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メンヘラオジサン、戦国で飯屋を始める ~戦えない俺は食と金で成り上がる~★299.1万PV突破★  作者: メンヘラオジサン【監視アカウント】


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博之45歳。二月二週目、男衆人気投票。松坂本店は博之が催す。

 二月二週目。

 包丁騒動で勝手に傷ついた博之は、二日ほど布団でうじうじした後、今度は妙なことを思いついた。

「目安箱、置こか」

 ヨイチが嫌な予感のする顔をした。

「何のためです?」

「人気投票」

「誰の?」

「男衆」

 松阪の本店、支店、郊外の飯場、それから伊勢方面。

 人の集まるところへ箱を置き、

『頑張っていると思う男衆の所属と名前を書いてください。一人一票』

 と紙を貼った。

「まあ、普通の人気投票やな」

「それだけならまだ分かります」

「もう一個ある」

「嫌な予感がします」

 博之は別の札を出した。

『不細工部門』

「旦那様!」

 お花がすぐに止めた。

「何ですかこれは!」

「不細工でも頑張ってる男を選ぶ部門」

「失礼でしょう!」

「でも本人が入ってええ言うたらええやろ」

「誰が言うんです?」

「聞く」

 結局、男衆にも説明したところ、

「面白いやん」

「俺、そっち狙えるかもしれん」

「一般無理やから不細工でいくわ」

 と意外に乗り気な者が多く、そのまま実施されることになった。

 二、三日後。

 松阪だけ先に票を集め、博之自ら結果発表をすることになった。

 飯場の前には女衆、男衆、料理人、帳場の者まで集まっている。

「えー、皆さん」

 博之が前へ出た。

「今回は男衆表彰をします」

 拍手が起きる。

「なんでこんなん始めたか言うとな」

 少し間を置く。

「この前、女衆に『欲しいもん買ったるから買い物行こう』言うて、五人ぐらい連れてったんです」

「知ってます!」

「包丁も買ってましたね!」

「そこはもう触れんでええ」

 笑いが起きた。

「まあ、俺が女好きやからやったことなんですよ」

「堂々と言いますね」

「でもな」

 博之は腕を組む。

「女衆にだけ物買うて、男衆には何もせえへん、いうのもちょっと格好悪いやろ」

 男衆から、

「おお」

 という声が上がった。

「それに『旦那様、女にしか銭使わへんな』と思われたら、俺の好感度が下がる」

「そっちですか!」

「大事やぞ!」

 また笑いが起こった。

「ということで、一般部門上位五人。一人千文」

「千文!?」

 ざわつく。

「頑張ってる男への褒美や」

 名前が順番に呼ばれていく。

 飯場をうまく回している者。

 荷運びを黙々と続けている者。

 後輩の面倒見がいい料理人。

 客から評判のいい男衆。

 やはりというべきか、見た目の整った者も何人か入っていた。

 博之は一人ずつ銭を渡しながら、微妙な顔をする。

「お前はやっぱ入ったか」

「ありがとうございます」

「まあ、美形やからな」

「そこ関係あります?」

「あるやろ。俺の嫉妬の対象や」

「素直すぎません?」

「でも頑張ってるんは認める」

「褒められてるのか分からんなあ」

 一般部門の男たちは複雑な表情で千文を受け取った。

「さて」

 博之の顔が急に明るくなる。

「本番です」

「本番?」

「不細工部門!」

 会場が爆笑に包まれた。

「こっちは上位五人、一人千文と――」

 布を外す。

 そこには五本の立派な包丁が並んでいた。

「ええ包丁!」

「うおっ!」

「旦那様、ほんまですか!」

「ほんまや」

 博之は胸を張った。

「お前らはな、俺と同じ業を背負った男たちやと思ってる」

「業?」

「女にモテたい。でも顔だけでは勝負できん」

「旦那様も含むんですか」

「含む!」

 博之は力強く言った。

「俺なんかモテたくて頑張った結果、官位やら商売やら銭やら、いろんなもんにがんじがらめになった」

「それ、モテない理由ですか?」

「今、細かいこと言うな」

 笑いが止まらない。

「金で何とかしようと思えばできるかもしれん。でもそんなことやったら女衆の好感度下がるし、

 最悪店の空気まで悪なる」

 お花が腕を組んでいる。

「よう分かってるやないですか」

「せやから、お前らに託す」

「何をです?」

「俺ら不細工衆の希望を!」

 不細工部門上位の男たちが、なぜか胸を張った。

「美男衆が顔でいくなら、お前らは腕でいけ!」

「おお!」

「料理覚えろ! 仕事できるようになれ! 気遣い覚えろ! 女口説くならそこや!」

「旦那様、ありがとうございます!」

「こっちの方がめっちゃ喜んでますね」

 ヨイチが呆れる。

 包丁を受け取った一人は、感動したように刃を眺めた。

「こんなん自分では買えませんわ」

「大事に使えよ」

「はい!」

「そしていつか嫁を捕まえろ」

「頑張ります!」

「俺より先に結婚したら腹立つけどな」

「どっちなんですか!」

 一般部門の男たちは、千文を手にしながらますます複雑な顔をしていた。

「旦那様、我々への扱い雑じゃないです?」

「別に嫌いちゃうぞ」

「じゃあ何です?」

「ただの嫉妬や」

「もっと悪いですやん」

 女衆は腹を抱えて笑っている。

 お花が博之の横へ来た。

「旦那様」

「何?」

「結局、男衆に褒美を出したいだけなら、普通に表彰すればよかったでしょう」

「それやったらおもんないやん」

 ヨイチもため息をつく。

「千文を十人に、さらに包丁五本。理由が『女性人気を落としたくないから』」

「でも皆喜んでるやろ?」

 見ると、不細工部門の五人は包丁を掲げ、妙な連帯感まで生まれている。

「旦那様!」

「何や!」

「我ら、腕で頑張ります!」

「おう! 顔で負けても飯で勝て!」

「はい!」

 女衆から再び大きな笑い声が起こった。

 お花は額を押さえた。

「なんでこんな企画が、最後ちょっとええ話みたいになるんでしょうね」

 ヨイチが帳面に支出を書きながら答える。

「旦那様だからでしょう」

 博之だけは満足そうに頷いていた。

「よし。これで男衆にもちゃんと還元した」

「旦那様」

「何?」

「次は何部門作るつもりです?」

「……おっさん部門とか?」

「やめてください」

 即座に止められた。

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