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この島に来て125年、僕は思ってた。毎日が平和でなにも変わらない暮らしが続くと。新しい家族ができるだけだと思っていた。家族のために家畜と農業を専門として、この島の食糧を維持してきた。


オレは戦うことが好きだけど、本当は誰も傷つけたくない。シルヴァを……いや、家族を護るために強くなりたい──でもオレらって不死身だからそんなこと気にしなくていいよな! ハクもいるし!


ボクは1番最初じゃなきゃダメなんだ。どんなことも、ボクが最初にやらなきゃいけないんだ。だって1番はボクなんだから。だからね、ボクは最低で最高なんだ。


この島から出ようなんて考えられなかった。だって、ここにはママが居るから。ママがこの島から出ない限り、ワカバはここに居るよ。絶対に。だから、クロには外の世界へ行ってほしくないなぁ……



 リリスが殺害されるまであと1日



早朝、クルミは日課の家畜の世話をしていた。

「おはよぉ、クルミ。今日も早いんだねぇ〜」

「おはよう、ワカバ。今日は早起きなんだね」

「なんか目が覚めちゃって……ねぇ、クルミ。毎日同じことの繰り返しって楽しい?」

突拍子もないことをクルミに訊いた。

「僕は楽しいよ。ミルクも野菜もみんな美味しく食べてくれるから」

「ふーん。ワカバにはそういう魔法関係ないやつ興味ないからなぁ〜」

「よく服を編んでくれるじゃん。それが趣味ってやつじゃないの?」

ワカバ特製のお洋服はみんなに気に入られている。

「あれも魔法でやってるから趣味じゃないよぉ〜。他にないかないかなぁ?」

「うーん……サンみたいに体を鍛えるとか?」

「え〜〜〜? やだぁ〜」

「……僕はもうお手上げだよ。アイデアでないもん」

「自分で考えるのだるい〜、考えてよぉ〜」

ワカバはめんどくさがり屋なのである。

「あっ」

「えっ! 何か思いついた!?」

「絵を描いてみたら?」

「お絵描き……? クルミ、ワカバのことバカにしてる? ワカバはもう子供じゃないんだよ」

「違うよ。ワカバって何か思いついて服を編むんでしょ?」

「そうだよ」

「それと同じ要領でやればいいんじゃない?」

「……なんかそう言われたらワカバの趣味になりそう。よし! 手始めにママを描こうっと」

そんな他愛ない会話をしていると、サンがやってきた。

「おはよう2人とも。ソラを見なかったか?」

「おはよう、サン。見てないけど、どうしたの?」

「おはよぉ。ワカバとクルミでお喋りしてたから知らないよ?」

「そうか……あいつ、今日何の日か忘れてやがるな」

「ん? 今日って何の日だっけ?」

「ワカバもわかんない。サン、教えて?」

サンは呆れ顔で見てくる。

「何って……オレたちの誕生日だろ?今日」

「あっ、そうなんだぁ」

「ということは──276歳か、僕たち」

「実感ないねぇ……」


昼、シルヴァはソラを探しに船着場へ来ていた。

「ソラ兄様!」

ソラは釣りをしていた。

「おはよう、シルヴァ。なにかあったの?」

「ソラ兄様、今日は何の日かわかってますか?」

「んー? 誕生日だっけ?」

「そうです! わたくしは家族全員でお祝いを……」

「別によくない? そういうの」

「えっ……」

「ママの誕生日じゃないんだからさ、ボクたち四ツ子を祝ったところで何もないし、何もないよ──どうしてもって言うなら参加するけど?」

「……っ」

シルヴァはソラの態度に傷ついた。

「ソラ兄様……最近の兄様は様子がおかしいです。何かあったのでしょうか?」

ニヤリと笑うソラ。

「聞きたい? 聞きたい、シルヴァ? 聞いちゃったんだよねー。気になったからさー……最近来てる軍艦の人たちの会話」

「!? お母様から言われたではありませんか! あの方々は気にするなと──関わるなと」

「その割にはシルヴァと結構喋ってるじゃん? 差別はよくないと思うんだ」

「お母様の言うことは絶対です!」

「そのママから許可貰って聞いたんだって!」

「えっ……」

「その時の話をしてやるね──」


その日は雨が降っていた。

退屈だった。

シルヴァ目的に来る人間。魔導具を持ってくる人間……正直見飽きた。あんなのを助けてやるのは時間の無駄じゃないかと思ってた。特に行商人は邪魔だ。

クロに無条件で魔導具を渡しやがって……ボクが最初に魔導具を開発していれば、全てボクの物のはずだったのに……クロはボクの敵だ。

出来の悪い妹だ。自分の魔法が嫌いなくせに、よりにもよって魔導具にうつつを抜かして……ボクが最初じゃなきゃダメだったのに。

ボクが1番なんだ。新しいこと、挑戦、楽しいこと、嫌なことはボクが最初に経験するべきなんだ。

それをアイツは奪った!!!

