揺れる心と告白③
その夜、アンドレはなかなか眠れなかった。
窓の外には、静かな月光が降り注いでいる。
彼女は胸に手を当て、自分の心音を感じながら、そっと目を閉じた。
エリアスの言葉が、何度も何度も頭の中で反響する。
「──あなたを好きになってしまった。」
「──私は、アデラを守り、支えたいと思っている。」
(私も……)
彼のことをどう思っているのだろう。
契約相手?
親友?
それとも──
眠れぬ夜が、長く続いた。
翌朝。
アンドレは食堂でエリアスと顔を合わせた。
彼は普段通りの柔らかい笑みを浮かべていたが、昨日の言葉を思い出すと、妙に意識してしまう。
(……どう接すればいい?)
答えが出ないまま、アンドレはエリアスの向かいに座った。
「おはよう、アンドレ。」
「ああ……おはよう。」
いつもなら軽口を叩くのに、今日は言葉が出ない。
エリアスはそんなアンドレの様子を察しつつも、何も言わなかった。
ただ、彼の微笑みには、確かな決意が滲んでいた。
(エリアス……)
アンドレは密かに拳を握る。
(このままじゃいられない。私は……私自身の気持ちに向き合わなければ)
その答えを出すために、彼女は心を決めた。
(もう、逃げるのはやめよう)
そんなアンドレの決意も虚しく、魔の手はすぐそこまで迫っていた。
公爵家に一通の手紙が届く。
そして、「契約」の関係が、少しずつ「本物」へと変わり始める──。




