それよりほら。編み物をやってみてはいかがでしょう?」
シャノン様が大事に持っていらっしゃるうさぎのあみぐるみも、犬のぬいぐるみも、すべてわたくしが作ったものなのですっ。
「編み物って、どうやるの?」
シャノン様はあまり乗り気ではないようですが、とりあえずやってみようとしてくださります。
わたくしはかぎ針と毛糸を手にして、シャノン様に編み方を教えます。
「え〜とぉ〜。ここに針を通して?」
「そうです」
「ここに糸をかけてぇ〜?」
「その通りです。」
「糸を引っ張り出すの?」
「大変お上手でいらっしゃいます!!」
「つまんない」
あ。かぎ針がぐにゃりと曲がってしまいました。
シャノン様の魔法が暴走しますと、大抵なにかの物が原型をとどめないことになるのです。
「こんなの、魔法でやっちゃえばいいのに」
「シャノン様、それでは編み物のたのしさがわかりませんよ?」
「いいもんっ。パピー、遊んで!!」
ついにシャノン様の集中力が途切れてしまいました。
パピーはシャノン様にわしゃわしゃとなでられて、ありがた迷惑ぬ顔をしております。
シャノン様はこう見えましても、まだほんの六歳ですからね。編み物の楽しさがわからなくても当然です。
ですが、困りました。どうしましょう?
つづく




