本音VS本音
「こりゃなんなんだ…?」
「本音大会です!」
今日も気難しい雰囲気のままだったので、蝋燭をいくつか買ってきた私は今夜、本音大会を開催することにした。
センパイが割と分かりやすく隠し事をするから、割と何回かやってて慣れてる…!
「…んで、何やんだ?」
面倒くさいという顔でカラーグさんが聞いてくる。
「えっと、まず蝋燭を付けて、とりあえずの本音を言うの。でもそう言うのは自分も含めてその場しのぎの嘘だから、蝋燭を消して、本音を深く考えて!本当の本音を言います!」
「あ''〜クソ面倒くさそうだな」
「や、る、の!」
無理矢理でも、この気難しい雰囲気は取り去らないと、ダメだしね…!
ーーーーー
なんとかカラーグさんをやる気にさせた私は、早速蝋燭をつけたままカラーグさんの嘘を聞くことにした。
「カラーグさんは、なんでお母さんが魔物になっちゃったこととかを隠してたんですか!」
「…お前そう言うのに首突っ込んでくるから面倒くせえんだよ…!」
うっ、ひどい……
とりあえずの本音であってもまるっきり嘘でもないだろうし、ちょっとは本音だろうなってのが分かってしまう!
まあ、蝋燭を消せば答えも…
「おい」
少し怖い顔をしたカラーグさんが見つめてくる。というか、睨みつけてくる。
「お前のも聞かせてもらうからな…?」
「うえっ?」
わ、私は特に隠し事とか……いや!お父さんとかのことはカラーグさんには話してはないけど、まあ別に話しても…
「本当にお前は強くなりたいのか?」
「え?そりゃ、ここにきた目的だし、もちろんそうだよ?」
「……そうかよ」
カラーグさんは、蝋燭を消して、私も同様に蝋燭を消した。
ーーーーー
何も見えない暗がりで、少しの静寂の後、カラーグさんがまず小さく呟いた。
「…これで本音を喋るんだよな?」
「うん」
「………………」
また、しばらくの沈黙が流れる。
何分か経つと、カラーグさんが、また口を開いた。
「正直、お袋をなんとしてでも殺したい…優秀なお前を使ってでもな………」
「優秀?」
毎日のようにガキポンとかクソガキとか言ってるのに…
実際、言われても仕方ないくらいにはヘマもしてると思うけど…
「スキルの性能とそれを使いこなす応用力…魔力の多さと、色んな魔法をすぐに吸収する多彩性…戦闘面じゃ金等級と引けを取らないくらいにゃ優秀だ……でも、それでお前が死んだら、トカゲ坊主にも、イェルのやつらにも顔向けができねえし、きっとお袋もそんなんは望んじゃいねえから迷ってんだよ」
「そっか…」
色々と本音が聞けて、スッキリした感じはある。
でも、まだ胸にしこりが残ってる感じがするのは…
「お前の番だぞ」
カラーグさん言われると、胸の動悸が増す。
私は…確かに強くなりたいはず。
センパイの隣を歩くために、また暴走したって、止められるように…
それが不安なのは…
「私は…センパイのために強くなりたい……それは変わらないけど、強くなるたびにセンパイに頼られてたのは嬉しかったけど…その度に、センパイが離れてく感じがして……センパイが、私の元から離れないなら、弱いままなら、きっとセンパイは…」
センパイが離れてから、何も考えず強くなろうとここまできたわけじゃない。
私のことを心配してくれるセンパイは、ずっとそばにいてくれるかもしれない…
それは、とっても嬉しいし、いつかはセンパイとも仲間以上の関係になれるかもしれない。
センパイは、私のことをすごい人だと思ってる部分があって、だから一人でも生きていけるだろうってあんな手紙を残したんだよね…
でも…私はずっと、死ぬまでセンパイの側にいたいし、離れるたびに心が辛くなる。弱い人間…
「弱いままなら、あの人は側にいてくれるだろうし、守ってくれる…でも、そのままで平気でいられるほどにも強い心なんてないし…また離れるのも怖い……だから、本当は、迷ってる…」
実際に本音をこうやって言ってみると、まあまあの効果はある。
それっていうのは、暗闇っていうのは、人の深層心理を写す鏡だからなんだと思う。
明るくなんてない、人の暗い部分を、暗い夜が浮き彫りにする。
「お前は、結局どうしたいんだよ」
暗闇の向こうからカラーグさんの声が聞こえる。
…私たちは夜を、暗闇を隠すように、さっさと寝てしまう。
私も、この本音から逃げてきて、センパイに頼りっきりで…
それで、きっと幸せにはなれるのかもしれない……
でも、弱い私から、逃げてばかりじゃいられない。
「センパイの隣にずっといられて…守れるような、素敵で強い私になりたい」
「ククッ……欲張りだな」
「うん!もっと欲張る!」
でも、それはもう一人もだよね!
「ゴルさんも!ホントはどうしたいの!?
もう本音は語り合える。
今までは二人に何か壁があったから、私は名前で呼ぶのに違和感もあったけど…
今は、この人が私と近い境遇で、優しい人ってことも分かってるんだ。もうそれを隠すための明るさも暗さも必要ない。
私は、蝋燭に火をつけた。
「……本気で言ってんだよな?」
「その方が強くて素敵だからね!」
もう、暗闇はない。
「…お袋を、俺と一緒に殺してくれ、セラミス」
「分かった!ゴルさん!」
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少女と青年が対峙するのは、ドラゴンと同等級とされる『骸の魔術師』
トカゲの少年の預かり知らぬ場所で二人は、その災害を殺しに出る。
勝率は1割にさえ満たない。極めて理不尽なゲームと言える。
それでも彼らの瞳には、もはや暗闇も、歪んだ光も、映り込んではいなかった。




