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龍の子

「セラミス…ドラゴンが来る!逃げろ!」


 俺はドラゴンが来ていると分かった瞬間、セラミスに告げた。


 だが、セラミスは逃げるどころか、なぜか本を持って俺について来る。


「セラミス!」

「全部一人で背負い込もうとしないで…私は、嫌われたって、センパイのことを絶対助ける」


 セラミスの瞳が、一歩も譲らないと語っていた。


 …どんだけ強くなってんだよ……お前は。


「帰ったら色々話したいな…2年間のこと」

「うん、これからのこともね」


 俺たちは、ドラゴンが来る方向に向かっていった。


ーーーーー


 城門の前で、鳥がざわついて、暗雲が立ちこみ始める。


 心臓がバクバクとなり、呼吸ができているのか不安になっていく。


 …多分、これ以上に大きい戦いを俺はこれからすることはないだろう。


 もしも戦いっていうのが生きるか死ぬか、本当にギリギリのことをそう言うなら、これが最終決戦だ。


 もう、赤い翼が見え始める。


「…合わせられるな?」

「いくらでもいけるよ」


 木々を押し倒して、巨大な体が地面に着いた。


『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!』


 咆哮が、鳴り響いた。


「いくぞ!」


 俺は、足を切ろうと走り出す。

 

 当然、ドラゴンは阻止しようと右手を振り下ろしてきた。


「黒門!!」


 しかし、その右足は俺を潰すでもなく、自分の頭を殴った。


 …本当に成長したな。


「双刀・回六天雷(かいむてんらい)


 飛びつつ六回転…これが今俺ができる最大威力だ。


 ドラゴンの足を確かに切った感触があるが、あの巨体にはまだ浅い。


 もう一度…


『グオオオオオ!!』


 思ったよりも早く、ドラゴンの足が襲いかかる。


「まずっ…」


 咄嗟にガードするが、衝撃が来ない……


 前を見ると、ゴルギルガルがいた。


「よお!!またとんでもないことになってんなあ!!?」


 ゴルギルガルが、岩の壁を構築していた。


「ゴルギルガル!」

「ゴルでいいって言ったろ!!……にしても、流石に強度が…」


 壁が割れて、今度は、カサインとリーグルが足を無理矢理手で止めていた。


 ゴルが勢いを弱めたとはいえ……どんだけ踏ん張れば…


「セイスケ!帰ったなら早よう言ってくれんとな!」

「それにしても…歓迎会やろうとしてたってのに、タイミングが悪かった…!」

「…ははっ…」


 あんまりにこんな状況でも気楽なことを言うので笑うと、すぐにドラゴンがもう一撃と体勢を崩しているのに気づく。


 俺は、即座に刀を持って、ドラゴンがみんなに攻撃している足に飛びかかり切った。


『ガッ…』


 のけぞったドラゴンは、このままでは負けると思ったのか、セラミスの方に走り出した。


「セラミス!!」


 俺の心配をよそに、すでにセラミスはドラゴンの頭上に移動していた。


シルフルサイクロン(風災)!」


 ドラゴンの胴が少し削れた…!これなら!


「ガアアア!!」


 だが、ドラゴンはすぐに状況を察したのか、上空に飛んだ。


『ゴオオオオオオオ!!』


 あの口の光は…!


 おそらく攻撃のために、エネルギーを溜めている…


「センパイ!多分…あれは防ぎきれない!」

「なっ…」


 どうすれば………


「セラミス!お前だけでも!」

「ゴルさん達もいるのに!無理だよ!」


 そんなの、どうしたら……


 くそ!


 おい!緑色!なんとかできないのか!


 ……いや、あんな正体不明のやつじゃ無理だよな…


 それに聞いてみても、返事は……


『そうだね…これは僕のせいでもあるから、一度だけ力を貸してあげる…』


 …!?マジか!?


『でも、あの塔で君がそうして、眠り落ちたように、負荷がかかる。これから先、君は剣を振れもしない体になるかもしれないよ?』


 刀が…?


