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7月越えのある日、博之は次の一手を考える。津や伊勢の城下や松阪の港に手を出す前に街道や港の中継点に小さな店をだす計画を練る。

七月を越え、松坂の町に二つの横丁と城下の拠点を持つようになった博之は、次に何をするべきかを、

ゆっくりと考え始めていた。

目の前の店は回っている。人もいる。金も、増えこそしないが減りもしていない。

 ――ほな、次はどう広げるかや。

博之はそう呟きながら、松坂の町をぐるぐると歩いて回る。

横丁を行き来し、客の流れを見る。どの時間に人が多いのか、どの道が通られているのか、

どこで人が足を止めるのか。

「やっぱり、人の流れやな」

 町の中心で止まるのではなく、流れている。

 その流れを、どう掴むか。

 それを考えた時、自然と次の形が見えてきた。

「……港までの道やな」

 松坂から港へ向かう道。その間に、小さな拠点を置く。

 田楽、団子、鶏。

 手軽に食えて、すぐ出せて、匂いで客を止められるもの。

「これを一つ置くだけで、流れが変わる」

 博之は地面に線を引くように指を動かした。

 松坂の横丁から港へ。その途中に一つ。さらにその先、伊勢へ向かう道の途中にも一つ。

 完全な店でなくていい。

 小屋でもいい。屋台でもいい。

 だが、そこに火があり、飯があり、人がいる。

 それだけで、場所はできる。

「中継やな」

 ヨイチが隣で言う。

「せや」

 博之は頷いた。

「人も物も、そこ通るようになる」

 松坂と伊勢の間。

 そこに拠点を置くことで、単なる移動が「流れ」になる。

 物資も、人も、情報も、そこを通るようになる。

 そして、そこからもう一つの方向が見えていた。

「伊賀やな」

 山の方へ続く道。

 人は多くないが、情報はある。腕の立つ者もいる。

「ここも繋げる」

 松坂から伊勢、伊勢から伊賀。

 線が少しずつ、形になっていく。

 さらに博之は考える。

「津の方もやな」

 港町。

 魚の仕入れの要。

 そこにも、いずれ拠点が必要になる。

「いきなり城下は無理や」

 博之は首を振る。

「せやけど、道の要所ならいける」

 人が必ず通る道。

 宿場に近い場所。

 荷を運ぶ者が休む場所。

 そういうところに、小さな町を作る。

「町……言うても大げさやけどな」

 ヨイチが笑う。

「最初は小屋やろ」

「せや」

 博之も笑った。

「でも人が住めば、町や」

 働く者がいて、飯を食い、寝る場所がある。

 それが二人三人と増えれば、そこはもうただの通り道ではなくなる。

 拠点になる。

「二つか三つ、そういう場所作れたらな」

 博之は静かに言う。

「松坂、伊勢、津。この間が全部繋がる」

 お花も話を聞いていた。

「そこに住む人も増えますね」

「増える」

 博之は頷く。

「働く場所があれば、人は残る」

 そしてその人たちが、また新しい流れを作る。

 横丁だけではない。

 点と点を繋ぎ、その間を埋めていく。

 それが、次の段階だった。

 夏の暑さはまだ厳しい。

 だが、風の向きが少し変わってきているような気がする。

 博之は遠くの道を見ながら、ゆっくりと息を吐いた。

「……次は、道を取るで」

 刀でではない。

 土地でもない。

 人と飯で、道を抑える。

 その考えは、静かに、しかし確実に形になり始めていた。

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