とある少女の英雄譚
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センパイと別れて一ヶ月…私は、今日も強くなるためにレッドベアを倒していた。
レッドベアの一体が私に吠える。
「グオオオオオ!!」
「黒門!」
…このスキルが使えるようになって試したところ、色々と分かったことがある。
まずゲートは黒い粒子を集めて作るもので、この粒子の大きさはその日の調子によって変わる。
そして制約……ゲートは二つ以上作ること、入れるものより大きいゲートを作ること、作る位置は私の視界内にあること……分かってるところでこの三つ。
それでも応用は効きやすい。
例えば…
「グオッ!?」
レッドベアの目の前に一つ、空中に一つゲートを作る。
当然突進してきたレッドベアはそのままゲートに入って、空中のゲートから落下する……でも。
ゲートを、レッドベアの落下方向にもう一つ作る。
下のゲートに入れば上に、そしてまた下に入って上に…
繰り返すたびに、その落下速度は増していく。
「それで、適当なところで解除すれば…」
ドオオオオンッッッ!!!
すごい音が鳴り響いて、レッドベアの血が少し服についちゃった…
うう…
「でも岩とかでおんなじことができたら、魔力をあんまり使わないでもすごい威力が出そうかな…」
今までは先輩に頼りっきりで、こうやって修行をするなんてしてこなかった。
まだまだ要検証だけど、それはもっと強くなれるってことだし、少し嬉しい。
「セラミスちゃん……どうなっとるねん、ホンマに…」
呆れた声が後ろからして振り返ると、カサインさんがいた。
私が気づくと、近づきながらなんとも説明口調でカサインさんは話し続ける。
「ワイバーンやらドラゴンやらの混乱で迷い込んできたレッドベアの掃討……なんやけど、流石に絶滅してまうで?何匹倒しとるんや?」
うーんと…確かサーリアさんから依頼を受けて、1日5体は倒してるから……
「100体くらい?」
「……レッドベアも逃げるんやないの?そのうち……」
えー、それは困るなぁ…
修行相手がいなくなったら、これ以上強くなれなくなっちゃうかもしれない。
でも、このまま倒し続けたらこの森の捕食者がいなくなって森は混乱するもんね…
「よし!」
「?…なんや?」
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協会の2階、サーリアさんが仕事をしている中で、部屋に入った私は、サーリアさんにここまでの経緯を説明した。
「と、いうことで…もっと強い魔物と戦いたいんです!」
「レッドベアより強い魔物…かい?」
勢いで机に身を乗り出して提案したから、そのうち手がプルプルしてきた。
それを見越してくれたのか、苦笑いをした。
「ひとまずは椅子に座ろうね、サーリアちゃん」
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提案されたので、少し大きなソファに向かい合って座る。
少し待つと、サーリアさんがほんのりと甘い香りのするお茶を持ってきた。
そうしてお茶を机に置いて座ると、話しが始まった。
「少し遠くなるけど……テルンドアという国がある。私は以前はそこの冒険者協会の受付だった」
テルンドア…
ゴルギルガルさんから一度聞いたことがある。
確か…
「イェル国と位置が近いし、金が足りないなら出稼ぎするのには丁度いい国、でしたよね?」
「うん、だいたい合ってるよ」
うーん、出稼ぎか……
目的が違うし、お金は足りてるし…魅力はそこまで…
「テルンドアはね、付近の強力な魔物が他国からの防衛線であり、冒険者の往来も多いのが特徴の国でね……行ってみるといいよ」
サーリアさんに言われて、ゴルギルガルさんの言っていた言葉の本当の意味に気づく。
強力な魔物が多い分、命を失う確率だって格段に上がる。
でも、当然危険な魔物なら希少価値があるからこそ、短い期間での出稼ぎに丁度いいって言ったんだ…
でも、それなら私にぴったりだ…!
「行かせてください!……戻ってくる時にはきっと、金等級になって帰ってきます!」
危険なんて最初から百も承知…!でないと、強くなんて慣れっこないもん…!
それぐらいの気持ちじゃないと、きっとセンパイの隣にまた立つなんて言えないもんね!
でも、サーリアさんはなんだか言いにくいなと言いたそうな表情をして私を止める。
「イェルからテルンドアには行けるには行けるんだけど……セラミスちゃんだけとなると、難しいんだよね…」
「ええ!?な、なんで…」
サーリアさんは頬をぽりぽりとかきながら、目を棒にしながら答える。
「国土が狭くてね…住む場所がね、無いんだよ。宿も高いから、長期間滞在ってなると難しいの」
長期間は無理で、危険もあるけどお金はたくさんある……
ほ、本当に出稼ぎに丁度いい…いや、もう出稼ぎのためだけに用意されたみたいな国…
ど、どうしよう…
悩んでいると、サーリアさんが懐から古びた本を取り出した。
「一応、この魔導書を代わりにして、テルンドアの実家に滞在を許してくれるって人はいるんだけど…」
サーリアさんは可愛い仕草で本を持ち上げるが、顔はなんとも困っていそうな感じだ。
た、滞在を許してくれる人……?
……………まさか。
いや、いやいや……前にテルンドアの話をしたからって、そんな…
「……入って」
ドアが開くと、そこには……
ゴルギルガルさんがいた。
「いっ………いや、私この人はちょっと」
「俺の方が100倍は無理だな…」
テンションとしてはアタリの日らしく、暗くもあるけど、暑すぎるわけでは無い……
かと言って、この人の実家…
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例えば、ゴルギルガルさんのお父さんがいたとして…
「早く飯を食え!!遅いぞ!!…………………ごちそうさま……」
お母さんなら…
「今日はハンバーグにします…………洗濯物畳め!」
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…いや、絶対に無理!
強くなる前に、私の脳がゴルギルガルさんみたいになる!
センパイと再開した時、そんなふうになってたら絶対嫌われる!
「ほ、他に実家がテルンドアの人いないんですか!?」
サーリアさんに押しかけるように質問してみるが、表情からそれ以外無いってのは分かる。
そ、そんな…
「行きたくねえってんなら魔導書だけもらって帰っていいか?」
「ダメに決まってるだろう…ゴルくん」
ゴルギルガルさんは分かりやすくチッという舌打ちを私の隣でする。
なんなのこれ……!助けて!センパイ!
私はその不条理の中、涙で頬を濡らした。




