平穏
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俺が目覚めて、あれから何日か後、俺とセラミスは街に繰り出していた。
一応背中にクソでかいリュックも背負ってあるので、半亜人とはバレないだろう。
そして、俺たちは待ち合わせ場所に着き、しばらくは待つと、アルキさんが歩いてきた。
「やあ二人とも!久しぶり!」
「どうもです」
俺たちは、アルキさんの商館に招待されたのだ。
久しく俺も敬語を使う…ちなみにセラミスはカサインやリーグルにも敬語を使うが、カサインがいうには『可愛いしええんちゃう?』らしい。適当すぎてムカつく。
だが、今日はそういうことも忘れておこう。
「どうだい?二人とも街の生活には慣れた?」
「はい、おかげさまで…アルキさんはどうです?」
俺たちは、アルキさんの商館に向かいながら話を進めていく。
「なかなか順調だよ?港町にいたからね…荒波には耐え慣れてるのさ」
「でもアルキさん、その荒波に追われてここまで逃げてきたんでしょ?」
「…セラミス…君なかなか酷いこと言うね」
いや、まあ事実だし、という言葉を俺は飲み込む。そこまで言うとさすがにアルキさんが可哀想だろう。
そうやって無駄話をしていると、そのうち北に行くに連れて、紙芝居をやっているのにセラミスが気がつく。
「センパイ!」
「ああ、いいぞ」
なんて保護者ぶりつつも、実は俺も少しこの大陸の話には興味があったので早速紙芝居を遠目で見聞きする。
『昔々………
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昔々、ここよりずっとずっと北の森に、1匹の緑色のドラゴンが住んでいました。
ドラゴンは心優しく、いつも森の小鳥や花と戯れていました。
ある日、ドラゴンは人の住む国を見つけました。ですが、小鳥たちとは違い、誰もドラゴンに触れようとすらせず逃げていきます。
その中で、手を繋いで逃げる人間がいました。
それをみたドラゴンは、深い繋がりを持つことのできる人間が羨ましくなりました。
ですが、ドラゴンを誰も受け入れてはくれず、森の深くで、ドラゴンは深い眠りにつき、苔が生えむしったそれを、皆岩と思うようになるまで時間はかかりませんでした。
ある日ドラゴンが起きると、自分の周りが大きな村になっていることに気づきます。
村の人々は怖がりましたが、村の門番6人と、村の娘一人だけは、彼を怖がりませんでした。
門番や娘と毎日を楽しく過ごす内に、ドラゴンは、村の娘に恋に落ちました。
そして、村の娘もドラゴンの優しさに惹かれていった頃、ある噂が流れます。
「あの娘と門番も化け物ではないのか」
噂はたちまち広がり、ドラゴンが森で木の実を取っている時に、村の近くの国から兵隊が押し寄せました。
門番はすぐに縛られ、娘の首は晒されました。
ドラゴンは戻って来て、深い絶望に襲われました。
ドラゴンの鱗は黒く染まり、村も国も、全て滅ぼしてしまいました。
そのあとに、人を殺してしまったことに気づいて深く後悔したドラゴンは、門番6人に、自分の血を、自らも滅ぶまで分け与えました。
するとどうでしょう、門番たちにどんどんと力が湧き、大岩を軽々と持ち上げたではありませんか。
最後に、ドラゴンは言い残しました。
「私の生まれた場所に、私と娘の亡骸を埋めてくれ。そしてその力で、私の凶暴な兄弟たちから人を守ってくれ」
門番たちは、1匹と一人を持って、北の奥深くに、消えていきました。
そうして今も北の森で、ドラゴンと娘は深い夢を見ているのです。
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…救いがない…!
すぐにアルキさんの方を向いて聞いてみる。
「救いはどこにあるんですかっ…!これ…!」
「いや…亡骸埋めたら復活しましたってオチもあるみたいだけど…御伽話なんてそんなものだよ?」
「だからって……ドラゴンってやつが可哀想ですよ…ッ!」
それにしたってもっとこう……みんなめでたしめでたしにはならないのか!?
俺が怒りに震えていると、セラミスが戻って来………いや、目の奥に光が宿っていない…!
「センパイ…」
「………!………ああ、分かってる…」
刀を抜きながら、芝居人に二人で近づいていく。
「待って待って待って待って!!!」
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「いや、もう本当に勘弁してよ…」
あのあとアルキさんに無理矢理止められた俺たちは、アルキさんの商館に到着した。
「いやね?セラミスはまだ分かるんだよ…情に深いって言うか、涙脆いっていうか…」
アルキさんは眉間に皺を寄せながら本当に呆れたという感じで身振り手振りする。
次に指を指されるのはもちろん…
「問題はセイスケだよ!君そんな性格だった!?少なくとも君も止める側だったよね!?」
「いや、本当申し訳なく…」
実際、自分でも疑問に思っている。
俺はそんな性格じゃなかったはずだ。なのになんでこうも……
「いや、まあいいよ…とりあえず、粗茶だけど」
そう言って、アルキさんは自分で淹れてくれたお茶を勧める。
茶を飲みながら、ふと辺りを見回してみる。
商館、というには少し古い雰囲気ではあるが、一応の形は成しているという感じだ。
「…ボロいでしょ?借金してもこれだよ…本当今までの商売はなんだったのかって感じ…」
アルキさんはそう謙遜はするが、商館への人の出入りは案外多かった。
受付だったり、商品のサンプルであったり、本当に形自体は成している。すごいことだって、素直に尊敬する。
そこから、色々と商品だったり近況だったりの話をした。
「売ってるのって、主に薬草から作る回復薬でしたよね?」
「回復薬って…冒険者協会の隣で売ってるやつ?」
「ああ、そうだね、主な回復薬は即効性を売りにするけど、ウチのは……
しばらくの時間を、セラミスとアルキさんと、話しながら楽しく過ごした。




