108本の赤いバラ②
月の光が徐々に静まるとともに舞踏会もゆっくりと幕を閉じ、朝が静かに訪れようとしていた。
花々は朝の光を受けてさらに開き、小鳥たちがさえずり、葉は光を浴びて色を深める頃。
一台の馬車が静かに門の前で止まった。
豪華だが過剰な装飾のないその馬車から降りてきたのは、珍しく軍服ではなくディレクターズスーツを身に纏った一人の青年だった。
その光景を見た全ての人が驚く。
彼が手にしていたのは108本の赤のバラの花束だった。
誰が見てもプロポーズをしに来た男性だ。
彼は、従者が渡す箱を受け取り、歩く。玄関の扉が開かれると、執事が驚いたように彼を迎えた。
「エイラ様はすでにお目覚めでしょうか。」
強さと威厳を兼ね備えた低い声に、執事は軽く咳払いをして答える。
「はい、ただいま温室でお茶をたしなんでおります。」
「それならば、ぜひお目通りを。」
執事の案内で彼が通された温室ではエリアス──エイラが茶会の準備をして待っていた。
「あなたがこんなにも早く訪ねてくるとは思いませんでした。」
アンドレは静かに微笑むと、手にしていた箱をそっと開いた。
「どうしても、貴女に直接伝えたかったのです。」
彼が箱を開くと、中には美しく磨かれた指輪収められていた。太陽の光に照らされ、指輪の石が優しく輝く。
「私、アンドレ・フォルモーネはエイラ・オーケン伯爵令嬢を心から敬愛し、秘密とともに歩む未来を望んでいます。」
彼は椅子を立ち、静かに跪く。
「どうか、私の妻になってはいただけませんか?」
「私もアンドレ・フォルモーネ公爵子息様を心からお慕いしております。
これから秘密とともにあなたと人生を歩むことができるなら、心より嬉しく思います。どうか私をあなたの妻として迎えてください。」
メイドや執事は絵になるような二人のプロポーズを眺めていた。
そんな光景を二人が見ると、そそくさと持ち場に戻っていった。




