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断片虚像

 未来が…見える…?


 この女…今そう言ったのか?


「私はね、これを『断片虚像(フォル・シモク)』ってさ、そう呼んでるんだよね」


 この人…セラミスと同じタイプか…?


 スキルって案外そういうアレな人間に目覚めたりするんだろうか…


 いや、しかしそう簡単には信じ難い話だな…


 その俺の考えを見抜いたのか、カルラは俺の手に銅貨を一枚優しく押し込む。


「なにを…」

「私さ、後ろ向いてるから、どっちかの手に隠してね」


 ……いいだろう、付き合ってやろうじゃないか。


ーーーーー


 よし、隠した…


「隠し終わりましたよ…」

「うん、いいね」


 カルラはくるりと俺の方を向き、周囲を見渡して、すぐに俺の銅貨の隠し場所を当てた。


 作業机の2番目の引き出し………


「ね、信じてくれた?」

「まあ…」


 流石にこれは、信じざるを得ないだろう。


 しかし、となると襲撃も本当なわけだが…


「これ、誰かに助けを求めたりは?」

「塔長が『鉄狼』ってとこにね、依頼を出してくれたからさ、大丈夫」


 よかった…一応聞いてはおかないとだったからな。


 ……信頼はできる人…ってことでいいんだよな。


「俺の種族って…唾液より、血液のほうが調べやすいですか?」


 この変人に俺の血を預けることに抵抗がないわけじゃない。それでも、俺は…!


「いや?変わんないけど?」

「ああ…そうすか」


 人の覚悟を踏みにじりやがって…


 というか、なら自分も唾液でよかっただろ…?やっぱり変人だ。


 というわけで、あと一度くらいは顔も合わせるだろうが、俺は仕事もあるし、さっさと帰ることにした。


ーーーーー


「おかえり」

「ただいま帰りました」


 シーヤさんに帰ってきたことを伝えた俺は、早速買ってきた食材で簡単な飯を作ることにした。


 調理台がないので、今回は位置が近い、休日を取っている飯屋を借りる。薪と合わせて料金は銀貨二枚(2,000円)…少しぼったくられた。


 用意するのはマッドボアの肉、香草を三種、ドルベ国産の林檎とトマト、最後に塩などの調味料である。


 まずは切ったマッドボアの肉を切り落とし、香草と塩でよく揉む。


 マッドボアは泥遊びの好きな魔物で、安い分臭みが強く「豚の餌」とも呼ばれる。


 そこで香草は香りの強い物を選び、あとでタレをかけるため、塩は少なめ。


 香草を染み込ませておく間、タレを作る。


 ここで用意するのはドルベ国産の林檎とトマトだ。


 ドルベ国産の果実は酸味が強く、よく煮れば匂いもいい。


 臭み消しには丁度いいタレの原料であり、主婦の味方ってやつだ。


 あとはこのタレを使って肉を焼いたりでなんやかんやありまして…


「出来た!!俺特製マッドボアのドルベ風!」


 テキトーなネーミングだが、セラミスよりマシだと思いたい。


 さて、帰ってシーヤさんに持っていこう。


 肉はタレが付いているので、食材を入れていた紙袋で包んでおく。


 ちなみに料理は先生の道場にいた時から磨いている。なので自分でも上手い部類だとは思うんだが…


 セラミスが作った料理を思い出す…


 なぜかシチューなのにザラザラした食感で………


 うん、食欲がなくなるから思い出さないようにしよう。


ーーーーー


「うお!美味いな…」


 特製のステーキは案外好評で、俺も早速口にするが、何度も作った味なので特に特別感はない。


 強いて言えば、寒い分保存ができているくらいか…?


「それで、次の満月の日が…」

「おう、現地に行く。まああのでかい塔だからそう時間もかかんねえし、集合も当日だな」


 それが終わる頃くらいには俺の種族についての研究も進んでいるんだろうか…


 不安になりながらも、俺は眠った。


ーーーーー


 真っ白い世界が目に映ると、緑の光が奥に見える。


「…?」


 なぜかここに俺がいることに違和感はなく、当然のことのように感じる。


 緑の光を俺は自然と掴むように近づいていくと、声が聞こえた。


「キミ…ハ………ノ…………ウン……ニ……エ……」

「何を…」


 何か、とても大切な気がする。


 だが、光は遠くに消えていく。


「待て!お前は!いった………い………」


ーーーーー


 寝覚めはよく、夢がはっきりしている以外は、いつも通りの気持ちのいい朝が訪れる。


「今のは…?」


 あいつ、なんて言ってたんだろうか…


 それにしたって、殺したやつが俺を殺してきたりするような悪夢は何度も見たが、あんなのは…


「セイスケ?どうした?」


 シーヤさんに呼びかけられて我に帰る。


 いや、夢のことだ。気にたってしょうがねえだろ。


「なんでもないです」


 俺は朝食をとり、今日は本当に暇なため、武器の手入れをすることにした。


 そんなわけで、暇な日々を何度も何度も繰り返して……月は満ちていった。


 今日か明日か…それまた後日なのかは分からないが、きっと俺の正体がわかる日が、近づいているのだろうか。


ーーーーー


 ほんのりと欠けた月を背に、怪しげな仮面を被った男達が、崖から研究塔を見る。


 一人違った、特殊な…花のような仮面をつけた男に、見覚えのある人間が近づく。


「明日でしょ?何を意味深に見てるんすか?」

「雇われの身でよく吠えるな…流石は野良犬か」


 少しイラッとしたのか、野良犬と呼ばれた男は少し黙ったあと、口を開く。


「黒い布なんですから『クロヌノ』でいいですってぇ…そんなあだ名とかぁ、いらないっすわ」

「そうか……」


 花のような仮面は…あの黒い布を被った男は…


 満月の日に、何を目的に、塔を襲うのか…………



 


 


 

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