↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メンヘラオジサン、戦国で飯屋を始める ~戦えない俺は食と金で成り上がる~★299.1万PV突破★  作者: メンヘラオジサン【監視アカウント】


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
669/714

博之45才1月2週目。北伊勢、3つの選択肢以外の妙案を思いつく。北畠側の松坂の殿様に説明しにいくwww

 一月二週目。

 北伊勢の国人衆から、

「どういう形になったら、伊勢松坂屋として一番気持ちええんです?」

 と宿題を置いていかれた博之は、その晩、布団に寝転がりながら地図を眺めていた。

「うーん……」

 ヨイチが横で帳面を整理している。

「まだ考えておられるのですか」

「なんか一番嫌なことだけ考えたらええかなと思って」

「一番嫌なこと?」

「荷の動き止まることやな」

 博之は即答した。

 戦になれば街道が止まる。

 関所が増える。

 荷が奪われる。

 商人が怖がって動かなくなる。

 米も味噌も魚も届かなくなる。

「領地が誰のものになるかより、うちからしたらそっちの方が困る」

「旦那様らしいですね」

「北伊勢が一個にまとまれるんやったら、それが一番簡単やった。でも無理なんやろ」

「今のところは」

「ほな、もう諦めたらええやん」

「簡単に言いますね」

 博之は地図の北半分と南半分を指でなぞった。

「北の方は織田。南の方は北畠」

「分けるのですか」

「きっちり線引くいうより、今までの縁とか場所見てやけどな」

 織田に近い国人衆は、織田の庇護へ。

 南に近く北畠との縁が深いところは、北畠の庇護へ。

「それぞれ収入の二割ぐらい納める」

「年貢ですか」

「年貢って言うたら、完全に家臣になった感じするやろ」

「そうですね」

「庇護料というか、軍役の代わりというか。名前は偉い人らに考えてもらったらええ」

 ヨイチが苦笑する。

「一番面倒な名前の部分を投げましたね」

「中身が大事や」

 ただし、それだけなら北伊勢の国人衆が、北と南に分かれて従属するだけで終わる。

 そこで博之が伊勢松坂屋を間へ入れる。

「うちの荷も、北伊勢の道いっぱい通るやろ」

「はい」

「ほな道代を払う」

「関銭ですか」

「関銭いうたら、また関所だらけになるから嫌やな。街道使用料ぐらいでええ」

 博之は指を四本立てた。

「その銭の半分は、その土地の国人衆に渡す」

「はい」

「四分の一は、その土地を庇護してる側。北なら織田、南なら北畠」

「残り四分の一は?」

「道」

「道?」

「橋直したり、ぬかるみ直したり、冬に炊き出ししたり。街道そのものを維持する銭にする」

 ヨイチが少し考えた。

「伊勢松坂屋は取らないのですか」

「取らんでええよ」

「珍しいですね」

「わしが欲しいんは、荷が止まらんことやって」

 翌朝。

 再び本店へやってきた北伊勢国人衆を前に、博之は昨夜考えた案をそのまま話した。

「つまりですな」

 一人が確認する。

「北伊勢を無理に一枚にまとめることは諦める」

「はい」

「北側は織田様の庇護。南側は北畠様の庇護」

「大体そんな感じ」

「その代わり、すぐ直接領地に組み込むのではなく、緩衝地帯として置いてもらう?」

「そこが肝やな」

 博之は頷いた。

「織田も美濃で忙しい。北畠も、北伊勢全部直接面倒見るとなったら面倒やろ」

「それはまあ……」

「二割入ってきて、相手方が勝手に攻め込まへんようになって、道も安全になるんやったら、

 今のところ悪くないと思うねん」

 国人衆たちが顔を見合わせる。

「今までの三つと違いますな」

「三つ?」

「織田につく。北畠につく。北伊勢で一つになる」

「ああ」

「その四つ目ですわ」

 一人が少し興奮したように言った。

「北伊勢で一つにならんでも、全部潰されずに残れる」

「ただし永久ちゃうで」

 博之は釘を刺した。

「勢力図が大きく変わったら再協議」

「例えば?」

「織田が美濃取るとか」

 一同が少しざわついた。

「取りますかね」

「知らんよ。例や、例」

「旦那様の場合、例が妙に具体的です」

 ヨイチがぼそりと言う。

「まあ、とにかく周りの力関係が変わったら、その時また考える。

 今ここで十年先まで決めようとするから揉めるんや」

「なるほどなあ」

 別の国人が地図を覗き込んだ。

「それで街道の銭が入るなら、北伊勢側にも利がありますな」

「半分は残るからな」

「織田様も北畠様も四分の一取れる」

「何もせんでも、ではないけどな。攻めへん、守る、という役目はある」

「道普請の銭まで別で残る」

「うん」

「……これ、結構ええんちゃいます?」

 国人衆たちの空気が変わった。

 これなら、一人の代表を無理に立てなくてもよい。

 全員が同じ大名につく必要もない。

 それでも、北伊勢全体が戦場になる危険を少し下げられる。

「まず北畠様に聞きましょう」

「そうやな」

「織田様には?」

「そっちは後でもええ。北畠様はすぐそこやし」

 そして、その日の午後。

 博之は北伊勢衆を連れて松阪のお殿様のところへ向かった。

「ということでですね」

 地図を広げて一通り説明する。

 北側は織田の庇護。

 南側は北畠の庇護。

 二割相当を庇護の対価として納める。

 伊勢松坂屋を含む商人の街道使用料を、国人衆、庇護側、街道維持費へ配分する。

 そして双方が、北伊勢をしばらく緩衝地帯として扱う。

 最後まで聞いた松坂のお殿様は、しばらく黙った。

 そして博之を見る。

「……お前」

「はい」

「なんでお前が北伊勢まとめてる感じになってんねん」

 座敷が静かになった。

 博之も地図を見る。

「……ほんまですね」

「ほんまですね、ちゃうわ!」

 北伊勢衆が必死に笑いを堪える。

「正月に師範のお披露目してた男が、一週間後には国境の仕組み考えとるやないか」

「頼まれたんですよ」

「頼まれても普通ここまで考えへん!」

「荷止まるの嫌なんですもん」

「理由が商人すぎるわ!」

 とうとう北伊勢衆からも笑いが漏れた。

 殿様は頭を抱えながらも、もう一度地図を見る。

「……しかし」

「はい」

「腹立つけど、面白いな」

 博之が顔を上げる。

「いけそうです?」

「そこはこれから詰める」

 殿様は笑った。

「まず、お前が北伊勢の大将になる案よりは、ずっとましや」

「だから大将にはなりませんって」

「お前がそう言うたびに、やってることだけ大将に近づいてるんや」

「飯屋ですから」

「もうその逃げ方、聞き飽きたわ!」

 一月二週目。

 伊勢松坂屋の大旦那は、領地を欲しがることなく。

 ただ荷を止めたくないという理由だけで、北伊勢に新しい緩衝地帯を作ろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。