交差する陰謀③
襲撃者たちは、警備隊の増援が到着すること、そそくさと撤退した。
火の手もすぐに消し止められ、大きな被害は免れたが──
これは、明確な「宣戦布告」だった。
その後、諸々の処理を終え、アンドレが屋敷に戻ったのは日付が変わり、お昼の暑い日差しが差し込むころだった。
これでも、早く帰れた方だといえる。
それには、フォルモーネ公爵家も被害にあったという状況であり、父、アントンが王宮の処理をアンドレの分もしてくれるためであった。
アンドレは屋敷に戻ると、自室にも行かず、屋敷内の状況を確認した。
幸いにも被害はないと言っていいほど負傷者も少なく済んだ。
そう思っていたとき、エリアスが近づいてきた。
「アンドレ……君の家が狙われている。」
屋敷の廊下で、ルシアンが静かに言う。
「今回の襲撃は、緩すぎた。時間稼ぎをしているようにしか感じられなかった。」
「……ああ。」
アンドレはうなずき、エリアスを見つめた。
「あなたを巻き込むつもりはなかったですが……。」
「私も一緒に戦います。僕はあなたの妻なのだから。」
エリアスは、柔らかく微笑む。
だが──
その瞳の奥にある決意を、アンドレは見逃さなかった。
それは「契約結婚」の枠を超えたものだった。
(エリアスは、本気で私を支えようとしている)
そして、アンドレもまた──
(あなたを「守りたい」と思っているのは、私も同じだ)
「契約」ではなく、「本当の夫婦」として。
エリアスの中に、また一つ新たな覚悟が芽生えていた──。




