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忙しかった市の次の日。休みにしてゆっくり休む。湯あみをして洗濯してのんびりする。つかの間の休息

市の翌朝は、静かだった。

いつもなら火を起こす音が早くから響くはずの小屋も、その日は遅い。

外から聞こえる人の声もまばらで、どこか拍子抜けするほどだった。

博之は、いつもより遅く目を覚ました。

体が重い。腕も足も、芯に疲れが残っている。昨日の忙しさが、そのまま残っているようだった。

「……はあ」

小さく息をつく。

隣を見ると、ヨイチはまだ寝ている。口を少し開けて、珍しくぐっすりと眠っていた。

もう一人の子も、丸まって寝ている。

女たちも、起きる気配はない。

博之は起き上がりかけて、やめた。

――ええか。

昨日、自分で言ったばかりだ。

休む日やと。

そう思い直して、もう一度横になる。

しばらくして、ようやく皆が起き始めた。

「……旦那」

 ヨイチが目をこすりながら起きる。

「今日は……」

「休みや」

 広之は先に言う。

「覚えとけ」

「……ああ、せやったな」

まだぼんやりした顔で、ヨイチがうなずく。

未亡人も起きてきて、少し申し訳なさそうに言う。

「……すみません、遅なって」

「ええ」

広之は首を振る。

「今日は、遅うてええ日や」

その一言で、空気が少し緩んだ。

簡単な飯だけ用意する。

昨日の残りの米と、薄めた味噌汁。魚も団子もない、素朴な食卓。

それでも、誰も文句は言わない。

むしろ、ゆっくり食べるその時間が、どこか心地よかった。

「……なんか、静かやな」

女の子がぽつりと言う。

「市の次やからな」

博之が答える。

「みんな、疲れとる」

食い終わると、博之は手を叩いた。

「ほな、行くぞ」

「どこへ?」

「湯浴みや」

 その言葉に、女たちの顔が少し明るくなる。

 皆で連れ立って、湯へ向かう。

普段は忙しくて行けない分、その日は少しゆっくりと体を洗う。湯に浸かるだけで、

体の疲れがじわじわと抜けていく。

「……生き返るなあ」

ヨイチが呟く。

「大げさや」

博之は笑うが、自分も同じことを感じていた。

女の子も、最初は遠慮していたが、やがて少しずつ表情が緩んでいく。

未亡人も、ほっとしたような顔をしていた。

湯から上がると、今度は洗濯だ。

溜まっていた布を洗い、干す。

普段は急いで済ませる作業も、その日はゆっくりとやる。

風に揺れる布を見ながら、誰かが笑う。

何でもない時間だった。

だが、その何でもなさが、どこか新鮮だった。

昼を過ぎる頃には、皆それぞれ好きに過ごし始める。

横になって寝る者もいれば、ぼんやり外を見る者もいる。

ヨイチともう一人は、何やらくだらないことで笑っている。

博之は、その様子を少し離れたところから眺めていた。

――ええな。

そう思う。

働くだけでは、続かない。

休むから、また動ける。

それを、昨日の女の子の様子で感じていた。

あのまま走り続けていれば、どこかで崩れる。

それを防ぐのも、仕事や。

そう思う。

夕方になる頃、自然とまた皆が集まってくる。

軽く飯を作り、囲む。

昨日ほど豪勢ではないが、それでも温かい。

「……こういう日もええな」

未亡人がぽつりと言う。

「せやろ」

博之はうなずく。

「また明日からや」

誰もが、それにうなずいた。

火が静かに燃える。

笑い声が混じる。

その日は、どこか“家”のような空気があった。

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