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自分は寵愛を受けた。

「お疲れ様2人とも。すぐ寝るのかしら?」

「俺は寝させてもらうよ。明日からようやく島の外へ出られるからな。長かったぜ」

そう言って先生は自分の寝室へと早々に向かってしまった。

「ハク、どうしたの?」

「……お母さん、外の世界ってそんなに魅力的なのですか?」

「ふふふ。そうね、ハクには教えるべきだわ。愚かな人間たちの偉業について……」

お母さんはたまに怖い感じになる。

「ハク、このままわたしの部屋に来なさい。いいわね?」

「わかりました」

自分はお母さんに言われるまま、魔女リリスの部屋に行く。

入って扉を閉めるなりいきなり本を渡してきた。

「魔導書でしょうか?」

「違うわ。これは魔女裁判の記録よ」

「魔女裁判?」

「別名『魔女狩り』とも言われているわ。わたしたちみたいな魔法が使える者を容赦なく殺したわ」

「えっ!? なぜ?」

「さぁ? 今も続いているみたいよ? ほんと外の人間って無駄のことしかしないわね」

お母さんは呆れ顔をしている。

「それじゃあ先生も危ないんじゃ?」

「マギは特別よ。特別と認められた人間しか特別扱いしないのよ。力を持たない人間はね」

「なんだよ……それ……」

「でなきゃルージュみたいな子が可哀想な目に遭わないわ」

自分は拳に力が入る。

ルージュさんの身体はいたるところの皮膚を剥がされた痕跡があって、自分の魔法であっても綺麗に皮膚は再生しなかった。

本人曰く、「もう過去のことだから」と言って気にしないでほしいと言われているが、とてもじゃないが人間を許せる気にはなれない。

人間は滅ぼすべきだ。

「恐いこと考えてない、ハク?」

「いえ……」

「そう? あなたにこの本を渡してもいいけど、せっかくの寵愛のあとだものね……読み聞かせてあげるわ」

お母さんは世界中の魔女裁判について自分に教えてくれた。

自分が1番忌み嫌ったのは「神の使命を愚弄し、己が利益のために人々を騙す魔女は害悪である」何を言ってるんだか──お前たちもそうだっただろうに。

「──どう? 楽しかった?」

「どうしてこのことを教えてくれたのですか?」

「深い意味は無いわ。ただ、もし外の世界へ行きたいなら気をつけなさいな」

「自分はクロ姉さんみたいに夢物語は語りません」

去年から始めた魔導具の販売、そしてシルヴァさんのお告げでこの島によく人間が来るようになった。クロ姉さんは最近浮かれていてよく外の世界の話をする──自分はその話を聞きたくない。

「そう、なら安心したわ。みんなにはこの島から出てほしくないもの……」

「どうして?」

思ってもないことを訊いてしまった。

「家族が離れ離れになるのは嫌でしょう?」

どんなに妖艶でも、お母さんはお母さんだった。

「さぁ、今日はもう休みなさい」

「はい、お母さん。おやすみなさい」

「おやすみ、ハク」

自分はお母さんと別れ自室に行き眠った。


朝、クロ姉さんに起こされる。

「おはよう、ハク。昨日は遅かったんだね」

「おはようございます、クロ姉さん。どうかしたんですか?」

「いやぁ、見てくれよこの魔導具」

またか。

「昨日来た行商人から貰ったんだけどね、時間が回って定刻にならとな……」

「……ぽっぽー、ぽっぽー、ぽっぽー」

「懐中時計から幻想の鳥が出てきて鳴くんだよ。すごいだろ?」

クロ姉さんはことあるごとに魔導具の自慢をしてくる。彼女の自室はガラクタだらけで、掃除が捗らない。

「──朝ごはん食べに行きましょう?」

「ねっ! ねっ! この前の話、考えてくれた?」

「なんの話ですか?」

「忘れちゃったの? ほら、外の世界に行こうよって話」

「自分は行きたくありません」

「なんでよ! 今すぐの話じゃない、未来の話! ちょっとぐらい探検してみようよ。アッシュとルージュと一緒に」

自分は顔をムッとさせた。

「また顔に出てるよ。人間嫌いはいつか治さなきゃだね、ハク」

「ご飯行きますよ、姉さん」

自分はぷんぷんしながら自室を出た。

食堂に向かう途中、食事を持ったルージュさんと出会う。

「おはようございます、ルージュさん」

「おはよう! ルージュおねえ」

「おはよう。2人とも」

「もしかしてアッシュさんのところへ運んでいるのですか?」

「うん、そうだよ。昨日も徹夜したみたいで……」

「そうなんですね」

何かを察するクロ。

「やっぱ1人でご飯食べるわ。ハクはルージュおねえと一緒にイチャイチャしながら、アッシュの研究室行ってこればぁ?」

「姉さん!!」

「あはは。じゃーねー」

イタズラに笑いながら食堂へ走っていくクロ姉さん。

「まったくもう……」

「ふふっ、今日も2人は仲良しだね」

自分はルージュさんに恋愛感情を抱いている。

でもルージュさんは違う。ルージュさんが自分への抱いてる感情は家族愛だ──そしてたぶん、アッシュさんに恋を抱いてる。12年暮らしてわかった。それもそうだ、この島唯一の男女だ。そうなってもおかしくない。

「どうしたの?」

「いいえなんでも。アッシュさんのところへご同行してもよろしいですか?」

「もちろん、いいよ」

自分とルージュさんとでアッシュさんの研究室へ向かう。

自分はクロ姉さんと同じく攻撃魔法が使えない。

自分はルージュさんと同じく汎用魔法が使えない。

自分が使えるのは回復魔法だけ。

アッシュさんに訊いてみよう。どうすればいいか。自分なりの考えを述べてみよう。

研究室へ入り、アッシュさんに声をかけた自分は酷い顔をしていたと思う。

「人間を内側から壊すにはどうすればいいですか、アッシュさん」

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