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メンヘラオジサン、戦国で飯屋を始める ~戦えない俺は食と金で成り上がる~★250.9万PV突破★  作者: メンヘラオジサン【監視アカウント】


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信長公から松平との同盟の話を聞く一方三河の一向宗の動きが不穏である話を聞く。先々の話は置いておいて殿様達の料理交流すればと話したら料理勝負することになるwww

信長公は、博之の話をひとしきり聞いた後、ふいに別の話をした。

「そういえばな、松平の元康と同盟を結んだぞ」

 博之は茶を飲みかけた手を止めた。

「松平元康殿と、ですか」

「うむ。まあ、当面は同盟じゃ。ゆくゆくどうなるかは分からんが、今のところはな」

 秀吉が横で頷く。

「三河との背中を安定させる意味が大きうございます」

 信長公は、博之を見てにやりと笑った。

「ただな、三河は揉めるぞ」

「揉める、ですか」

「安城あたり、一向宗の火種がある。あれは多分、そのうち揉める」

 博之は、少し嫌な顔をした。

「それ、私に言う話ですか」

「お前に言う話じゃ」

「なぜですか」

「揉めたら、常滑あたりに話が来る。伊勢松坂屋さん、飯を出してくれ、助けてくれ、とな」

「いやいや」

「お前は助けに行く」

「なんで決定なんですか」

「行くやろ」

 信長公は当たり前のように言った。

「三河で人が困っておる。飯の道を伸ばす理由が向こうから来る。お前がそれを見逃すとは思えん」

 博之はお花を見た。

 お花は静かに言った。

「旦那様なら、やりそうです」

「お花さん」

「やりますよね」

「……理由があれば」

 信長公は大笑いした。

「ほれ見ろ」

 博之は眉間を押さえた。

「しかし、三河へ行ったら松平殿とも揉めるでしょう」

「揉めるかもしれん。だが、お前は飯を食わせて収める。そうして岡崎まで手に入る」

「手に入るって、何をですか」

「飯場じゃ。商いの口じゃ。道じゃ」

 信長公の目が光る。

「わしとしては、東が落ち着く。元康が西を気にせず三河をまとめる。

 伊勢松坂屋が飯で火種を少し抑える。そうすれば、わしは美濃に注力できる」

「信長公、それを私に言うのは、かなり雑では」

「雑ではない。先を見ておる」

 秀吉が苦笑する。

「殿は、博之殿がどうせ動くと読んでおられるのでございます」

「その通りじゃ」

 信長公は地図の上を指で叩いた。

「常滑、熱田、津島。そこから三河。船を作ったのは悪くない。

 米や味噌を送れる。帰りに人も乗せられる。お前が言うておった難民対策にもなる」

 博之は、思わず天井を見た。

「なんで私より先に、私の使い道を考えてるんですか」

「お前が分かりやすいからじゃ」

「ひどい」

「褒めておる」

「褒められてる気がしません」

 松阪のお殿様が笑いながら口を挟んだ。

「まあ、博之ならやるな。三河で飯場を作って、気づいたら岡崎に荷置き場ができとる」

「殿まで」

「それで、わしはどうなる」

 信長公が言う。

「美濃に向かう。蟹江の方も、もう少しかかるが、そろそろ筋は見えてくる。

 美濃がうまくいけば、一万ほど軍勢を並べて、蟹江をもらえる形までは見えとるんちゃうか、お前は」

 博之は、少し間を置いた。

「……見えてます」

 信長公が笑った。

「やはりな」

「蟹江は、うちが炊き出しや復興で関わってますし、津島や熱田とのつながりもあります。

 港と川筋を押さえる意味では、大きいです」

「亀山はどう見る」

「亀山あたりは、北畠に寄ると思います」

 博之は地図を指した。

「最近、北伊勢連合という話はあまり聞きません。ただ、草津へ行く時に、

 亀山の国人衆の話を聞きました。北畠と織田が、どこかで領土を隣り合わせにする形で、

 収まるところに収まるんじゃないかと」

「取り合いか」

「取り合いというより、落としどころです。北畠が亀山を押さえ、織田が蟹江を押さえ、

 間で伊勢松坂屋が飯と荷を通す。そういう形が一番揉めにくいかと」

 松坂のお殿様が、少し不満そうに言った。

「そうなったら、わしは尾張へ遊びに行きにくくなるやないか」