「それ、は……」


 それは、先生が教えてくれたことも、これから自分の力で生きることも…

 

 ……いや、違うな。無くならないし、きっと幸せに生きることだってできる。


 その道は、みんなが教えてくれた。


「やってくれ」

『……君がその運命に打ち勝つことを、願っているよ』


 そう頭の中で聞こえた後に、鱗が緑色に光り始めた。


 …運命に抗うなんて、大陸に来た時からずっとやっている。


 俺は、ドラゴンに向かって跳んだ。


 非難され、気持ち悪いと罵倒されるためにあるような、生きる意味すら見つけられない体だった。


 それでも、運命に抗えたのは、出会いがあったからだ。


 先生が教えてくれた剣技も、アルキさんと学んだ言葉も、母さんのくれた優しさも、セラミスといる時のあたたかさも、リーグルの冒険者としての生き方も、ザインの剣も考え方も、ヤナハさんの強さも、ソフィアがくれた生きる意味も…


 全部、俺の中で生きている。


『ガアアアアアアアアアアア!!!!』


 ボウッ!!


 火が俺の体を包むが、俺は燃えず、火が俺の周りで留まり、回転していくと霧散していく。


『グアッ!?』

「決着をつけるぞ」


 そのまま切りかかると、体が軽いことに気づく。ふと後ろを見ると、背中からドラゴンのような翼が生えていた。


 使い勝手も何故かわかる…………こりゃいい。存分に利用してやろう


 ドラゴンは、巨体でありながら動きが速い。当然俺の刀にも合わせてくる。


 俺の太刀筋は、ドラゴンの爪によって止まる。


 …やっぱり簡単には殺せないよな!


 太い腕を、火炎を、尻尾を避け、受け、流す。


 そして隙を見つけて斬る……基礎の基礎を、繰り返すだけだ。


『グアアアアアアア!!!』

「やかましいんだよ赤トカゲがよお!!」


 ドラゴンは一度身を引き、俺に体当たりする。


 流石にその威力は…!


黒喰(アバドン)!」


 いきなり現れた黒球がドラゴンを飲み込むと静止する。


「ゴルさん!」

「分かってる!!」


 ゴルとセラミスは息を合わせ、お互いが邪魔にならないように、何も言わずに魔法を打ち続けていく。


 一瞬いけるかとも思ったが、ドラゴンが黒球を弾き飛ばし、姿を現した。


 ……だが、随分と傷だらけで、回復も間に合ってはいない。


 そして、そのまま俺は翼をたたみ、体を落下させていく。


 …きっと、先生とずっと一緒にいた場合の俺は、ドラゴンを倒せはしなかっただろう。


 ザインは、神は自分自身で、それを超えるのが心だと言った。


「セラミス!」

「うん!」


 体が黒門に入り、ドラゴンの上空に現れる。


 そうだ…自分だけじゃ超えられないことも、みんなのくれた心があるから乗り越えられた。


 神を超えるのは、自分自身だけじゃない。


 その自分自身を……俺を作った、みんなだ。


 俺は落下しながら姿勢を正して…刀を振った。


龍星(龍生)


 ドラゴンの腹が大きく裂かれると、その翼はもう動かない。


 ドラゴンが落下していくのと同じに…


 俺の意識は落ちていった。


ーーーーー


 俺が目を覚ますと、そこは白い空間だった。


 …これで3回目か。


『よく頑張ったね』

「みんながいたからな……なあ、ちょっと話そうぜ」


 俺は、ドラゴンの尻尾に腰をかけた。


『ごめん…僕の兄弟の一人が、君たちを傷つけた………それに、君の父は僕の友じ…』

「どうでもいいっての……俺の父親は、先生だからな」


 血のつながりは大して関係ない。


 母も父でも、そのつながりは作っていくもので、元々どこかにあるわけじゃない…


「お前の話を聞いたときさ……俺、泣いたんだよ」

『そうだね…あの子と一緒にね…』

「俺は、お前が好きになった子が死んだのが悲しいと思ってたけど…違ったんだ」


 きっと、俺が泣いたのは…


「お前と人との繋がりが、消えたからなんだ」


 暴走した後に、緑のドラゴンは、門番に力を与えて、深い眠りについた…


 それでも繋がりが消えたわけじゃなくって、門番達と、生きていく道もあったんだ。


 だが、ドラゴンは眠りにつく道を選んだ…それが、俺は悲しかったんだって、セラミスと別れた後に、やっと気づくことができたんだ。


 俺の気持ちに応えるように…ドラゴンは……緑の光になって、遠くに消えていく。


『…僕は…君が羨ましい……旅の始まりで、君は生きる道を選んだ…僕も、そうできたなら……』


ーーーーー


 目を覚ますと、セラミスやカサイン…みんながいた。


 セラミスが大泣きして、カサインやリーグルに怒られて、笑って……



 なあ、ドラゴン…………俺は、確かに人と繋がってたよ。


 その繋がりが、俺を生かした…


 その繋がりが、俺を強くしたんだ。


 



 

 

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