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剣士とビッチと美少女七人(エトセトラ)  作者: 恵/.
3の章 ~星乙女と虚無の鉱山都市~
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有能な人は真面目に仕事すると話が破綻しかねない


「ただいまー」

「あ、カルバちゃん。どこ行ってたの?」

「んー? ちょっと野暮用だよー」

 店に戻ったカルバに、スルホンが寄って来た。……今はまだディナータイムで、ピークは過ぎたものの未だに客足が衰えない。この状況で抜け出していたので、疑問に思ったのだろう。

「カルバ! 三番テーブルに大盛サラダ三人前とミックスフライ四人前!」

「四番テーブルもです! ビールの追加お願いします!」

 その直後、厨房に注文が入った。……エーテルもハイドラも、昼間のウェイトレス姿で働いていた。元々接客向きな性格のエーテルは当然として、ハイドラもウェイトレスとしての仕事をこなしている。貴族の生まれではあるが、商業都市で育ったため、接客はある程度できるのだろうか。

「はいはーい、ちょっと待っててねー」

 注文を受けて、カルバは料理を作り始める。……グラのお陰で悩みも解決したためか、その手つきは実に軽やかだった。

「~~~♪」

「カルバちゃん、元気になったんだね」

「ん~? 何か言ったー?」

「何でもないよ」

 カルバの様子に密かに気づいていたスルホンは、そんな彼女に安堵する。……こうして、夜が過ぎていく。



  ◇



 ……翌朝。


「お邪魔します」

「あっ……プロンさん」

 朝の食堂にて。昨日と同じ台詞で、カルバとプロンは顔を合わせた。

「例の件、考え直して頂けましたかな?」

 プロンが催促するのは、縁談に対する返答。―――というよりは、彼女が受け入れる覚悟ができたか、それを尋ねているのだ。

「その件だけど……ごめんなさい」

「……どういうおつもりですか?」

 だが、カルバはプロンに頭を下げる。そんな彼女に、プロンは疑問の声を上げた。

「やっぱり私、まだ結婚とか考えられなくて……伯爵様には申し訳ないけど、この話はお断りします」

「そうですか……ですが、いつまでも独りというわけにもいきますまい。良いお話というのはいつまでも残っているわけではありませんよ」

「うん……でも、私は」

 プロンが食い下がってくるが、カルバの意志は固い。ちょっとやそっとでは、意志を曲げることはないだろう。

「伯爵様が嫌ってわけじゃないけど―――多分、相手が誰でも、同じ答えになっていたと思う」

 それはグラが相手であっても。カルバは心の中でそう付け足した。……いかに早婚が多いオガーニとはいえ、こういう考えの女性は一定数いる。体が完全に大人になっていないからだとか、心が体の成長に追い付いていないからだとか、様々な説があるが、ともかく、二十代まで結婚しない女性というのは珍しくなかった。彼女もその一人というわけだろう。悩んだ結果、そういう結論に至ったのだ。

「そうですか……残念です」

 カルバの答えに、プロンは心底遺憾そうにそう呟いた。

「できることならばこのような真似は避けたかったのですが……そういうことでしたら致し方ありませんな」

「え―――」

 疑問の声を上げている最中、カルバは意識を失った。……空属性魔法の一つ、昏倒だ。気流を操って対象の呼吸に作用し、瞬間的な窒息に追い込んで気絶させる魔法。それを、プロンが発動したのだ。

「乙女の確保は必須ではないとのことでしたが……やはり、ないよりはあったほうがいいというもの。それに、万が一の保険にもなるでしょうな」

 プロンは無表情に、気を失ったカルバを抱える。

「あの方がああ仰るからあの方法も試しましたが、最初からこうすれば良かったですね」

 少女を抱えたまま、彼は食堂を出た。……本来ならば目立つその姿も、隠形の魔法を使うことで隠してしまう。無駄に高性能な執事だった。



  ◇



 ……数時間後。


「それで、グラたんはどうするの?」

 朝食の席で、エーテルはグラに問い掛けた。……彼らはスルホンの家で朝食を取っていた。そして、今日の予定を話し合っていたのだ。

「そうだな……今日は体調もいいし、俺もカルバの手伝いでもするかな」

「え? グラたんって料理できるの?」

「お前……スチレで誰が飯を作ってやったと思ってんだ?」

 エーテルの感想に、グラはイラッとしながらそう言った。……スチレで彼女たちがギアの製作に明け暮れていた頃、彼は食事の用意をしていた。それを忘れた彼女の発言を不愉快に思うのは当然だ。

「確かに、厨房が手伝える人は多いほうがいいですね」

「だろ。あの調理速度だってかなり無理してそうだし、そうでなくとも下拵えくらいは手伝いたい。あいつには色々と世話になってるしな」

「グラたん……そんなにカルバのことが気になるの? さては、仕事の合間に手を出すつもりで―――」

「グ、グラ様……!?」

「なんでそうなるんだよ……!?」

 エーテルの不名誉な言い掛かりに、グラは怒鳴るように突っ込んだ。

「ごめんくださーい」

 そんな騒がしい朝食中に、来客が現れた。……カルバが働く食堂の店主だ。

「あら、どうしたの? まだ私のシフトじゃないはずだけど」

「カルバちゃん見てない? いつも通り食堂のお掃除を頼んだんだけど、急に姿が見えなくなって。こっちに顔を出してるのかと思ったんだけど」

「見てないわね……スルホン、みんな、カルバちゃん見なかったかしら?」

 話を聞いて、スルホンの母は全員に尋ねるが、頷く者はいなかった。

「カルバ、どうしたのかしら……?」

「心配です……」

「カルバちゃん……」

「……まさか」

 カルバが行方知れずと聞いて、不安げな女性陣。そんな中、グラの脳裏に嫌な考えが過った。

「グラたん、何か心当たりでもあるの?」

「いや、そういうわけじゃないんだが……昨日、カルバから気になる話を聞いたんだ」

 そして、昨日カルバからされた話を彼女たちに話した。個人的な相談だったので話すのは躊躇われたが、万が一のことを考えると、知ってる情報は早い段階で共有するべきだと判断したのだ。……無論、彼女には後で謝るつもりだが。

「縁談ねぇ……お相手が貴族ってのはあれだけど、その手の話は別に珍しくないんじゃない?」

 グラから事情を聴いて、エーテルはそんな感想を口にする。

「グラ様、そのお話は本当なのですか?」

「ああ。本人から聞いたんだから間違いないが」

「そんな……!」

 だが、ハイドラとスルホンの反応は、彼女とは違って深刻そうだった。

「どうしたのよ?」

「……もしかすると、カルバ様が危ないかもしれません」

 険しい表情で、ハイドラはそう言った。

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