↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メンヘラオジサン、戦国で飯屋を始める ~戦えない俺は食と金で成り上がる~★299.1万PV突破★  作者: メンヘラオジサン【監視アカウント】


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
687/714

博之45歳。2月3週目。暇すぎて郊外の和尚さんのところにいき、奈良の書物で食べ物系のないかと聞く。根菜の饅頭の話を聞き興味を持つ。

二月三週目。

「暇や、暇や」

 博之は朝からそんなことを言いながら、松坂の郊外を少し歩いては店へ戻ってきた。

「今日は結構歩いたで」

「昨日より少し先までですね」

「積み重ねが大事やねん」

 四月の伊賀越えに向けた足慣らしである。

 しかし戻ってくれば、また暇だった。

「なんか仕事ない?」

 ヨイチが帳面を持ち上げる。

「ありますよ」

「何?」

「帳面」

「それ以外」

「ありません」

「即答やめて」

「各地からの報告ならあります」

「それ聞く」

 博之はすぐ座った。

「近江今津の方で、師範が一人『任せ』を作ったそうです」

「誰?」

「旦那様は会ったことありません」

「……俺知らん奴が任せになったん?」

「はい」

「勝手に?」

「旦那様が師範に焼印渡したんでしょう」

「ああ……」

「亀山の方でも、腕のいい若い者が出てきているそうです。まだ見習いですが、

 任せ候補として育てると」

「その子も知らん」

「でしょうね」

 博之はしばらく黙った。

「ほな俺いらんやん」

「それを目指したんでしょう」

「目指したけど、ほんまにいらんようになると寂しいねん」

「面倒くさいですね」

「ひどい」

 結局、博之は拗ねた。

「もうええ。和尚さんとこ行ってくる」

「帳面は?」

「帰ってから考える」

「見ないやつですね」

 弁当を一つ包ませ、いつもの郊外の寺へ向かった。

 寺へ着くと、幸い奈良から来ている僧もまだ滞在していた。

「おお、大旦那。また暇ですか」

「なんで分かるんです?」

「最近よく来られますから」

「暇になる仕組み作ったら、ほんまに暇になったんですよ」

 縁側へ座り、持ってきた弁当を広げる。

 しばらくどうでもいい話をした後、博之がふと思いついた。

「和尚さん」

「はい」

「奈良に面白い書物とかないです?」

「面白い、と申しますと?」

「飯の本」

「飯?」

「別に高尚なんいらんですよ」

 博之は笑った。

「俺、難しい漢文とか読まれへんし」

「胸張って言うことですかな」

「昔の飯とか、珍しい食いもんとか、作り方書いてるようなん」

「なるほど」

「金払ってでも集めたいんですよ」

「また何か始めるんですか」

「暇なんですよ」

 博之は握り飯を食べながら続ける。

「今まで自分の頭の中にあるもんは結構やったでしょう」

 うなぎ。

 海鮮焼き。

 ふくふく焼き。

 天ぷら。

 甘味。

「でも昔の人が食ってたもん見たら、そこからちょっと変えられるやん」

「伊勢松坂屋風に?」

「そうそう」

 完全に同じものを再現する必要はない。

 昔の料理を一度作る。

 そこへ伊勢で手に入る材料を入れる。

 調味を変える。

 食べやすくする。

「昔の本に残すぐらいやから、たぶん何かしら珍しいとか、うまいとか、理由あるでしょう」

「まあ、そういうものもございますな」

「それ地方で再現して『昔こんなん食ってました』言うたら、皆面白がるやろ」

「商売にもなりますな」

「俺もモテるかもしれん」

 奈良の僧が箸を止めた。

「最後の一言が余計でしたな」

「そこ大事やのに」

「大旦那は飯だけ考えてください」

 笑いながら僧は、自分の荷物の中を探り始めた。

「そういえば……」

「何かある?」

「今回持ってきたものの中に、饅頭のようなものについて触れた書があった気がします」

「饅頭?」

「はい」

 何冊か取り出し、ぱらぱらとめくる。

「ああ、これですな」

 博之も覗き込んだ。

「……読まれへん」

「でしょうな」

「和尚さん教えて」

「最初からそのつもりでしょう」

 僧が苦笑した。

「小麦の粉を練った皮で、菜や根菜などを細かくしたものを包み、蒸して食べるものです」

「焼かへんの?」

「蒸します」

「蒸籠で?」

「そういうことですな」

 博之の表情が少し変わった。

「中に野菜入れて、粉の皮で包む?」

「はい」

「ほんで蒸す?」

「はい」

「それだけ?」

「大まかに申せば」

 博之はしばらく考え込んだ。

「……面白そうやな」

「何か思いつきました?」

「いや、まだやけど」

 博之は指で包む仕草をする。

「野菜入れられるんやったら、他のもん入れられるやろ」

「また改造する気ですか」

「とりあえず元のやつ作ろうや」

「ここで?」

「松坂帰って料理人に頼む」

「旦那様、暇やったんでは?」

「暇やからやるんやん」

 奈良の僧が笑う。

「結局、仕事を自分で作りますな」

「これ仕事ちゃうで。遊びや」

「その遊びが、いつも商いになるんでしょう」

「それは作ってから考えます」

 博之はもう一度、書物を覗き込んだ。

 古い時代の人間が、小麦の皮で野菜を包み、蒸して食べたという。

「これ、熱々で食ったらうまそうやな」

 師範たちが勝手に育ち、博之の仕事は減っていた。

 しかし暇になった大旦那は、今度は昔の書物の中から、新しい飯の種を見つけようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。