どんなに侮辱したり傷つけても、クロは絶対に辞めなかった!! 本当に気が狂ってる。いや、クロの魔法は精神魔法だからもともと狂っているのか──ざまぁみろ!!!

アイツはボクから奪ったんだから、ボクも奪う。アイツの夢を……外の世界へ初めて行くのはボクだ!!!!!

そのためには最近来ているギアス大陸のナンタラってやつと話してみよう。ママと会話しているところに乱入しよう。ママに怒られるけど、ルールを破ることもボクが最初じゃなきゃいけないんだ。

そしてボクは会合している場所へ突撃した。

「ママ!」

「……ッ!? 会合中だ。子供は外に出ていなさい」

「あら? わたしの子供に聞かれちゃ悪いことでもあるのかしら? フライデー将軍」

「くっ! そ、そんなことは……ない」

そのみすぼらしい男はフライデーと呼ばれていた。

「ねえねえ、何の話してたの? ボクに教えて!」

「……面白い話じゃないぞ」

「面白いかどうかはボクが決めることだよ! ねっ、ママ?」

「そうね。その通りだわ」

「リリス殿……」

男は困っていた。

「でも同じ話を聞くのは嫌だわ。わかりやすく、短めにお願い」

「……」

男はしばらく黙ったあと、口を開いた。

「この島をギアス大陸の領土として税を納めなさい。閣下のご命令です」

……は?

とても不快な顔をしていたのだろう。ママが察した。

「さっきも言ったけど──言われなくても我が子の顔を見ればわかるでしょ? お断りよ」

「……わかりました。あくまで我々と貿易を続けるのですね?」

「そうよ? 理解したなら、頭の固い領主に伝えることね」

「わかっております。無理難題を言ってすまなかった」

男はママに一礼するとボクに向かって……

「不快にさせてしまったな。反省してる」

とだけ言って自分の船に乗って帰って行った。


「──もちろんそのあとママに怒られたけど、生意気にもあいつらはボクたちの家を自分の物にしようとしたんだ!」

「そ、そんなことが……」

ソラが事のあらましを言い終えると、シルヴァを真っ直ぐ見つめた。

「!! わたくしは最初から知ってたわけではありません! 信じてください、ソラ兄様!」

「信じるよ、シルヴァ」

ソラは優しくシルヴァを抱きしめた。

「ごめん。イジワルしすぎたね。泣かないで?」

「ソラ兄様……」

「もし知ってたとしても、シルヴァは何も変わんないもんね。ボクの妹だもん」

「……? はい。わたくしは兄様と同じくフライデー将軍に怒ってたと思う」

「え? あぁ、あいつの名前ってそんななんだ。どうでもいいけど」

ソラは抱きしめるのをやめる。

「お誕生日会だよね? 今行くよ」

「……っ! はい! 一緒に参りましょう!」

シルヴァは笑顔になるが、ソラは不敵に笑っていた。


夕方、ハクに呼ばれてクロ、アッシュとルージュは外で魔法の練習をしようとしていた。

「なんであたしまで……」

「ふふっ、ハクに捕まっちゃったね。でもアッシュも一緒って珍しいね」

「どうやらハクが完成させたみたいなんだ。自分の攻撃魔法が」

「別にいらないじゃん。戦う必要なんてこの先ないんだし」

「それは私も思ってるけど、念のためってあるし……」

「来ましたね? 姉さんも」

ハクはテーブルの上に魚を入れた水槽を準備していた。

「あれ? デコイを使わないの?」

「なるほどな、そういうことか」

アッシュはもう理解したようだ。

「どういうことなの、アッシュおにい?」

「見ればわかるさ」

ハクは水槽から3メートル離れると魔法を唱えた。

「【破裂せよ(メギド)】」

そう唱えると水槽の魚はぼこぼこと膨れ上がり、爆散した。

「うわっ! すごっ!」

「これが自分の攻撃魔法です」

ハクは誇らしげだ。

「私には未だに理解できないんだけど、どうしてデコイを使わないの?」

「条件があるんだよな、ハク?」

「はい。この魔法は生命体にしか効果がありません。デコイにやっても何も起きません」

「へぇー。すごいじゃんハク!」

(あっ、言っちゃった)と心の中で思うルージュ。

「クロ姉さんにもできますよ」

「えー、できないよ〜。そもそも戦闘用じゃないし〜」

「できるよ。クロ」

「あ、アッシュおにいまで……」

「できるよ、クロちゃん! 私も協力するから!」

クロに魔法を使わせるための罠だったのだった。

「ルージュまで!? しょ、しょうがないなぁ〜。あたしの本気見せてやんよ!」

「その意気だよ。クロちゃん」

その後、魔法の練習をしてから四ツ子の誕生日を祝った。

誰もが普通の日々が続くと思っていた。

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