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残されたもの

 名前も知らない戦士が倒れた後、俺は眠っている少女を抱き上げた。


 あいつの鎧に傷がなかったのは、きっと実力もあるんだろうが、少女による面も大きかったのかもな。


 とりあえず、一度洞窟の中を見るがもう戦いは終わっていて、いくつかの傭兵の死体と、信者やその味方の戦士達の死体が雑多に並べられている。


 丁度終わったので帰ろうとしていたのか、バレット団長が血に濡れた袋を持って近づいてくる。


「セイスケ、お疲れさん!疲れたか?」

「まあそれなりには……その袋って?」


 バレット団長が袋の中身を俺に向けて開けると、おそらくは教祖のものであろう生首が入っていた。


「あとは依頼の見届け人にこの景色とこいつを見せりゃ終わりだ!今日は酒だな」


 依頼をすっぽかしたりしないように少し大きい依頼にはその達成を見届ける人間が付くのも珍しくはないのは冒険者も傭兵も変わらないんだな。


 …そうだな……冒険者と傭兵、その違いを挙げるとすれば、人を殺すか、化け物を殺すか…これくらいの差だろう。


 ゴブリンだって人間みたいな社会を構築していた。


 俺は、無罪とも言える人間を殺すかどうかで悩む前に、そもそもの命と向き合わなきゃいけないんだ。


 なんで俺は殺すのか、なんでそいつは殺されるのか……


 俺は快楽殺人鬼ってわけじゃないし、ほとんど金のために見張りやあの戦士を殺した。


 でも目的が金なら、それはなんのためだ?女遊びしたいわけでもない。


 今までの冒険者時代での金だってほとんど宿に置いてきたが、ずっと貯金してきたくらいだ。


 生きるために金を得ているなら……なんで、金谷を殺したあの日から、俺は生きている?


 あと一歩で分かりそうなのに分からない…首筋に爪を立てられているような……


 そんなモヤモヤとした気分を抱えつつも、殲滅作戦は終わった。


ーーーーー


 そうして、一度他と一緒に拠点に戻ったんだが、あることを忘れていた。


 あの戦士から受け取った少女をどうするかだ。


 もうとっくに少女の目は覚めていて、傭兵達に怯えて部屋の隅でカタカタと震えている。


「どうする?」

「分かんねえって……俺包囲役だったし……」

「そんなん殲滅役は1番怖がられてんだろ?無理だって」

「いや、そもそも子持ちがいねえんだからよ…」


 少し大きい程度の部屋に十何人もの男がいるため、圧迫感がすごい。


 少なくとも書室に置いておいた方がいいんじゃ…?


「あの、まずここ狭いですし、書室に置いておいた方が…」


 一斉に傭兵達がこっちを見てきた。


 強面も多いからかなり怖い。少女に対してもこれなのでそれは震えるわな…


 その強面達は一斉に荷物を背負って、俺の肩を叩いたりしてから部屋を出て行き始めた。


「よし!よろしくな!」

「セイスケだったか?頼んだぞ!」

「今回はよくやったな!これからもがんばれよ!」


 そうして、部屋には俺とあの眼帯の人しかいなくなっていた。


 そして部屋の隅に怯える少女……どうなってんだ。


「大変だな……お前も」


 俺のことを想ってくれたのか、眼帯の人は慈愛の目で見てくる。


 ああ、やっぱりいい人なんだな…


「いえ………そういえば、お名前ってなんですか?」


 この流れで少女の名前も聞けるかな…


 そう想って眼帯の人の名前を聞いてみる。


「俺はシーヤ・ヴォッグス。下の名前は言いにくいからシーヤでいい」

「よろしくお願いします。シーヤさん」


 一応手や尻尾を隠して、少女の方にしゃがんでそっちも聞いてみる。


「俺は生助」

「…セイスケおにいちゃん?」


 おにっ…犯罪の匂いがする言い方だな…


 見た目自体が白髪碧眼とそっち系のやつは好きそうな見た目なので、犯罪者臭が加速しそうな感覚はある。


 だが、今はそんなことはどうでもいい。


「うん、君の名前は?」

「…ソフィア・ビオ」

「年は言えるか?」


 見たところ8〜9歳ってとこだろうが…


「…7歳」

「偉いな、よく言えた」


 思ってたよりかは若いが、だがまあ誤差か。


 とりあえずは偉いと思って頭を撫でようとしたが……この手出し怖がられるな…


 しかし、7歳以下なら規定内だから嬉しい点だな…


 まあ、そういう子どもがいた時の処理については俺は知らないし、ヤナハさんに聞かないとだが。


「シーヤさん、ヤナハさんって今書室にいますよね?」


 俺が聞くと、シーヤさんは乾いた目をした。


 なぜそんな死んだ魚のような目に…?


「ああ、『鉄狼』の事務処理も依頼主への報告なんかも全部あの人がやってるからな…もうあの部屋が家になってる」

「なぜそんなことに……」


 シーヤさんは今度は遠い場所を見るような目をしながら腕を組む。


「アレが団長だからなぁ…」

「あー…」


 俺も即座に、バレット団長の言動を思い出して納得する。


 粗暴や粗雑をそのまま人の形にしたような性格をしているからな…


 ヤナハさんは色々器用そうだし、必然とそうなってくるんだろう。中間管理職というのは大変だな。


 とはいえ、この子を放っておくわけにもいかないしな。かわいそうだとは思うがヤナハさんに頼るしかない。


「悪いんだけど、ちょっとついてきてもらっていいか?」


 精一杯の愛想笑いはなんとか成功したのか、ソフィアは震えを止めてこくりと頷いた。


 …優しい子だ。


 あの戦士を俺が殺したと伝えてしまえば、どれほど怖がられるだろう。


「でもそれは当分は先にした方がいいな…」

「?」

「いや、なんでもない…行こう」


 小さく独り言を呟いたあと、俺はソフィアを連れて書室のドアをノックして、入室した。


 中で紙が散乱している。山のようだった前よりかは少なくなったが、それでも丘と言えるくらいには積んである。


「この子…前に言った10歳以下の生き残りです」

「ああ、ソリアルから聞いてたよ。メイドとしてニーノア西領の領主様の屋敷に行ってもらう予定だよ?」


 メイド…?この子、7歳だし、そこらへんの所作だったりも知らないと思うが…


「こんな小さい子なのに、いいんですか?」

「教育はするって。領主様の子どもが最近5歳になったから、丁度年齢が近い子ならってことで専用メイドとして採用するらしい」


 なるほど…10歳以下ってのはそこらへんの理由もあったわけだな。


 ただのお人好しで助けようってことでもかったってことか…


「ああ、そう言えばセイスケ君は宿暮らしだったよね?」

「?はい」


 まあ、傭兵稼業を続ければ足り…


「領主様の家……じゃなくって、物置き小屋だけど、暮らせるように取り計らっといたからね」

「ありがとうございます…」


 ……え?








 

 


 




 


 


 



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