「それは知りません」

「冷たいな」

「政治の話と殿様の遊びは別です」

 信長公は、また大笑いした。

「面白い。お前ら、ほんまに遠慮がないな」

「遠慮してます」

「しておらん」

 そこで博之は、ふと思いついたように言った。

「でも、こうして料理番同士が会ったんですから、交流させたらいいんじゃないですか」

「料理番をか」

「はい。良い料理番を抱えるというのは、家の威信にも関わるでしょう。

 尾張の料理番、松阪の料理番、伊勢松坂屋の師範と師範代。互いに見せ合えば、

 より良い飯が食えるようになります」

 秀吉が慌てて口を挟んだ。

「博之殿、そういうことを言うと、殿に火がつきます」

「え?」

 信長公は、すでに目を輝かせていた。

「そうじゃな。負けるより勝った方がええ」

「ほら」

 秀吉が小さく言う。

 信長公は楽しそうに言った。

「明日は昼飯を食うてから帰る。そこで料理勝負じゃ」

「いやいや、準備が整ってません」

 博之はすぐに手を振った。

「いきなり大名家の料理番同士を競わせるのは無理です」

「値を安くすれば人は来るじゃろ」

「そういう問題では」

「最後に織田家で振る舞う。勝つとは思っておらん。だが、大負けしたら、わしはぶち切れて帰る」

 尾張の料理番たちが、別室で聞いていたら顔を青くしそうな言葉だった。

 秀吉が頭を抱える。

「殿、それを聞いた料理番たちが萎縮します」

「萎縮して勝てぬなら、そこまでじゃ」

「いやいやいや」

 博之は慌てて考えた。

「では、こうしましょう。今日の夕方、近くのお寺か広場で、軽く試しの催しをやります」

「試し?」

「はい。いきなり勝負ではなく、肩慣らしです。値は五十文ぐらいにします。

 尾張の料理番、松阪の料理番、うちの師範代がそれぞれ竹串で出せるものを作る」

「竹串か」

「焼き物なら早いです。肉あんを小さく焼く、魚を炙る、野菜を味噌で焼く、団子を焼く。

 客の反応を見られますし、料理番たちも互いの手際を見られます」

 松坂のお殿様が身を乗り出した。

「それは面白そうやな」

「近くの寺に場所を借ります。材料はうちで揃えます。尾張と松坂の料理番には、

 まずうちの台所や人の流し方を見てもらう。体力勝負にもなりますし、手際も分かります」

 秀吉がほっとしたように頷いた。

「それならば、明日の勝負の前に慣らしになりますな」

「そうです。いきなり本番ではかわいそうです」

 信長公は、腕を組んで少し考えた。

 そして、にやりと笑った。

「慈悲やな」

「慈悲ですか」

「うむ。いきなり斬るのではなく、一晩猶予をやる。慈悲じゃ」

「料理の話ですよね」

「同じことじゃ」

 お花が静かに言った。

「旦那様、また仕事を増やしましたね」

「増やしたのは信長公です」

「提案したのは旦那様です」

「……はい」

 信長公は立ち上がりかけるほど楽しそうだった。

「よし。夕方は竹串の市。明日の昼は料理勝負。尾張、松坂、伊勢松坂屋でやる」

「勝負というより交流でお願いします」

「勝負じゃ」

「交流です」

「勝負じゃ」

 松坂のお殿様が笑う。

「まあ、名目は交流、心は勝負やな」

「それが一番怖いんですけど」

 博之はため息をついた。

 だが、もう話は進み始めていた。

 尾張の料理番に知らせが走る。

 松阪の料理番が包丁を研ぐ。

 伊勢松坂屋の師範代たちは、急ぎ材料の数を数え始める。

 近くの寺には、夕方の市の相談が飛ぶ。

 信長公は満足げに笑い、松坂のお殿様は完全に野次馬の顔になり、

 秀吉は頭を抱えつつも段取りを取り始めた。

 博之は、地図を畳みながら呟いた。

「なんで比叡山の話から、料理勝負になったんや」

 お花が横から答える。

「旦那様が余計なことを言ったからです」

「せやな」

 否定できなかった。

 こうして、松阪の夕方に、奇妙な竹串の市が開かれることになった。

 尾張、松坂、伊勢松坂屋。

 三つの飯の流儀が、寺の境内で火花を散らす。

 ただし名目は、あくまで交流である。

 信長公だけが、誰よりも楽しそうに笑っていた。

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