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Gateau de fantasie~ガトー・ド・ファンタジー~【港町ポルトと甘い約束の物語】  作者: kou pâtissier


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第Ⅻ話 後編【別れとその先へ】其の三


 ミーナが昼食……三度目の食事を終えると、ミーナの家を後にした。

 祝願祭の最終日とあって、街の賑わいは最高潮になっている。そんな中を、ソウを探しに街の中を進んで行った。


 ——アイツは知っていたんだ……ミーナの事も病気の事も、なのに……。

 

 苛立ちと感謝が入り混じり、複雑な心境で人混みの中にいるはずのアイツを探した。


 教会のある広場を抜け、まずは南へと足を向けた。ミーナが食べさせてくれた燻製の肉屋。奥からモクモクと煙が上がり、店の前には行列が出来ている。

 雲菓子……イチゴキャンディ……。狭い脇道を探してもアイツはいない。

 

 南区の外れにある、誰もいない塔。ミーナを探して登った塔に駆け上がり、上から見下ろすがやはりソウの姿は見えない。もう一度、南区の農産市へと戻り屋台や市場に視線を運んだ。


 すると、閉まっていたはずのバニラを売っていた屋台。その店主がまた違う店を開いているのを見つけた。

 

 店に並んでいたのはポルトで買えるありふれた物。でも、全て乾燥させたのかカラカラに乾いている。

「ポルトの名産品を乾燥させた野菜や果物の保存食はいかがだい!日持ちもするから帰ってからでも楽しめるよ!おっ、坊やいらっしゃい」

 視線が合うと店主が声をかけてきた。

「あの……前にバニラを売っていた人ですよね?」

「そうだけど——あぁ、あの使いさしのバニラを買ってくれた坊ちゃんかい!いやー普段ならまだ使えるから売らないんだけどね、大口の買い物客に頼まれてね——」

 

 ——頼まれてた?誰に?

 ……まさか……アイツなのか。


「それって……バニラを大量に買い占めていった人ですか?」

「そうだけど……知り合いかい?」

「知り合いというか、知ってるというか……」

「それなら、今度会ったらお礼言っといてくれるかい」

「——お礼?」

 ——買い物客にお礼なんてどういう事だ……。

「あぁ、バニラを買ってくれたおかげで新しく仕入れが出来た。買い占めるとは思ってなかったが……。だが、そのおかげで俺も次の街でも行商が出来るってね」

「……わかりました。会ったら伝えておきます」


 

 店主に別れを告げ、また教会のある広場に戻ってきた。噴水の縁に立ち少し高いところから見回した。

 だが、人混みを見渡しても、あの黒髪はどこにも見当たらない。

 目立つ黒髪だ、遠くに居たとしてもすぐにわかるはずなのに。

 

 ——どこだ——どこにいるんだ……。

 ソウは祭りの終わりまではいるって、確かに言っていた。

 首を回し、教会から見える路地の方へと視線を向けていく。東——海へと向かう道は下り坂だが、眼下には屋台に並ぶ行列と路地に広がる人の姿。その中にも黒い髪は見当たらない。

「くそっ。ここにも見当たらない」

 

 西に伸びる路地は平坦で、少し高いところに行かないと見る事が出来ない。

 ——北区は緩やかに登りだ。こっちなら見えるはず。

 北の大通りに視線を送ると、長く伸びている路地の中腹あたりに黒い髪が見えた。


 ——いた、アイツだ。


 いた。見つけた。……でも人が多すぎる。

 北の大通りは北門まで行くと折り返して帰ってくる一方方向の通りだ。

 ——海側から回り込んで行けば先に北門に着ける。


 回り道だが、一度港の方に下がれば北門まで続く裏路地がある。見たところ北の大通りには人が多すぎて、そこまで進むのは早くない。

 ——ギリギリ間に合うはずだ。


 人混みを抜け、裏路地へと飛び込んだ。


    ♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 北門まで続く裏路地は石畳の先に階段、また階段。至る所にある階段を何段も登り、ようやく北門に続く壁面が見えてきた。

「はぁ……はぁ……はぁ。やっと……着いた」

 足がブルブルと震える。膝に手をつき、抑えていないとそのまま座り込んで立てなさそうだ。


 重い足を引き摺りながら、壁面を辿り北門へと抜けた。


 見渡してみると、北の酪農市はそこまで混雑していない。

 首を左右に振り、見回したがソウの姿はなかった。


 ——くそっ、どこだ……。あっ。


 北門のすぐそばにある屋台。そこはパームスの家がしている所だ。店番には前と同じく、キビキビと動くパームスの妹とその隣で寝ているパームスの姿が見えた。


 思うように動かない足で、パームスのところに向かうと声をかけた。

「パームス起きろ!なぁっ!」

「いらっしゃいませー。お兄ちゃん起きてよー!お客さんだよ」

 動かないパームスに少しだけ苛立ち、屋台の中へと入りユサユサと揺さぶった。

「なぁ、ソウを見なかったか?あの夢人の!」


「ちょ、ちょっとお客さん止めてください。ソウさんならさっきまで来てました。港に行くって——」

「ありがとう!」


 ——行き違いになっていたか。

 もう一度階段の方へと向けて急いだ。


お読みいただきありがとうございます。


ミーナとの穏やかな時間を終え、今度はソウを探して祭りの街を駆け回るエル。

これまで登場した場所を巡りながら、「祝願祭の終わり」が刻一刻と近づいてきます。


次回更新は7月20日(月)19月30分です。

完結まではあと三話。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

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