父として当主として②
アントンは友人を問いかかけに答える。
「まあな。そっちこそ、大事な息子を娘として嫁がせてよかったのか?確か、優秀なんだろう?」
「そうだな、跡継ぎの長男よりも優秀だ。だが、あやつが勉強をするのには理由がある。」
エイナルは愉快そうに笑いながらも続ける。
「エリアスもついに結婚か。まさかこんな形で夢に近づくとはな。」
アントンは何のことかわからないといった顔をしていたが、彼は知っていた。
エリアスの夢が騎士団長を支える軍師であることを。そして、フォルモーネ公爵家は代々、騎士団長を輩出する家だ。
また、彼の息子は、姉の代わりに完璧な伯爵令嬢を演じ続けてきた。だが、エイナルは知っていた。
エリアス自身が「エイラ」であることにどこか違和感を抱いていることを。
彼は決して言葉にはしたことがないが、父である自分にはわかる。
「それより、あいつらは互いに性別を偽っていることを知っているのだろうか?」
アントンが疑問を口にした。
「知らなそうだな……。」
少し……いや、かなり二人のことが気になり不安になってきた父親達。
いずれにせよ、両家の当主は、二人の婚約を受け入れた。
ならば、当主として家の繁栄を望み、父親として子どもを持つものとして信じるしかないだろう。
アントンとエイナルはゆっくりとペンを走らせ婚約書に自らの名を記し正式に承諾した。
(アデラ、お前が選んだ道が正しかったと証明してみせろ)
(さて……どんな未来になるか、楽しませてもらおうか)
こうして、公爵と伯爵──二人の父親の思惑が交錯する中で、アンドレとエイラの婚約は決まる。
だが、彼らたちも知らないところで新たな動きが──。




