真実の訪れ アンドレからアデラ③
クヌートは人々の耳目を集めるように、ゆっくりと話し始めた。
「ヨン殿は、真実の石を用いて『フォルモーネ公爵家の方々』が無実と証言しました。しかし、なぜ個人名──『アンドレ・フォルモーネ』と名指しなさらなかったのですか?」
場が凍りつく。
「さらに、アンドレ様。三日前の初公判の場で、あなたはご自分の名を一度も名乗りませんでしたね。神の前では名を告げるのが礼儀であり、義務です。それを怠る理由が、何かあるのでしょうか?」
人々は動揺し始め、さざ波のように囁きが広がる。
「名前を言わないなんて……。」
「まさか、まだ何か隠しているのでは?」
クヌートは最後の矢を放つ。
「そしてもう一点──アンドレ様とエイラ様……いえ、エリアス様とのご結婚について。虚偽の婚姻を国民に見せ、王族までも欺いた件について、いまだ明確な説明がなされておりません。これは立派な罪なのでは?」
その瞬間──
「その件については、我も説明を求めたい。」
──スヴェーリエ王が、ついに沈黙を破った。
(クヌート伯爵子息は初めからこれが狙いだったのか……。だからエリアスに近づき、ヨンに私の無実を証明してから『真実の石』の前で誓わせる……)
アンドレはしばし沈黙し、それから──深く一礼をし、言葉を紡いだ。
「私、アンドレ・フォルモーネは……存在いたしません。」
人々が息を呑む。
「本当の名は、フォルモーネ公爵家長女、アデラ・フォルモーネです。」
そして彼──彼女は、首にかけていた銀のネックレスを外した。
銀の粉が舞い、アンドレの姿が静かに変わっていく。
短く整っていた髪は、滑らかな銀糸のように流れ落ち、身体のラインは柔らかく、女性らしいものへと変わっていった。
──その場に現れたのは、美しく凛とした一人の女性。直系フォルモーネ公爵家の長女、アデラ・フォルモーネ。
聴衆は騒然となり、喜び、混乱し、怒り、賞賛し、歓喜し──感情が渦巻く嵐となった。
「アンドレ様が……女性だったなんて!」
「騙された……!」
「アデラ様、お美しい……!」
騙されたと感じる者、すべてを許す者、歓喜する者、嫉妬に狂う者……それぞれの思いが、ひとつの真実の前で揺れていた。
そして──アデラは、堂々と胸を張り、民衆を見据えた。
すべての仮面がはがされた今、物語は新たな幕を開けようとしていた──。




