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わけあり仮面騎士様の恋愛事情  作者: ぬー
第一章 問題ない関係
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境界の内側

朝。


霧が薄く残る街道。


エリオは既に準備を終えていた。


「動く」


「……早えな」


ガイが目を細める。


「休息は十分だ」


「そういう問題じゃねえ」


意味は分からない。


歩き出す。


距離は並列。


だが——


わずかに近い。


ガイの位置が。


(……近いな)


エリオはそう判断する。


だが、排除はしない。


監視役。


合理的な距離だ。


ガイの街へと戻ってきた。


人の往来が増える。


視線が集まる。


——やはり近い。


他人の間合いが浅い。


「おい。ガイ」


声がかかる。


振り向くと、同僚の兵が手を挙げていた。


軽い足取りで近づいてくる。


「聞いたぞ。昨日の集落での騒ぎ、お前だろ」


「任務の一環だ」


短く答える。


「だろうな。でーー」


視線がエリオへと向く。


興味を隠さない。


「そっちは?」


一歩、踏み込む。


無遠慮に。


「任務対象だ」


ガイが短く答える。


「へえ?」


兵が笑う


「随分近くに置いてるじゃないか」


エリオを覗き込む。


距離が近い。


だが。


(問題はない)


エリオは動かない。


「その仮面——」


手が上がる。


軽い調子で。


触れようとする。


——その前に。


ガイが腕を払った。


「触るな」


低い声。


空気が変わる。


兵が一瞬、動きを止める。


「……なんだよ急に」


「任務中だ」


「は?いつもそんな細かいこと言わねえだろ」


一瞬、言葉が詰まる。


(……いつもなら)


気にしない距離。


見慣れた光景。


(なのに——)


「……触るな」


もう一度言う。


兵が眉をひそめる。


「……お前、何キレてんだ?」


「別に」


吐き捨てる。


「変なやつ」


肩をすくめる。


だが完全には引かない。


エリオが口を開く。


「接触は許容範囲内だ」


沈黙。


ガイの視線が、ゆっくりと向く。


「……は?」


低く、押さえた声。


「排除する必要はない」


「任務に支障がない」


「……そういう話じゃねえ」


空気が歪む。


兵が小さく笑う。


「なんだよ、お前ら」


「仲いいのか悪いのか分かんねえな」


「違う」


ガイが即答する。


被せるように。


「……だろうな」


兵は手を下げる。


「邪魔したな」


軽く手を振り、その場を離れる。


静寂。


ガイが一歩前に出る。


エリオの前に、わずかに位置をずらす。


遮るように。


「……あいつら」


低く言う。


「距離が近え」


「この国では通常だ」


エリオは答える。


「……分かってる」


理解はしている。


だが——


「なら問題ない」


「……あるだろ」


初めてだった。


明確に否定したのは。


「何がだ」


言葉が出ない。


(……なんだ、これ)


理由が見つからない。


「……触らせるな」


ようやく出た言葉。


「なぜだ」


即答。


「……」


詰まる。


「合理的な理由を示せ」


「……ねえよ」


吐き捨てる。


「なら不要だ」


「……ッ」


一瞬、感情が浮く。


「……俺が嫌だ」


言った後で、止まる。


沈黙。


エリオがわずかに首を傾ける。


「……主観だな」


「……ああ、そうだよ」


吐き捨てる。


「だからなんだ」


「……」


エリオは少しだけ考え——


「……考慮する」


短く言う。


ガイが動きを止める。


「……は?」


「監視役の意見だ」


「……」


言葉が出ない。


「任務効率に影響する可能性がある」


淡々と続ける。


「なら、無視はしない」


沈黙。


風が吹く。


(……なんだ、それ)


理解できない。


だが。


(……悪くねえ)


小さく息を吐く。


「……行くぞ」


「了解した」


並ぶ。


今度は——


ほんの少しだけ。


距離が、自然だった。


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