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わけあり仮面騎士様の恋愛事情  作者: ぬー
第一章 問題ない関係
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交わらない基準

規則正しい呼吸音で、目が覚めた。


——近い。


意識が浮上した瞬間、エリオは目を開ける。


同じ空間に、他人の気配がある。


それだけで、わずかに思考が引っかかる。


(……落ち着かないな)


理由は明確だ。


……近い。


自分の管理外にある距離。


だが——


(任務に支障はない)


そう判断し、起き上がる。


部屋の隅。


黒髪の男が壁にもたれていた。


腕を組み、こちらを見ている。


起きていたらしい。


「起きたか」


「……ああ」


エリオは短く返事をした。


「ここで寝るのも久しぶりだ」


低い声。


エリオは無視して立ち上がる。


「出る」


「待て」


即座に制止される。


「お前はまだ拘束中だ」


「任務に支障が出る」


「知らん」


会話にならない。


(……非効率だな)


「上に確認する」


男はそう言って、扉へ向かう。


「勝手に動くな」


「逃走の意思はない」


「信用するとでも」


「確かに、合理的な判断だ」


「……は?」


男が振り返る。


「お前の判断としては妥当だ」


エリオは淡々と言う。


「現時点で俺は不審者扱いだ。警戒する理由はある」


「……」


一瞬、言葉が詰まる。


「だが」


エリオは続ける。


「拘束によって任務が遅延するのは非合理だ」


「それは俺の管轄じゃねえ」


「なら、判断権のある者に繋げ」


「……分かったよ」


男は舌打ち混じりに部屋を出た。


静寂が戻る。


エリオは部屋を見渡す。


石壁、簡素な寝台。


最低限の設備。


(仮設に近い詰所だな)


長期滞在には向かない。


つまり——


(ここは拠点ではない)


任務の本筋は別にある。


数分後。


扉が開く。


男が戻ってきた。


「……上の許可が出た」


「拘束は解除。ただし条件付きだ」


「内容は」


「俺が同行する」


「監視か」


「そうだ」


「合理的だ」


即答だった。


「……そればっかだな」


男が小さく呟く。


それから続けて。


「そしてこのまま組むなら、最低限は必要だな」


男はこちらをみつめながら、短く。


「ガイ・ダリアン」


「……なんだ」


「俺の名だ、この街の近衛兵をしている。」


「挨拶は終わりだ、すぐ動く支度しろ」


「わかった」


エリオは素早く外套を羽織る。


動きに無駄がない。


ガイは一瞬だけ視線を止めた。


(……なんなんだ、こいつは)



検問所の外。


朝の空気は冷たい。


人の往来も増えている。


だが——


やはり、近い。


人が、平然と間合いに入ってくる。


「……」


エリオはわずかに視線を動かす。


「気になるか」


ガイが言う。


「距離が近い」


短く答える。


「こっちじゃ普通だ」


「非効率だ」


「そうか?」


「無用な接触はリスクになる」


「……」


ガイは一瞬黙る。


その時だった。


横から、人がぶつかりそうになる。


エリオは即座に腕を引く。


引き寄せる形で回避。


——近い。


一瞬、距離がゼロになる。


ガイの動きが止まる。


「……」


「接触を回避した」


エリオは手を離す。


「……そうじゃねえだろ」


低い声。


意味が分からない。


「何がだ」


「……いや、いい」


ガイが顔を逸らす。


(妙な反応だな)


だが。


それ以上考える必要はない。


「行くぞ」


エリオは歩き出す。


その背を追いガイは思う。


無意識に詰めてくる距離。


触れ方。


視線。


全部が、妙に引っかかる。


「……お前」


呼びかける。


エリオが振り向く。


「なんだ」


「……いや」


言葉が続かない。


(……なんなんだ、これ)


理由が分からない。


だが確実に——


意識が向いている。



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