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つまらない旅

 馬車に揺られる中、俺は、ここに来るまでに協会長に聞いた行き先について思い出す。


ーーーーー


「行き先についてだがね、私の知り合いに傭兵団の副団長がいるんだよ。銀等級の強さとなれば、曰く付きでも欲しがるやつ」


 傭兵か……国の代わりに戦争やったり、危ない橋を代わりに渡ったり……


 金のあるやつの危ない橋を代わりに渡る人間って感じはあるし、以前ゴルからもそこは教えてもらった。


 しかしまあ、危険度が少し上がるというだけで、冒険者も危ないんだがな…


「傭兵団の名前は『鉄狼(バレットウルフ)』拠点のある街の名前はニーノア国西領地…迷わないようにね」


ーーーーー


 ニーノアはイェルの隣のそのまた隣の国だったか……となると2週間は覚悟したほうがいいな。


 …そういえば、馬車の運転手についてよく知らないな。


「あなたは、なにをしにニーノアに………」


 馬車の運転手に話しかけてみたが答えはない。


 ……無視ですか。


 あー、じゃあいいよ、セラミスと話し、て………


 ……そうだよ、俺が置いてきたんじゃねーかよ…


 バカが。


 あまりに呆れてしまって、しばらくは自分で自分を罵倒していた。


ーーーーー

 

 旅は、本当につまらなかった。


 あの旅がとても貴重に思えたのは、アルキさんとセラミスがいたからこそなんだろう。


 そもそも俺みたいのを毛嫌いしている人に何度話しかけようと無理な話で、結局一度もまともな会話はしなかった。


 唯一返ってきたのも、舌打ちくらいだった。


 …どうなってんだ……


ーーーーー


 そうしてつまらない2週間を終えて、やっとのことでニーノア西領の城門前にたどり着いた。


 時間としては昼を少し終えたくらい……訪問して宿に行っても間に合いはするな…


 ああ、あと一応はお礼…


「えっと……馬車に乗せていただいて、本当にありがとうございました」

「二度と面見せんな」


 そう言って、運転手は俺を馬車から追い出して、城壁とは反対方向に進んでいった。


 寄っていくだけだったのか……それすら俺は知らなかった。


 …でもまあ、切り替えてさっさと入国審査しないとな。


 早速入国審査の列に並ぶと、露骨に嫌そうな雰囲気を周りが匂わせる。


 一応でかいリュックと革手袋はしてはあるが、降りる時にバレたやつにはどうしようもないな…


 しばらく進むと、早速門番が俺にリュックの中身を見せるよう催促してくる。


「どうぞ…」


 仮面をされていても分かる。君悪がられていると。


 気味が悪いものはあまりみたくないからだろうか、あまり会話もせずに俺は入国できた。

 

 街に入ると、汚れの少ないレンガ造りの建物が多いのが目立つ。


 随分と金がありそうな領地だな……活気から見ても、雇用にも困りはしなそうだ。


「えっと……副団長ってのがいるのは……」


 貰った街の地図を見ると、建物の密集した場所にバツマークがついている。


 だいぶ入り組んだ場所にあるんだな……人に聞かなきゃ分かりにくそうだ。


 丁度昼も食べていないし、買うついでに、屋台の店主にでも聞くか…


 そう思いついてすぐに、俺は街の中心の方に向かう。


 傭兵になるとすれば移動も多いだろうが、この街の道についてはよく覚えないとだな。


 周囲の目印になりそうなものを探しながら、俺は屋台に向かった。


ーーーーー


 何分歩いていくと、丁度腹が空くくらいのいい匂いが鼻を通る。


 ここら辺は何が上手いのかもよく知らないが、とりあえず設備が少し古くさいところに行くかな…


 のれんが汚ければそこは人気とは言うが、なんて言うんだったか……「のれんに肩押し」……なんか違う。


「にいちゃん!食ってきなよ!」


 呼びかけられた方を見ると、中年かそこらの男が薄い皮に肉や野菜を巻いたものを作っていた。


 設備もまあまあ古めだし、すごくハズレということもないだろうが……


「それ、なんていう食べ物なんですか?」

「ん?トルティーヤ」


 トルティーヤか……いざ口にしようとすると噛みそうな名前してんな。


 でもまあ、腹も減ってきたし、それでいいか。


「それ、一つお願いします」

「ほい、銅貨四枚(四百円)ね」


 金を渡してトルティーヤを受け取る。


 冷める前にさっさと傭兵団の拠点の場所聞くか……


「すいません、『鉄狼』って傭兵団の拠点って知ってます?」


 知ってれば食いながらでも向かえるが…


「ああ!それなら知ってるぞ!」


 随分と嬉しそうに答えるな……


 傭兵団なんて冒険者とそう変わらないと思ってはいたが、案外街の英雄だったりするのか。


 店主は、比較的分かりやすく俺に道筋を教えてくれた。


ーーーーー


 トルティーア……いや、トルティーヤを食い終わる頃に、俺は狼の描かれた看板の前に立っていた。


 多分ここかな…ノックしたら怒鳴られたりしないだろうか…


 コンコン


「すいません、失礼します…」


 ドアを開いて中に入ると、随分と陰気な空気が俺を包む。


 …来るところ間違えたか……?


 とりあえず近くにいた片目を眼帯で覆った男にここが拠点か聞いてみる。


「あの、ここって『銀狼』の拠点ですか…?副団長に会いたくて…」

「そうだよ、奥の部屋が客室兼書室で、今ちょうど副団長いるから」


 聞いてみると、案外優しく答えてくれた。


 見た目は怖いけど優しいやつが多いってことか……?その対比で人気的な…?


「ありがとうございます」


 お礼を言って、奥の部屋のドアを開ける。


 中をみると、ぶつぶつ言いながら必死に紙の束にペンを走らせる仮面を被った男?がいた。


 青い髪を後ろで束ねた長髪で、仮面は独特な、森みたいな紋様が描かれている。


「これはどうでもいいかな…とりあえず明日処理するとしてこれで……ああ、丁度今カルトクが休んでたか……明後日休み明けで戻ってくるから……」


 ……話しかけにくいな……


「あの……」


 恐る恐る話しかけると、すぐに俺の方を向いた仮面の男が椅子から立ち上がる。


「やあ、依頼かい?とりあえず椅子に座って………」


 ここで仮面……いや、おそらくは副団長が黙った。まあそれはそうだろう。


 どの椅子も、紙の束が乗っかっているし。


「…ほんとごめんね……すぐ片付けるから…」


 俺に話しかける声はさっきの人と同様に優しめで、正体を明かした時が怖くなってくるな


 こんなことなら最初からリュックは外しておけばよかったかな…


 とりあえず、片付けられた椅子に座った俺は、協会長から貰った推薦状を渡す。


「これを、お願いします」


 受け取った推薦状の封を開けて少し見た後、柔らかい声で笑って?くれた。


 仮面をしているから表情が分かりにくい。


「うん、問題ないよ、サーリア協会長の推薦ってことなら、試験も必要なさそうだね」

「…ありがとうございます」


 ……これも、言っておかないとな。


「俺、半分人間じゃ…」

「うん、この紙に書いてあったよ?」


 嘘だろ、問題ないのか?


 リュックから尻尾を出してフリフリと振ってみる。


「これですよ?」

「強そうでいいね!」


 ……どうなってんだ。


 

 


 


 

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