終焉の咆哮へ②
王宮を後にしたアデラが屋敷に戻ると、すぐにエリアスのもとへ向かった。控えの間に彼を見つけると、その足音だけで彼は何かを悟ったかのように顔を上げた。
「……何か、あったのですね。」
アデラは一呼吸置いてから、口を開いた。
「『終焉の咆哮』に行くことになった。」
その瞬間、エリアスの表情から血の気が引いた。
「……なんだって?宰相ですか?だったらすぐに抗議文を。」
「王命よ。一人で、森の奥に眠る宝石を取ってくるようにと。」
エリアスは拳を握りしめ、その手がわずかに震えていた。
「あの森は……あの森だけは……!」
エリアスの声が上擦り、その身体がふらりと傾いだ。アデラが駆け寄ろうとした瞬間、彼はその場に崩れ落ちた。
「エリアス!」
アデラの叫びが屋敷に響いた。
どれほどの時間が経ったのか、エリアスが目を覚ましたとき、薄明かりの中にアデラの寝顔が見えた。椅子に座ったまま眠っていたのだろう。細く繊細な肩が、どこか儚げだった。
エリアスはそっと毛布を手繰り寄せようとしたが、その動きに気づいたアデラが目を覚ました。
「……エリアス。よかった……目を覚まして。」
その声は震えていた。怒りとも悲しみともつかぬ感情が、混じり合っていた。
「ごめんなさい……アデラ……心配かけて……。」
「……どうして、こんなになるまで我慢をしたの?」
アデラの瞳には、痛みと後悔があった。気づいてやれなかった自分への怒りも、そこには宿っていた。
「……薬を、飲んでいたんです。」
エリアスの告白は静かだった。
「アンドレと約束したのに、もし何かあったらって……怖くて、つい……。」




