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メンヘラオジサン、戦国で飯屋を始める ~戦えない俺は食と金で成り上がる~★299.1万PV突破★  作者: メンヘラオジサン【監視アカウント】


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博之45歳。2月4週目。子供たちを連れて行く算段ができた。1週間手伝いさせてお駄賃持たせて伊勢神宮参り

二月四週目。

「もう決めたんやったら、全部早うやろ」

 博之はそう言って、寺や神社へ一斉に文を飛ばした。

 今回が初めて。

 毎年やるかどうかは分からない。

「まあ、うまくいったら年一回ぐらいやな」

 対象は四か所。

 松阪城下の寺。

 城下の神社。

 郊外の寺。

 もう一つ、普段から伊勢松坂屋と付き合いのある寺社。

 それぞれ十人。

 合計四十人。

「十歳以上。親御さんの同意が取れること。和尚さんなり神主さんの推薦があること」

「どうやって選びます?」

「もう独断でええ」

 博之は即答した。

「普段よう掃除してる。薪運んでる。年下の面倒見てる。勉強頑張ってる。なんでもええ」

「揉めません?」

「揉めるやろ」

「え?」

「せやから最初から、今回は和尚さんらが決めます、恨みっこなし、って言うとくねん」

 選ばれた四十人は、一週間だけ伊勢松坂屋の店や飯場で働くことになった。

 もちろん大人と同じ仕事ではない。

 掃除。

 薪運び。

 皿を並べる。

 包みを作る。

 店先の片付け。

 しかし子供からすれば十分きつい。

「旦那、薪重い!」

「無理すんな。半分にし」

「でも働かな伊勢行けへんやろ?」

「倒れたらもっと行けへんわ」

 店の者にも、

「疲れたら茶飲ませて。腹減ったら飯も食わせて」

 と伝えてある。

「甘くないです?」

「半分仕事、半分お客さんや」

 博之は笑った。

「この子ら、将来うちで働くかもしれん。でも働かんかもしれん」

「では何のために?」

「将来のお客さんや」

 松坂で伊勢松坂屋が根を張るなら、子供の頃に楽しい記憶があること自体が大事だと博之は

 考えていた。

「ただし遊びだけではあかん。働いたご褒美や。そこだけはちゃんとする」

 一週間後。

 四十人全員が何とか仕事を終えた。

「ほな、伊勢行こか」

「やったー!」

 歓声が上がった。

 引率には各寺社の和尚や神主、それに伊勢松坂屋の者を何人もつける。

 子供たちが一週間で稼いだ銭は、一日四十文として二百八十文。

「これ、自分の銭やからな」

「何買ってもええ?」

「基本はな」

「全部饅頭でも?」

「腹壊すからやめとけ」

 ただし博之には別の腹づもりがあった。

 こっそり、一人あたり千文程度。

 全部で四万文ほどを予備として持たせていた。

 もちろん子供には言わない。

「和尚さん」

「はい」

「基本は二百八十文を大事に使わせてください」

「分かりました」

「でもな、門前町行ったら絶対あるやろ。どうしても欲しい、ってやつ」

「ありますな」

「その時、一個ぐらいなら内緒で買ったって」

「旦那さんが?」

「郊外の子らは俺が見る。他の子らは和尚さんらで」

「また甘いですなあ」

「これ以上はあかんで」

 博之は真面目な顔をした。

「ここ超えたら施しやなくて、何でも買ってくれる大旦那になる」

「もう十分なってる気もしますが」

「そこは聞こえへん」

 松阪を出ると、まず九鬼水軍のところまで向かう。

 全部歩かせるわけではない。

 歩けるところは歩き、疲れた者は荷車へ。

「こんな歩いたことない!」

「まだ船乗ってへんぞ」

「足痛い!」

「茶飲め茶」

 ようやく九鬼水軍のところへ着くと、向こうも目を丸くした。

「旦那、今日は何じゃ、この人数」

「伊勢神宮見学会」

「何やそれ」

「一週間働いたご褒美です」

 博之は笑う。

「船もお願いしたいんですけど、ついでに若い衆何人か貸してくれません?」

「子守りか?」

「そうそう。迷子出したら洒落にならん」

「船乗せる前から疲れとる子おるぞ」

「初めてこんだけ歩いたんやって」

 九鬼の若い衆も面白がり、何人かが付き添いに入った。

 船は数艘に分ける。

「うわあ!」

「でかい!」

「動いてる!」

「船なんやから動くわ!」

 初めて船に乗る子も多い。

 岸を離れただけで大騒ぎだった。

「旦那! 揺れてる!」

「船やからな!」

「落ちへん?」

「端行くな!」

 それほど荒れた海ではない。

 船も小舟ではない。

 それでも子供たちには、足元がゆっくり上下するだけで大事件だった。

「もう思い出できてますな」

 九鬼の者が笑う。

「本番、まだ伊勢着いてへんで」

「これだけでも十分でしょう」

 博之は船の上を見渡した。

 怖がって船べりから離れない子。

 海を覗き込もうとして怒られる子。

 友達同士で笑っている子。

「まあ、この四十人には忘れへん一日になるやろな」

「寺や神社の手伝い、これから増えるんちゃいます?」

「それならええやん」

「旦那」

 九鬼の者がにやりと笑う。

「わしらの子供のこと、忘れてへん?」

「……あ」

「うちにも子供おるぞ」

「また考えとくわ」

「出た。それ絶対何か始まるやつや」

「今日は考えへん!」

 船の上に笑い声が広がった。

 饅頭一個から始まった話は、ついに四十人の伊勢参りになった。

 そして伊勢へ着く前から、どうやら次の宿題まで増え始めていた。

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