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メンヘラオジサン、戦国で飯屋を始める ~戦えない俺は食と金で成り上がる~★299.1万PV突破★  作者: メンヘラオジサン【監視アカウント】


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博之45才1月1週目終盤。北伊勢国人衆、再び松坂へ。休戦期日が迫っているが対応ができないwww旦那、なんとかしてくださいwwww

 一月一週目の後半。

 正月の騒ぎがようやく落ち着き始めた伊勢松坂屋へ、今度は北伊勢の国人衆がまとまって

 挨拶にやってきた。

「……北伊勢?」

 先触れを聞いた博之は、しばらく考えた。

「ああ」

 完全に忘れていた。

 ここ最近は、信長公が松坂へ来るわ、比叡山と揉めるわ、自分は首を傷めるわ、

 そのくせ官位までつくわで、周囲の大名や商人から来る文も一気に増えていた。

「北伊勢の話、頭から抜けてたな」

「旦那様、去年色々ありすぎましたからね」

 ヨイチも苦笑する。

「でも、あんまりええ話で来たんちゃうやろなあ」

 案の定だった。

 座敷へ通された北伊勢衆は、正月の挨拶を一通り済ませると、すぐ本題へ入った。

「大膳之介様も、昨年は大変やったと聞いております」

「いやあ、ほんま大変でしたよ」

「比叡山との話も、北まで聞こえております」

「できれば忘れてほしいですけどね」

 笑いは起きたが、北伊勢衆の顔はすぐ曇った。

「こちらも、相変わらず大変でしてな」

「まとまらん?」

「まとまりません」

 即答だった。

 北伊勢の国人衆として、どこまで共同で動くのか。

 いざという時の兵や銭の負担をどうするのか。

 誰が代表に立つのか。

 話し合えば話し合うほど、各家の事情が出てくる。

「それに、以前決めました猶予も今年五月までです」

「もうそんな時期か」

「ですから、そろそろ腹を決めねばならんのですが……」

「前にも言いましたけど、選択肢は大きく三つですよ」

 博之は指を三本立てた。

「織田につく」

 一つ。

「北畠につく」

 二つ。

「北伊勢国人衆として、本当に一つにまとまって立つ」

 三つ。

「そこまでは皆、分かっております」

「でも、その先は私が決める話ちゃいますからね」

 博之は首を振った。

「どれ選べ、とは言えませんよ」

「そこを何とか」

「無理ですって」

 博之は地図を出した。

「そもそも、北伊勢いうても全部同じ条件ちゃうでしょう」

 北の方。

 織田領に近い家々。

 亀山、関周辺。

 南へ寄れば北畠との結びつきが強くなる。

「場所によって怖い相手も、商いも、婚姻も違う。全員に同じ答え出せいう方が無茶です」

「では、北伊勢全体でまとまるのは」

「それができるなら一番分かりやすいですよ」

 博之は頷いた。

「でも、市を一緒にやります、道を守ります、ぐらいの話と、軍事まで一つにします、

 誰か一人を代表に立てます、いう話は全然ちゃいます」

 一同が黙る。

「そこまで踏み込めへんのやったら、実際には織田か北畠、どちらかの庇護に入っていく

 話になってくるでしょう」

「六角は?」

「亀山、関の辺りなら多少話はありますけど、北伊勢全体を支えるほど

 深く絡んでるわけちゃうでしょう。今のところ私は外して考えてます」

 国人衆の一人が、苦笑しながら言った。

「ほんまを言えば、大膳之介様に頭張ってもろたら一番楽なんですがな」

「はい?」

「北伊勢をまとめて、丸ごと面倒見てもらう」

 別の者まで頷いた。

「今なら誰も文句言いませんぞ」

「いやいやいや」

 博之は慌てて手を振った。

「比叡山とあれだけやり合って、最後は向こうに条件飲ませた。官位もある。

 銭もある。信長公とも北畠様とも話せる」

「だから、それがあかんのですって」

「なぜです」

「私は飯屋やから、無茶できるんですよ」

 一同が何とも言えない顔になる。

「また飯屋言うてる」

「ほんまですよ」

 博之は地図を広げた。

「うち、もう領地持たんでも商いできますから」

 尾張。

 伊勢。

 大和。

 山城。

 摂津。

 堺。

 近江。

 海なら紀州方面へも伸びる。

 さらに比叡山との一件で、浅井や朝倉との縁もでき、堅田から高島、今津、

 その先の敦賀まで道が見え始めている。

「重要な商いの道、だいぶ押さえてるんですよ」

「……言われてみれば」

「領地もらって年貢取るより、飯場置いて、市作って、荷運んでる方が私は気楽です」

「そんな捨てるようなこと言わんといてください」

「捨ててへんって」

 博之は苦笑した。

「領主になったら、戦せなあかんでしょう。揉めたら兵出さなあかん。

 飢饉になったら全部面倒見なあかん」

「今でも似たようなことしてますやん」

 そこを突かれて、博之は黙った。

「……それはまあ」

「比叡山の民まで面倒見てましたぞ」

「成り行きです」

「百万文まで寄進したでしょう」

「それも成り行きです」

 座敷に笑いが起こった。

 だが、国人衆の一人は真剣な顔で博之を見る。

「では、大膳之介様」

「はい」

「どうしてもらうのが、一番気持ちええですか」

「え?」

「北伊勢がどうなれば、伊勢松坂屋として一番動きやすいです?」

 博之は、そこで初めて口を閉じた。

 織田につく。

 北畠につく。

 国人衆でまとまる。

 それぞれに利点も危険もある。

 だが、伊勢松坂屋の商いという目から見れば、また別の答えがあるかもしれない。

「……それを今、考えてるんですよ」

「では考えてください」

「今?」

「一晩」

「短ない?」

「松阪まで来ましたからな」

 国人衆の一人が笑った。

「今日は一泊します。明日また参ります」

「いやいや、そんな宿題みたいに」

「大膳之介様なら、何か変な案を思いつくでしょう」

「変な案いうな」

「比叡山で実績がありますから」

「それ褒めてます?」

「ものすごく」

 北伊勢衆は満足そうに頭を下げた。

 博之だけが、地図の前に残された。

「……どうしてもらうのが一番気持ちええか、か」

 横でヨイチが小さく笑う。

「旦那様」

「何?」

「暇になったら仕事を作る必要、なくなりましたね」

「向こうから持ってきよったな」

 一月一週目。

 正月早々、博之の前へ再び北伊勢という大きな宿題が転がり込んできた。

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