剣なき騎士と神殿の裁き②
「アンドレ様。明日、裁判が行われることが決定いたしました。」
突然の報せに、アンドレの眉がぴくりと動いた。
「……裁判?」
聞かされていなかった。しかも、明日とはあまりにも急だ。
つまりこれは、事前に準備をする時間も与えられず、一方的に決定されたものであることを意味していた。
が、それは裏を返せば──敵もまた、アンドレを裁くための証拠集めに苦労しているということでもある。潔白であるアンドレを、無理やり罪に陥れるには、相応の「仕掛け」が必要なのだ。
(気を緩めるな……油断すれば、そこで終わりだ)
自らにそう言い聞かせたそのとき、さらに予想外の発表が続く。
「そして、この裁判はサンニー女神の御前にて、スヴェーリエ大聖堂で執り行うことが決まりました。」
その言葉に、周囲の騎士たちの間にざわめきが走った。まるで、予想もしていなかったように。
──スヴェーリエ大聖堂。
それは王国最大の宗教施設にして、王族の婚姻式から重大犯罪の裁判までを司る神聖な場所。サンニー女神は「真実と平等の女神」として崇められており、その御前で嘘を吐くことは最も重い冒涜とされていた。
だが、その神聖な場で裁かれるということは──すなわち、アンドレがすでに「歴史に刻まれるほどの大罪人」として扱われている、ということに他ならない。
王宮が襲撃されたとはいえ、被害は軽微。死者も出ていない。にもかかわらず、わざわざスヴェーリエ大聖堂で裁くというのは、あまりにも大仰で不自然だった。
そこに透けて見えるのは、明確な「政治的意図」だ。
(……これは、俺を見せしめにするつもりだな)
王命とあっては、拒否などできるはずもない。
アンドレは、静かに歯を食いしばった。




