揺れる心と告白②
エリアスの言葉が夜の静寂を貫いた。
アンドレの心臓が、大きく跳ねる。
「……冗談を言ってる場合ですか?」
「冗談なら、こんなに真剣な顔はしないですよ。」
エリアスは、アンドレの瞳をじっと見つめる。
「あなたのためなら、私はどんな危険も恐れない。それに、もう「契約」のためだけに一緒にいるわけじゃない……あなたを守り、支えたいと思っている。それは、夫婦として当然の気持ちではないですか?」
アンドレは言葉を失った。
(こいつは……本気で言っているのか?)
エリアスの瞳には、冗談を言うときの軽さを一切含んでいない。そこには純粋な感情が込められていた。
アンドレは視線をそらし、拳を握る。
「……そんなことを言われても、私はどうすればいい?」
「アデラの気持ちを聞かせてほしい。」
エリアスの声は、どこまでも穏やかだった。
「私のことをどう思ってるいますか?」
アンドレは、答えられなかった。
否定しようとしても、口が動かない。
「エイラ」としても、エリアスに惹かれていたことは、ずっと前から自覚していた。
だが、エリアスが「エリアス」として振る舞うたび、彼の強さや優しさ、聡明さに心を奪われていることにも気づいてしまった。
『契約』として割り切れるているはずだったのに──
(私は……)
この関係が『契約結婚』であることを言い訳にして、ずっと逃げていたのではないか。
エリアスは、そんな彼女の迷いを見透かしたように、そっと手を伸ばす。
「──答えを急がなくてもいい。でも、私は待たないよ。」
いつもの優しい「エイラ」とは違い、今のエリアスには男としての力強さや美しさがある。
「……どういう意味ですか?」
「あなたが自分の気持ちに気づくまで、私はただの「契約上の妻」でいるつもりはありません。」
エリアスは、微笑む。
「私はは、アデラとアンドレのことを好きになった男として、あなたを守る。」
「……!」
アンドレは息を呑む。
エリアスは優雅に立ち上がり、アンドレに手を差し出した。
「そろそろ屋敷に戻ろうか。」
エリアスはいつもの丁寧な話し方から柔らかくはあるが、低く穏やかな男性のような声がした気がした。
アンドレは、その手をしばらく見つめた後、ゆっくりと手を重ねた。
(私は……どうしたいんだろう?)
答えはまだ出ない。
だが、エリアスの言葉が心に深く残っていることだけは確かだった。




