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城の普請が半月たった。500文を手に豚汁の材料を買い町はずれのぼろ小屋で店もどきを始める。豚汁一杯15文

半月たった。

最初は一日をやり過ごすだけで精一杯だったが、気がつけばそれが十五日続いていた。

城の普請に紛れ込み、丸太を運び、土を積み、怒鳴られながら働く。朝から晩まで、

ひたすら体を動かす。飯は一日二回。握り飯と、具の少ない味噌汁もどき。

量は少ない。味も薄い。

だが、それでも食えるだけでありがたかった。

最初の数日は、ただ生き延びることしか考えられなかった。だが、日を追うごとに、

少しずつ余裕が生まれる。

――このままでいいのか。

そんな考えが、頭の奥に引っかかり始めた。

腕は痛む。腰も重い。それでも、最初の頃のように動けないほどではない。体は、

この生活に順応し始めていた。

そして半月が過ぎた頃、ようやくまとまった銭が手に入った。

「ほらよ。半月分だ」

まとめ役のがたいのいい男に投げ渡された袋を受け取る。中には銭が詰まっている。

数えてみれば、おおよそ五百文。

――これが、この世界のスタートラインか。

多くはないが、何もない状態から見れば大きい。

俺はその銭を握りしめながら、すぐに次のことを考えた。

――まずは、自分の腹だ。

そして、できるならそれを“仕事”にする。

答えは、もう決まっている。

豚汁。

あの薄い汁じゃない。野菜をたっぷり入れて、味噌を効かせる。肉は少なくてもいい。

脂が回るだけで、全体の味は変わる。

――腹減ってるやつは、絶対食いに来る。

単純だが、それで十分だ。

俺は町へ出て、銭を使った。

米を買う。野菜を買う。味噌を多めに確保する。肉は少しだけ。日持ちしないからだ。

無理に増やす必要はない。荷を抱えたまま、町の外れへ向かう。

人通りは少ないが、まったく無いわけではない。少し外れた場所に、ボロい空き家があった。

壁はひび割れ、屋根も歪んでいるが、風は防げそうだ。

近くにいた男に声をかける。

「ここ、使わせてもらえんか」

 男は胡散臭そうにこちらを見た。

「何する気だ」

「飯を炊く。店みたいなことをしたい」

「金はあるのか?」

「今はない。だが、飯は出せる。作った飯を分ける。それじゃダメか」

男はしばらく考え込み、鼻を鳴らした。

「……二日だけだぞ。変なことしたら追い出す」

「それでいい」

「金ができたら払えよ」

「わかってる」

 それで話はついた。

 翌朝、俺は早くから動いた。

 薪を集め、火を起こし、大鍋を据える。水を張り、野菜を刻む。手つきはぎこちないが、

やるしかない。

まずは二十人分。

 味噌は少し多めに。野菜は惜しまず入れる。肉はほんの少し。それでも、油が回れば味は締まる。

 やがて、鍋が煮え始めた。

 ぐつぐつと音を立て、湯気が立ち上る。

 ――いい匂いだ。

 自分でもそう思った。

 この時代の薄い汁とは違う、はっきりした香り。味噌と野菜と、わずかな肉の脂が混ざる匂い。

 それに気づく者が現れる。

「……なんだ、この匂いは」

 近所の男が一人、ふらりと近づいてきた。鍋を覗き込み、鼻をひくつかせる。

「飯か?」

「ああ。食うか」

「いくらだ」

 迷わず言う。

「十五文」

 男は一瞬ためらったが、匂いに負けたのか銭を差し出した。

 椀によそって渡す。

 一口すすった男は、目を見開いた。

「……うまいな」

 その一言で、流れが変わる。

 次に二人、三人と人が集まる。

「おい、これ何だ?」

「汁だ。野菜と味噌だ」

「くれるのか?」

「銭があればな」

 人は正直だ。腹が減っていれば匂いに寄ってくる。味がよければ金を出す。

 俺はひたすら椀をよそい続けた。

 最初の鍋は、あっという間に空になった。

 ――いける。

 手応えはあった。

 すぐに次の鍋を仕込む。今度は量を増やす。火加減も少し調整する。

 気がつけば、最初に考えていた二十人分を超えていた。五十人分に届きそうな勢いだ。

 周囲には小さな人だかりができていた。

「なんだ、この店は」

 誰かが言う。

 俺は鍋をかき混ぜながら答えた。

「ただの飯屋だ」

 だが、内心では分かっていた。

 これはただの飯じゃない。

 ――ここからだ。

 半月で手に入れた五百文。それを使って作った一杯の汁。

 それが、少しずつ形になり始めていた。

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― 新着の感想 ―
豚汁の具、「野菜」と一言ではなく、「大根と芋」程度でも具体的に書いてあると味が想像しやすくて、より美味しそうに感じる気がします。
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