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わけあり仮面騎士様の恋愛事情  作者: ぬー
第二章 問題が生まれる関係
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再会

静寂が、わずかに揺れる。


王は一度、全体を見渡すように視線を巡らせた。


集まる貴族たち。


息を潜める側近。


そして再び——三人へ。


「顔を上げたまま、聞け」


低く、よく通る声。


命令ではなく、当然のような指示。


三人は姿勢を崩さず、そのまま応じる。


「今回の件、地方の一集落に留まる問題ではなかった」


一拍。


「不審な賊の動き、そしてその裏にある意図

——ここ最近で王都にも出回っている麻薬や密銃などの発覚」


言葉を区切る。


わずかに、間を置く。


「放置していれば、さらに王都にも波及していたであろう」


ざわり、と空気が揺れる。


周囲の貴族たちの間に、微かな緊張が走る。

エリオは動かない。


(事実確認)


そう認識する。


だが——


ほんの一瞬、王の視線が、再びカイルに触れる。


(……意図あり)


ただの評価ではないとカイルは理解する。


“確認”の延長。


「よって」


王が続ける。


「貴様ら三名には、追加の任を与える」


空気が、変わる。


報酬では終わらない。


次がある。


ガイの眉がわずかに動く。


カイルの呼吸が、整えられる。


エリオの思考が切り替わる。


(任務継続)


王の隣に控えていた側近が、一歩前へ出る。


巻物を広げる音が、やけに大きく響いた。


「王命により、当該事案の調査および対応を継続せよ」


淡々と読み上げる。


だが、その内容は重い。


「特に——」


一拍。


「王都近辺における不審な動きの精査を優先とする」


ざわめきが、今度ははっきりと広がる。


王都近辺。


そこに“何か”がある。


エリオの思考が加速する。


(範囲拡大)


(危険度上昇)


ガイが短く息を吐く。


「……面倒なことになったな」


小さく呟く。


だが、その声にはどこか受け入れている響きがあった。


カイルは何も言わない。


ただ。ほんのわずかに、視線を上げる。


そして、王を見る。


王もまた、わずかに目を細める。


ほんの一瞬。


それだけで——


(意図的に残された)


そう確信する。


この任務。


この場。


この再会。


偶然ではない。


「異論はあるか」


王の声が落ちる。


問いではない。


確認でもない。


ただの“形式”。


エリオが即答する。


「ない」


迷いはない。


ガイも続く。


「……今回はお前に従う」


短く。


カイルは一拍だけ遅れて、口を開く。


「はい…問題ありません」


静かに。


だが、その声音は揺れない。


王は頷く。


それで十分だと言わんばかりに。


「では、下がれ」


一言。


それだけで、場は終わる。


三人は同時に一礼する。


動作は揃っている。


だが、各々の内側は揃っていない。


立ち上がり、振り返る。


赤い絨毯の上を、再び歩き出す。


エリオは背後からの視線を感じていた。


特に——


カイルの背中へ向けられる視線を。


回廊へ出た瞬間。


張り詰めていた空気が変わる――わずかに緩む。


だが。


一人だけは例外であった。


エリオは歩きながら、隣を見る。


カイル。


表情も呼吸も、いつもと何も変わらない。


だが。


(……気がかりだ)


先ほどの違和感が、完全には消えていない。


ガイは前を歩く。


だが、今度は——ほんのわずかに、振り返る。


ガイの視線が、一瞬カイルに向くがすぐに逸らした。


何も言わない。


だが。


確実に“意識している”。


三人の間に、沈黙が続いた。


――その時。



回廊の奥。


細かく彫刻が施された柱の影。


そこに——


人影があった。


(……気配)


エリオが認識する。


次の瞬間。


明るく、馴染みのある軽い声が響き渡る。


「——思ったより、目立っていたな」


三人の足が止まる。


影から、ゆっくりと一人の男が姿を現す。


“レオン・ヴァルガス”


気だるげに、だが迷いなくこちらへ歩いてくる。


その立ち位置。


その視線。


その空気。


——この城に“慣れている者”のそれ。


(何故こんなにもここの場所に溶け込んでいるんだ)


ガイがみんなの声を代弁する。


「……お前、なんでここにいる」


レオンは肩をすくめる。


「なんでって仕事だよ」


軽く言う。


だが。


その目は笑っていない。


「まぁ、こっちが“本業”でな」


一拍。


そして、カイルをまっすぐ見る。


「で?」


わずかに口元を歪める。


「王子様は、久々のお父上とのご対面どうだった?」


――空気が張り詰める。


ガイの動きが止まる。


エリオの思考が止まる。


そして——


一瞬、カイルの瞳がわずかに揺れる。


だが、隠しきれない。


レオンはそれを見て、笑った。


「やっぱりな」


カマをかけたようだ、そして確信へと変わった。


そして、続けて静かに。


「隠す気、あんのか?」


——ここから、すべてが崩れ始める。


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