すれ違う心②
夜会が始まると、エイラは貴婦人たちと談笑し、アンドレは政治的な会話に加わっていた。
二人の距離は、ほんの少し遠かった。
「──最近、奥方とはうまくいっているのか?」
ふいに、親友のウルリクがアンドレに尋ねた。
「うまく……?」
「いや、別に悪い噂があるわけじゃないが、お前の様子がおかしような気がしてな。やけに落ち着きがないというか、奥方をよく見ているというか。
それにエイラ嬢も少しいつもと違うような気がしてな。」
「エイラが?」
「ああ……まるで、何かを隠しているような雰囲気だ。」
アンドレは完全に無意識だった。
自分に考えもせず、エイラを目で追っていたのだ。
アンドレはもう一度、エイラの方を向く。今度は探るようではなく、しっかりと端に立ち休憩をするエイラを見つめた。
彼は上品な微笑みを浮かべながらも、どこか虚ろな目をしていた。
その視線の先を辿ると──そこには、ある貴族の男がいた。
アンドレは眉をひそめる。
「……あの男は誰だ?」
「ああ、伯爵家の子息だな。エイラ嬢とは、以前から何か関わりがあったらしい。」
「そうか……。」
ウルリクと話していると、エイラにその伯爵家の男が近づいて何やら話していた。
エイラは嫌がる様子もなく、笑顔で会話をし、視線も彼に向けられたままなのを見て、アンドレの胸にざわつくものが広がる。
ワインの入ったグラスに力がこもるのが自分でもわかる。
アンドレは少し離れた場所からじっと彼女を見つめていたがやがて一言静かに放った。
「少し、話を聞いてくる。」
「おい、待てアンドレ。グラスにヒビが入っているぞ。」
アンドレにはウルリクの声が聞こえてないのか、グラスを置き、エイラのもとへ向かった。




