すれ違う心③
エイラが気づかぬうちに、さりげなく会話に割って入った。
「話が弾んでいるようだね。私もご一緒していいかな?」
微笑みながらも、視線は鋭く、手は自然と彼女の腰へ回し、まるで、「彼女は私のものだ」と示すようだ。
「──エイラ。」
「アンドレ様?」
驚いたように振り向いたエイラの顔には、一瞬の動揺が走った。
「この方はどなたかな?」
アンドレは男に冷たい視線を送った。
「私はここで失礼します。」
そう、アンドレの冷たい微笑みにばつが悪くなったのか男はその場をそそくさと立ち去った。
「……昔、知り合いだっただけですよ。」
エイラは誤魔化すようにアンドレに答えた。
「そうか。」
アンドレは、ふとエイラの手に力が入っていることに気づく。
「エイラ、本当は何か隠しているのではないですか?」
「……っ。」
エイラは目を見開いた。
「それは……。」
そのとき、楽団が曲を変えた。
「……踊りませんか?」
エイラが、わざと話題を逸らすように手を差し出す。
「……いいでしょう。」
アンドレは、納得できない気持ちを抱えながらも、エイラの手を取った。
音楽に合わせて踊る二人。
その間も、アンドレは彼女の瞳をじっと見つめ続けた。
「……お前、何を隠している?」
囁くように問いかけると、エイラはふっと微笑む。
「……契約結婚をしただけよ、私たちは。これ以上、探るようなことをすると契約違反ですよ。」
エイラは怒ったように静かにアンドレに耳打ちした。
「……。」
アンドレは、それ以上何も言えなかった。
契約のはずなのに、なぜこんなにも苦しいのか。
そして、なぜエイラはそんな悲しそうな目をするのか──。
二人の心は、少しずつ、すれ違い始めていた。
ついにエリア、『エリアス』の秘密が──。




