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メンヘラオジサン、戦国で飯屋を始める ~戦えない俺は食と金で成り上がる~★299.1万PV突破★  作者: メンヘラオジサン【監視アカウント】


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博之45歳2月4週目。伊勢神宮参りで子供たちが盛り上がる。お土産買いすぎたwww疲れているので松坂の九鬼水軍拠点で1泊させる

海鮮焼きとお好み焼きの実演を見たあたりから、四十人の子供たちは完全に浮かれていた。

「旦那、あれ欲しい!」

「こっちも可愛い!」

「さっき似たようなん買ったやろ」

「違うもん!」

「そんな変わらへんって」

 博之はそう言いながらも、結局甘かった。

「……一個だけやぞ」

「やった!」

「内緒やぞ」

 小さな鈴。

 布袋。

 櫛。

 飴。

 ちょっとした木細工。

 一軒寄るたび、

「これ欲しい」

 と言われ、

「一個だけな」

 と買ってやる。

 それを繰り返しているうちに、和尚が博之の持っている包みを見た。

「旦那さん」

「何?」

「めちゃくちゃ買ってません?」

「……あれ?」

 子供たちを見る。

 一人が両手に三つも四つも包みを持っていた。

「お前、そんな持ってた?」

「旦那が買ってくれた!」

「全部言うな!」

 さらに別の組と合流すると、明らかに差があった。

「そっち、そんな買ってもろたん?」

「ええやろ!」

「旦那、俺らも!」

「待て待て待て」

 博之が両手を上げた。

「これはあかん」

「えー!」

「全部返してこいとは言わん。もう買ったやつはええ」

 しかし、これ以上は終わり。

「今日はここまで」

「えー!」

「お前ら、どんだけ買ってもろたと思ってんねん!」

 和尚も頷いた。

「さすがにこれ以上は、ご褒美が過ぎますな」

「そうやろ?」

「大旦那が気づくの遅かったですけど」

「そこは言わんといて」

 子供たちはまだ不満そうだった。

 博之はしゃがんで言う。

「また一年頑張れ」

「来年も来れる?」

「それは分からん」

「なんで!」

「毎年同じ子ばっかり選んだら、下の子らが行けへんやろ」

 掃除を頑張った。

 薪を運んだ。

 寺や神社の手伝いをした。

 それでも、毎年十人しか選べない。

「来年もお前が選ばれるとは限らん」

「えー……」

「せやけど頑張る理由にはなるやろ」

 和尚が笑った。

「それに、もう十分ですよ」

 子供たちが手にしている土産を見る。

「親御さんからしたら、とんでもない量です」

「確かにな」

 他の組も確認すると、程度の差はあれ、それぞれ何かしら買ってもらっていた。

「ほな、まあええか」

「旦那が一番買ってますけどね」

「忘れよ」

 最後に博之は手を叩いた。

「ほな帰る前に、天ぷら食うか」

「食う!」

「そこは元気やな」

 伊勢松坂屋の天ぷらを少しずつ紙に包んでもらう。

 子供たちは熱い熱いと言いながら頬張った。

「ほんまは海鮮焼きも焼かせてやったら面白かったんやけどな」

「今、店いっぱいですよ」

「そうなんよな」

 海鮮焼きの店にはまだ長い列ができている。

「四十人でくるくる返す練習とかしたら、絶対おもろかったのにな」

「旦那様、また次の企画考えてます?」

「いやいや、次回の課題」

「次回ある前提なんですね」

「……まあ、うまくいったからな」

 そんなことをぶつぶつ言いながら、夕方には船へ戻った。

 さすがに子供たちも疲れていた。

 船に乗った時ほどの歓声もない。

 土産の包みを抱えたまま、座り込む子。

 船べりにもたれて眠そうにしている子。

「これ、松阪まで一気に戻すんちょっとかわいそうやな」

 博之は九鬼水軍の者へ声をかけた。

「すいません。途中で一泊できません?」

「子供ら、もう限界か」

「たぶん」

「ええぞ。港で休ませよ」

 松阪側の港へ戻るころには、半分近くが眠そうな顔だった。

 九鬼の若い衆も荷物を持ってやりながら笑う。

「ええ思い出になったな」

「なったと思います」

 すると一人の水軍衆が、わざと大きな声で言った。

「しかし旦那」

「何です?」

「わしら、今日ずっと見てしもうたからなあ」

「何を?」

「子供らが伊勢行って、あれ買ってもらった、これ食べた、ってやってるとこ」

「ああ」

「うちの子らが聞いたら、絶対言うぞ」

「何を?」

「『なんでわしらは行かれへんの』って」

 博之が固まる。

「……それはずるいわ」

「何がずるいんじゃ」

「今その話出します?」

「出すやろ」

 九鬼水軍にも港町の子供は大勢いる。

 しかも伊勢に住んでいるからといって、皆が好きに伊勢神宮の門前で買い食いできるわけではない。

「伊勢におるから伊勢参りできる、いう話でもないからな」

「確かに」

「親が船乗りや漁師やったら、銭も時間も簡単には出せん」

 博之は頭を掻いた。

「……また考えますわ」

「出た」

「何が?」

「旦那の『また考えます』」

「今日はもう考えへん!」

 周囲が笑った。

「でもまあ、宿泊代代わりいうわけちゃいますけど」

 博之も苦笑する。

「今度、九鬼水軍の子ら向けにも何かやりましょうか」

「ほんまか?」

「まだ決めてへん!」

「今言うたやないか」

「企画を考える言うただけ!」

 子供たちの笑い声まで混じった。

 四十人の伊勢参りは、まだ松阪へ帰り着いてすらいない。

 それなのに博之の前には、もう次の子供たちの顔が並び始めていた。

「……ほんま、施しって広げ始めると終わらんな」

「旦那が広げてるんや」

「それ言わんといてください」

 そう言いながら博之自身、少し楽しそうに笑っていた。

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