終焉の咆哮へ③
成長を抑える薬。エイラとして過ごすために必要だった過去の名残。それを、エリアスはアデラに黙って飲み続けていた。
「……謝らないで。」
アデラは、エリアスの手をそっと握りしめた。
「私のためにしてくれたこと。感謝しかないわ。でも、だからこそ……もう、自分を犠牲にしないで。そんなふうにしてまで、私のそばにいようとしないで……。」
その言葉に、エリアスはかぶりを振った。
「違います。犠牲じゃない。アデラの力になれることが、私の誇りなんです。」
エリアスは、涙で濡れた瞳を隠すようにうつむいたが、次の瞬間、その瞳を力強くアデラに向けた。
「……だから、お願いです。約束してください。」
「約束?」
「『終焉の咆哮』へ行ってください。行って、生きて帰ってきてください。私が、あなたを迎えるまで。」
アデラは目を見開いた。
「私はもう薬をやめます。でも効果が消えるまで時間がかかる。その間、あなたが帰ってくるのを待っています。そして……あなたが戻ったら、私からアデラに求婚をします。」
その声には、涙も、怒りも、愛情も、すべてが混ざっていた。
「……求婚って……!」
「僕、成長したら、アデラよりきっと背も高くなります。……だから、ちゃんと男として、あなたを守れるようになったら……今度は僕が、あなたに求婚します。」
抱きついてきたエリアスの小さな身体に、アデラはそっと腕を回した。
「エイラ……ううん、エリアス。あなたが私を選んでくれたように、私もあなたを選びたい。だから、帰ってくる。絶対に。」
その誓いが、ふたりを優しく包んだ。
心に灯された温かな炎が、アデラの中で燃えていた──。




