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わけあり仮面騎士様の恋愛事情  作者: ぬー
第一章 問題ない関係
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収束しない視線

昼の光が、集落の通りを照らしていた。


石畳の上を行き交う人々の足取りは穏やかで、どこにでもある日常の風景——のはずだった。


だが。


「……」


空気が、わずかにおかしい。


ガイは隣を歩くエリオを横目で見ながら、無意識に眉を寄せた。


(……やっぱりな)


視線。


あちこちから向けられている。


露骨ではない。


だが確実に、意識されている。


通り過ぎる女。


荷を運ぶ男。


井戸端で話していた数人。


全員が、一瞬だけ動きを止める。


そして。


見ている。


「……見すぎだろ」


ガイが小さく吐き捨てる。


「何がだ」


エリオは気にした様子もなく歩き続ける。


「気づいてねえのかよ」


「何に」


本気で分かっていない声音。


ガイは舌打ちし、視線を逸らした。


(……マジで自覚ねえな)


厄介だと分かっていたが、ここまでとは思わなかった。


その時。


「エリオ様……」


小さな声。


足を止める。


振り向くと、休憩中の兵達の中で、頭一つ分ほど突き抜けた大柄な若い兵が立っていた。


どこか緊張した面持ちで、視線が定まっていない。


「……何だ」


エリオが応じる。


「その……お身体は……もう大丈夫なのでしょうか」


ぎこちない言葉。


だが、その視線は——


明らかに顔へ向いていた。


「問題ない」


短く答える。


それだけで終わるはずだった。


だが、兵は動かない。


「……」


視線が外れない。


「……用はそれだけか」


エリオが促す。


「は、はい……!」


慌てて背筋を伸ばす。


だが、その直前まで——


確かに見ていた。


「……行け」


低い声が割り込む。


ガイだった。


兵がびくりと肩を震わせる。


「は、はい!」


逃げるように去っていく。


沈黙。


「……」


ガイはその背を見送りながら、わずかに舌打ちした。


(……ああいうのが増えるな)


分かりきっている。


「何だ」


エリオが横を見る。


「……いや」


短く返す。


その時。


「人気者だな」


軽い声が降ってきた。


振り向かなくても分かる。


レオンだ。


いつの間にか近くの壁にもたれ、こちらを見ている。


「見てるだけのやつも含めたら、相当な数だぞ」


楽しそうに言う。


「暇なのか」


ガイが吐き捨てる。


「仕事中だ」


軽く肩をすくめる。


そして、そのまま自然な動きで歩み寄る。


エリオのすぐ隣まで。


近い。


「……何の用だ」


エリオが問う。


「いや、顔見に来ただけ」


軽い口調。


だが、その視線は—逃がさないように真っ直ぐだ。


「問題は解決した」


エリオが言う。


「そうだな」


レオンが頷く。


「だから厄介なんだけどな」


そのまま、さらに半歩踏み込む。


距離が縮まる。


「おい」


ガイが低く言う。


「近え」


「いいだろ別に」


気にした様子もなく、そのままエリオの顔を覗き込む。


「……やっぱすげえな」


素直な感想。


「飽きねえ」


その言葉に、ガイの眉が動く。


「お前な」


「何だよ」


視線だけが交わる。


静かに火花が散る。


だがレオンはすぐに視線を戻した。


「まあ、気をつけろよ」


エリオに向けて言う。


「何に」


「周り」


短く答える。


エリオはわずかに考え——


「問題ない」


やはり変わらない。


レオンが笑う。


「だろうな」


満足げに。


その横で、ガイは小さく息を吐いた。


(……ダメだ)


完全に、無自覚だ。


(……全部こっちに来る)


視線も。


面倒も。


そして——


「……行くぞ」


ガイが言う。


半ば強引に、歩き出す。


エリオもそれに続く。


レオンはその場に残り、二人の背中を見送る。


「……いいな、あれ」


ぽつりと呟く。


誰に聞かせるでもなく。


「面倒くせえのに、目ぇ離せねえ」


小さく笑う。


その視線は、最後まで離れなかった。


通りを歩く二人。


その背に、いくつもの視線が重なる。


無意識に。


抗えないように。


そして——


その中心にいる男は、何も気づいていない。


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