本当の夫婦になるために
エリアスがフォルモーネ公爵家の管理の手伝いを行うようになってから、一週間が経った。
彼は驚くほどの適応力を見せ、公爵家の財政管理や書類整理を手際よくこなしていた。
「……すごい。」
アンドレは、エリアスが整理した帳簿を眺めながら感嘆の声を漏らした。
収支の見直しが行われ、無駄な支出が削減されている。
それに加えて領民の支援など使うべきところでは使わていている。
「もともと、父のもとで学んでいたので。」
エリアスは穏やかに微笑んだ。
「それに、こういう仕事は好きなのです。」
アンドレはそんな彼の横顔をじっと見つめる。
(本当に、頼もしいな)
エリアスは最初の三日で実力を見せ、すぐに公爵家の財政を担うのに欠かせない人物となっていた。
また、同い年の同姓も多いからか毎日が楽しそうで充実して見える。
エリアスがこのまま公爵家の仕事を続けてくれるなら、アンドレの負担は大幅に軽減されるだろう。
(エリアスに任せておけば大丈夫だろう──だが、それでいいのか?)
アンドレは、自分の中に芽生えた疑問に気づいた。
「エリアス。」
「なんですか?」
「あなたは……それで本当にいいのですか?」
エリアスは少し驚いたようにアンドレを見た。
「どういう意味ですか?」
アンドレは腕を組み、真剣な表情で言った。
「あなたは今、貴族の妻の役割ではなく、公爵家の管理を担っている。それは、男として生きるのではなく女性として妻として生きるという覚悟にも思えるのですが。」
「はい、そうですね。」
「……あなたは、それで本当に、後悔はないのですか?不満はないのですか?」
エリアスの表情が、わずかに曇る。そして悲しそうな顔をした。
「少し、私の話しに付き合ってください。」




