竜の子
「いや〜、君が傭兵団の一人とはね、予想してたけどさ、若いね〜」
「ああ、はい…」
後日意識を取り戻した俺は、今回はシーヤさんも含めて色々傭兵団側も被害が大きいために、少しこの町に滞在することになった。
ということで、俺の種族も分かったかと来てみたんだが…
やっぱりこの変人と話すのは疲れてしょうがない。
さっさと話して帰りたい。シーヤさんの墓だって考えてやりたいんだしな…
「それにしたってさ、敵の一人を捉えてみたらね、私も目的だったとはさ、思わなかったよね」
色々と資料をまとめつつカルラから世間話のように話を聞いていく。
団長とすり合わせをした分、俺よりよっぽど詳しいんだろう。どんどん話してくる。
「他にもテロだかに使えそうなね、資料漁ろうとしてたみたいだけどさ、スキル目当てってさ、迷惑だよねー」
そうは言うが、実際未来なんて見えるからこそ今回みたいに対策できるんだ。
大方敵側は噂だろう程度に信じていたんだろうが、もしも未来が見えていることを踏まえた作戦になっていたなら、もっと厄介な依頼になっていたはずだし、今回は運が良かった。
「その敵組織についてはさ、よくはね、分かんなかったらしいけどね…まあ、末端の組織ってわけでもなさそうだったしさ、ならまあ小さいさ、組織だったのかな」
…敵…か。
団長が言ってたな…頭領らしいのがヤナハさんと同じ仮面をかぶってたって…また色々ありそうだ。
そして話は、本題に入っていく。
「これ、見てみてよ」
カルラは、湿った紙の入った容器を二つ見せる。
おそらく俺の唾液だろう……
しかし、これがなんの…?
「片方はね、思いっきり振った……もう片方はさ、何にもしてない唾液」
そう言って、カルラは二つの紙を蝋燭に入れた。
すると、振った方は思いっきり、ボワっと燃えたのだ。
えぇ…なんだこれ。
「この反応からね、火を吐く魔物とのハーフなんだろうけどさ…色々いるっちゃいるんだけど、人と交配するね、知性がある奴なんて、溶岩地帯に住むようなさ、マグリザードマンと……」
もう一言は、俺が唾を飲み込んだあと、口にした。
「ドラゴン」
……なんとなく予想はついていたが……いや、待て。
ドラゴンのあの巨体と、母さんが交配できるのか…?死ぬよな…?
となると、マグリザードマンか……だが、合点がいかない。
「あの、マグリザードマンの鱗って…」
「真っ赤」
俺の鱗はだいぶ青緑だし……いや……
御伽話を思い出せ!
あれは、最後に何人かの村の門番だかに、ドラゴンが力を分け与えたって話だったよな……
一応ドラゴンの鱗の色も緑で、少し近い…となると…
「俺は……やっぱりドラゴンと人の…?」
いやいやいや……ドラゴンって言ったら、やっぱりあの赤い奴だろう。
御伽話より、自分で見た方を信じた方が現実味はある。……でも……っ……
「……くそ、結局分からずじまいか…」
「ご、ごめんね」
申し訳なさそうにカルラは頭を下げるが、俺の特殊すぎる生態が問題なだけだ。
俺は、塔を後にした。
ーーーーー
あの後ヤナハさんの下に帰った俺たちは、それぞれ分かれ、俺はシーヤさんの墓を立てることにした。
親はいないらしいし、立てるにしても場所も分からない。
一応は持ち帰りやすいように、魔法使いに頼んで燃やしてもらって、骨壺に入れたが………
……小屋にしまっておこう。
すいません、ガント様…………いつかイェルか平和そうな花畑にでも持っていくので、許してください…!
だが、今日はソフィアもまだ帰っていないので暇だ。
ヤナハさんの体調でも見にいくか…
俺は拠点へと向かい、着いた俺はドアを開けて、奥の部屋のドアノブに手をかける。
すると、団長の声が聞こえた。
「お前!!大丈夫なのか!?!」
…大分切羽詰まった声…!
ヤナハさんが危ない…!?もしかしてあいつらが…!!
俺はすぐに、ドアを開けた。
「ヤナハさん!!」
そこには、仮面を取ったヤナハさんがいた。
右目が無く、その周囲が焼け爛れている…ヤナハさんが。
「セイスケくん…」
ーーーーー
座らされて少し待つと、仮面をかぶったヤナハさんがコーヒーを持ってきた。
いつもなら美味しいのに、なぜか味がしない。
「あの…すいませんでした」
向かいに座ったヤナハさんに謝ると、バレット団長に顔を無理矢理上げさせられる。
「だ、大丈夫だって、昔違法奴隷だった!それで顔を焼かれたけど、逃げてここまで生きてきた!それだけ!」
「俺が焼け爛れてる部分が広がってる気がして、大声で叫んじまったのが悪いんだよ…」
「そうそう!こいつバカだから!」
笑わせようとしてくれてるんだろうが、昔違法奴隷でしたとか言われて笑えるわけがない。
でも……そうなら…
「あの仮面の男達も…?」
そう呟くと、ヤナハさんが俯いて、真相を話し始めた。
「違法奴隷だった僕らは、毎日暗いところで同じような歳の子と戦わせられたり、本当なら自分の親と同じくらいの歳の大人達に純潔を捧げた………闇の世界で通報されることだってない、永遠とも思える苦痛だった…」
ヤナハさんは仮面を外し、その花の模様を自分自身へと向ける。
「最初逃げたときは、あいつらに復讐してやろうって言って、この花……クローバーの花言葉に、あいつと誓ったんだ……成し遂げたあとは、そのまま世界を恨んだあいつは僕と別れて、生きることができるならよかった僕は、ソリアルと一緒に、傭兵団を立ち上げた」
そう…だったのか。
奴隷か…あいつらにも辛い過去があったのかな。
それでも、戦場に立って、自分の目的を果たすために殺し合って、俺たちが生きた…後悔のあったあの日の俺はいない。
今は、そいつらの分も生きることを考えよう。
……そういえば、もう一年経つんだな…
セラミスは、どうしてるんだろうか。




