真実の訪れ アンドレからアデラ②
審問官の声が堂内に響く。
「本日は、ガリレオ・ネーメス卿の反証と、新証人の尋問をもって、この件の最終判断を下す。」
重々しく響くその言葉に、大聖堂の空気は一瞬で張りつめた。
やがて、フードをかぶった人物が証人台へと進み出る。その姿を見た瞬間、エリアスの目が大きく見開かれた。
──そして、アンドレが呟いた。
「……ヨン。」
その名は、彼の信頼する執事の名。幼き頃から共にあり、家族のように信じていた存在だった。
「どういうことだ……。」
動揺するアンドレをよそに、クヌートが淡々と質問を始める。
「スヴェーリエ王、ご挨拶いたします。私はアーネル伯爵家の嫡男、クヌート・アーネルと申します。──ヨン、あなたは『スヴェーリエ王国の鍵』をガリレオ卿から受け取り、公爵家へと持ち出しましたね?」
「……はい。確かに、私は『重要な鍵』をガリレオ様から受け取りました。ですが、それはアンドレ様の命令だと聞いておりました。」
ざわめきが、大聖堂を駆け巡る。
アンドレが命じたという証言が、すべてを覆す可能性がある──そう思ったその時、ヨンは続けた。
「ですが私は、その鍵をアンドレ様にお渡ししておりません。鍵を受け取り、襲撃の件がありそのことをアンドレ様に伝えることと、鍵をお渡しするために王宮騎士団の検問を受けてからフォルモーネ公爵家に戻りました。そして、王宮襲撃の件をアンドレ様にご報告しました。しかし、その騒動のさなか、鍵の件をお渡ししそびれ……そのまま私の手元に残ったままでした。」
その言葉に、審問官が「真実の石」を示す。
ヨンは静かにその前に立ち、宣言した。
「私、ヨンは、フォルモーネ公爵家の方々が王宮襲撃に一切関与していないことを証明いたします。」
人々が息を詰めるなか、「真実の石」は──沈黙を守ったまま、光らない。
石が光らないということは、偽りのない証言であるという証。証言は、真実だ。
大聖堂は爆発したかのように騒然となる。
ついに、一連の陰謀に終止符が打たれようとしていた。
アンドレは静かに前に進み出ると、ヨンに向かって一礼し、穏やかな声で言った。
「ありがとう、ヨン。」
その言葉に、ヨンの瞳から静かに涙がこぼれ落ちた。
審問官が高らかに宣言する。
「これにより、今回の裁判における証拠はすべて、宰相側の虚偽である可能性が高い。アンドレ・フォルモーネの嫌疑は晴れたものとする。今後、宰相およびガリレオ卿には改めて査問が入る。」
大歓声と拍手が沸き起こった。
だがその時、誰よりも冷静だったのは──宰相本人だった。
それを見ていたクヌートが、あえて発言の機会を求めた。
「審問官殿、今一つ、確認したいことがございます。」




